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zoom RSS 『ブードゥーチャイルド』 by 歌野晶午

<<   作成日時 : 2005/08/02 21:03   >>

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さてたまには普通にミステリの読了といきましょう。
『葉桜〜』ではまった歌野作品ですが、正直物足りない。『葉桜〜』があまりにどんでん返しで意表をついたラストだったのに対して、少し幼稚な感じがしたことと、謎が分かり易すぎたこと。 だから途中から出てきた「天才少年」が、本当だったら天才的に読者の先をきって事件を説明するはずが、読者に先読みされてしまって・・・その如才さが弱い。まるで京○堂みたいに、不思議なことなんて何もないみたいなことを言っていても、彼みたいな人間離れの仕方ではない。
 とはいうものの、やはり歌野。読むのに引き込まれるしキャラもたっている。
 ― 前世で惨殺された幼児チャーリーの記憶をもつ僕(晃司)は殺人悪魔バロンサムディの影に怯える。義母が殺され現場にBサムディの形跡が残った。僕は一体誰の子なのか?父は、母は何をしたのか?チャーリーは一体何者なのか?前世は、現世とリンクしているのか?―
言い換えればこれすらも「巡礼」のテーマになりそうだ(笑) 彼(晃司)は自分の出生を、チャーリーという「前世」の自分を探して奔走する。人に会う。訪ねる。赴く。
チャーリーという前世を背負って、もしくは自分が不義の子ではないかと、自分のせいで義母は死んだのではないかという罪悪感を背負って、死ぬためではなく生きるために必死に救いを、ことの真相を捜し求めているのだから。 
ことの結末はまったくもって単純というか、そうだと思った的なところに落ち着いてしまったがしかし逆にいえばこういう風に終わるべきところに終わったというか、必然的でよいと、私は思う。
偶然の産物で作られた種も仕掛けもないミステリーほど肩透かしを食うものはないからだ。
むしろ犯人の目星は読者には分かりやすいだろう。問題はどうしたら人間が悪魔として記憶されたか、どうやって犯罪が起こされたかという行程にあった。
その意味では、なるほどそう来たか、と思うところも多々。
ただもっと両方の母親の心情を細かに描いて欲しかった。むしろ一人称で、母たちの言葉があっても良かったのではないか?ま、あまり書いてしまうとそれこそ謎がなくなってしまうのだが。
記憶の植え付け・すり替えという題材においては面白いと思う。
余談だが最近よく「記憶は美化する」という話がでる。このお菓子はもっとおいしかったはずだとか、彼女はもっと綺麗だったはずetc・・・
美化するだけが記憶ではない。悪化もするし混在もする。それを形作るのは成長過程における環境だったり出合った物事、人であったりするのだろう。そしてもう一つ。
前世というのは現世の私たち自身が作り上げたものであるし、私たちのためにあるものなのだと、そう思う。

ブードゥー・チャイルド
ブードゥー・チャイルド (角川文庫)

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『ブードゥー・チャイルド』/歌野晶午 ○
誤認識を、そっちに持って行きましたか、歌野晶午さん。 なるほど・・・ですねぇ。その誤認識は、結構リアリティがあるかなぁ、と思いました。『ブードゥー・チャイルド』の書き出しは、とても通俗的なオカルトっぽい。が、そのオカルトっぽい文章を書きつづっているのは、普通の中学生の男の子で・・・。 ...続きを見る
蒼のほとりで書に溺れ。
2009/07/05 22:18

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
空蝉さん、こんばんは(^^)。
読者の誤認識を利用したトリックを期待してたら、そっちかい!という(笑)。
途中で分かってしまうだけにちょっと残念でしたが、記憶のすり替えというか都合合わせのような部分を、見事に物語化していましたね♪
水無月・R
2009/07/05 22:21
こんにちは〜遅くなりまして;;
う〜ん、「葉桜〜」に比べると内容が落ちるかなとは思いますけれど、でも楽しませてもらいました。
仰るとおりちょっとアマイですよね;;でも最近こういうミステリが少なくなってきたような気が・・・で尽くしたんでしょうか?(笑)
空蝉
2009/07/13 15:23

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