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zoom RSS 『サグラダ・ファミリア』 by 中山可穂 もう一つの家族の形

<<   作成日時 : 2005/09/21 01:18   >>

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最近なにかと『家族』のあり方を考えることが多い。
親の数だけ家庭があり、家庭の数だけ家族がある。ただし家族の数だけ家庭があるわけではないし、また家庭に必ずしも家族があるとは限らない、というのがこの作品『サグラダ・ファミリア』、聖家族から得た一つの答えだ。
家族とは何か、理想の家庭とは何か、なんていうのはどこにもありがちなテーマだが、この作中の主人公たちほど奇異な形はないし、逆に彼らのようなどこにも属さないタイプの『家族』から、家族に本当に必要なもの、最低限あればいいもの、が浮かび上がってくる。
この物語の主人公響子はレズビアンのピアニストだ。熱烈に愛す恋人、透子は子供ほしさにゲイの男を強姦し、シングルマザーとなって赤ん坊の桐人を抱えている。再会した響子と透子は再び恋人となるが、透子は交通事故で死んでしまう。桐人が親戚にたらいまわしにされる中、であったのは桐人の父親の恋人(男)照。桐人を引き取って3人で暮らし始める・・・
とんでもない家族構成だ。3人は血もつながっていないし、社会的つながりも無い。響子と照は透子という一人の人間を橋渡しにつながってしまっただけの関係である。ゲイとレズ、この世で最も係わり合いの無いはずの人種が、生涯恵まれないはずの「子宝」を抱えて、聖家族を作っている。
無論彼らはけんかもすれば食い違いもする、家族崩壊もいいところだ。
まず孤独な生い立ちの響子は子供の愛し方が分からない。「愛情はあるよ。ただ愛し方が分からない」というと、照は「着せて、食べさせて、ただ抱きしめてやればいいんだよ」という。
「ぼくも親の役割分担なんてどうでもいいと思っている。この子のことを真剣に思っている大人が二人いれば、それが家族なんだと思う。」と、照は言う。
本当に、どこまでも優しく、ただまっすぐな、見返りを求めない与えるだけの愛がここにはある。
無償の愛、という言葉は彼ら聖家族のためにあるのだろう。
先日の『魂萌え!』でも、情けの無い子供たちの態度に、「さんざん苦労かけて育ててやった見返りがこれか!?」というような感傷に浸る主人公があるし、今日の高齢化社会ではまるで育ててもらった恩返しのために老人すなわち老後の親を介護する、しなくてはならない、という責任が子供にのしかかっている。もちろん親の介護は当たり前のことだし、それを否定するつもりも非難するつもりも全く無い。ただ、老後の『面倒を見てやっている』『世話をしなくてはならない』という、責任に追われて親に恩返しをするのは、いかがなものかと思う。
照が語った言葉「自分が親にしてもらったのと同じことをしてやればいいんだよ」。
親の愛、育ててくれる恩はあまりに大きすぎて、返すことは出来ない。だから私たち「子供」はいつか親になり、子を産み、親にしてもらったのと同じだけ愛して育てることでしかその恩を返すことは出来ないのだと、そう教えてくれる。
桐人の中に、響子は透子を、照は雅行(桐人の父親)を、つまりそれぞれの同姓の恋人を垣間見、桐人が、その一瞬一瞬が奇跡のようだとという。生命はまさに奇跡。その存在だけで奇跡なのだ。
そしてその奇跡を愛する、そのために全てを投げ出す無償の愛を持った時、たとえそれがどんな形であろうと、家族である。
どこにもありえないような一つの家族に、最も基本的な、一番純粋な家族が描かれている。
私は先日まで書いてきた自作小説の中で、形を決めてしまったら、形をなしたとたんに『家族』ではなくなると、「形あるものいつかは壊れる」とまで言ってしまったのだが、
この作品を見るに、改めて(自分で言っておきながら何だが;;)あれでよかったと思う。
彼らはいわゆる『理想の家族』あるべき家族像に縛られていない、ただ、ただ愛すればいいと、親がいて、子がいて、愛があれば家族だといっている。
私に自信を持たせてくれた、それにも感謝。
サグラダ・ファミリア 聖家族
サグラダ・ファミリア 聖家族 (新潮文庫)

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『サグラダ・ファミリア(聖家族)』/中山可穂 ○
レズビアンで芸術家(ピアニスト)が主人公の中山可穂作品とくれば、いつもの身を引きちぎるかのような激しくも狂おしい愛の世界を想像して、思わず逃げ出したくなりました・・・。なんせ今は春休みで、子供たちがワーワー家に居ついてて、その手の物語を読むのは体力的にとってもキツイ気がして(^_^;)。 ですが、幸いにして『サグラダ・ファミリア』は、そこまで激情の物語ではありませんでした・・・よかったわ〜。 ...続きを見る
蒼のほとりで書に溺れ。
2008/04/01 22:38

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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
空蝉さん、こんばんは(^^)。
かな〜り前(^_^;)にお勧めいただいた『サグラダ・ファミリア』に、とうとうたどり着きました。
生身を引きちぎるかのような愛の激情ではなく、新しい家族の在り方を描いた、暖かい作品でしたね。(私的には一抹の不安も覚えなくないんですが・・・)

私の記事のほうに、空蝉さんのこちらの記事の直接リンクを貼りたいのですが、ご許可いただけますか?
よろしくお願いします。
水無月・R
2008/03/29 22:24
サグラダファミリア、良かったでしょう!?先日読んだのですが、『サイゴンカフェ』新作も良かったですよ。
ご許可だなんて、そんなご丁寧な(笑)ばんばん張っちゃってくださいませ。こちらこそよろしくお願いします。
空蝉
2008/03/31 21:58
空蝉さん、こんばんは(^^)。
こちらからのTBが何故か、失敗続きのようです。TBしていただいてるのに、すみません…。
しつこくチャレンジしておりますので、成功したときに重複してしまうかもしれません。
お手数をおかけしますが、よろしくお願いします。
水無月・R
2008/04/01 22:41

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