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zoom RSS 巡礼 『感情教育』 by 中山可穂

<<   作成日時 : 2005/07/16 17:47   >>

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しばらく『巡礼』というものを、モチーフにいくつか語っていこうと思う。
母の愛を知らずに育ったレズビアンの女の末路、こんな言い方をしたらこの本を読んだ読者には殺されかねない。 主人公は二人の女性。全体の3分の1は那智の、3分の1は理緒の、そして最後に2人の出会いとラストまでが書かれている。那智は期待せず、諦めることで自分を守り流れるままに受身の人生を送っていく。 理緒は女だけを好きになり、本当の恋を出来ずに生きてきた。 二人の共通するところは愛されたことがないこと。愛し方が分からないこと。ともに両親(ことに母)から愛を得られず、愛というものに触れられずに捨てられr、育ってしまった。そして、『感情教育』がされていないことだ。自分の奥の暑い感情が出せない。吐き出す相手がいない。 
二人がであったことは、奇跡だという理緒の言葉は切実だ。理緒を生んでくれたことに感謝するといった那智の言葉は本物だ。二人は二人でいることでようやく生まれてきたことに意味を見出す。
二人とも、自分の憎むべき親に自分が似てきていることを憎み、足掻く、苦しむ。しかしそれすらも二人の出会いによって意味をもたらされる。 胸のちぎれるような恋愛、それが彼女たちの感情の関を切ったのだ。那智は自分を捨てた母を、理緒と共に探すたびにでる。それはまるで巡礼のようだったといい、これが那智の感情教育なのだとある。30年前に那智を残して失踪した母を探す旅に、理緒は同行し、二人の巡礼は始まる。那智の生い立ちを巡り、理緒の両親を想い、お互いの生まれてきてくれたことを感謝し、それは両親たちを赦す十分な理由となった。
巡礼は何かを赦すための道である。巡りめぐって、必ずそこに「帰って」くるのである。
最後に那智は自分の子供よりも理緒をとった。このラストが良いとは言い切れないが、彼女に生の意味をくれるのは理緒だけであり、そこにしか安らぎを得られないのだ。本当に愛する人の下でこれからも巡礼の旅は新たに始まる。彼女たちは過去に赦しを与えることで新たに生まれたのだ。
これから先の巡礼に、幸あらんことを。

感情教育
感情教育 (講談社文庫)

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『感情教育』/中山可穂 △
中山可穂さんの作品は、激情の物語なんですよねぇ。読むときは体力と覚悟が必要なんですよ。今回も、久しぶりにちょっと体力的に余裕があるので、取り組むことにしました。 案外、本作『感情教育』は体力は要らなかったです。 というのもね〜、今回は物語に同調できなかったのですよ。まあ、仕方ないかな。私、彼女達の正反対側にいるから・・・。 ...続きを見る
蒼のほとりで書に溺れ。
2010/06/16 22:50

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
空蝉さん、こんばんは(^^)。
いやぁ・・・空蝉さんの記事を読んで、自分の記事が悲しくなってきました・・・(T_T)。
ついつい、家族持ちとしての安定性を、物語にも求めてしまっていたのかなぁ・・・。
〈二人がどう始末をつけるのか〉に家族を持ち込むのは、違うのかもしれないですね・・・。
水無月・R
2010/06/16 23:15

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