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zoom RSS 『ぼくのメジャースプーン』 by 辻村深月

<<   作成日時 : 2007/01/09 19:14   >>

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待望の新刊!と思って買ったらとっくに出てたのを私が知らなかっただけ(笑)
今回は小学生が主人公だ。低年齢の少年少女を主人公にすると、たいていは大人目線で『子供の視線』をはかるから失敗する。読み違える。どんなに子供の言葉を使おうと、子供の目線で見ようと、それは大人がかがんで子供の目線になったものであり、大人が子供を真似て発した言葉であるからだ。 
私の好きな作家、辻村氏も同じクチか・・・と心配しつつ読んだ・・・が、いらぬお世話だったらしい。この作品は、そんなことを気にして読むレベルじゃ、ない。
子供だったらどう考えるだろう、小学生の頭のレベルってどの程度だろう?そんなこと考えていたらこの作品に真剣に取り組む余裕なんてなくなる。おいていかれてしまうからだ。

今現代、いろいろな猟奇殺人やら、動物虐待やら、児童虐待がある。理由の無い殺人、意味の無い虐待、わけのわからない狂った犯罪・・・どれもこれも「動機」が読めないものばかりである。いや、犯人に言わせると動機はある、自白することもある、がとてもじゃないけれど一般常識からして『信じられない』理由であることが多いのだ。何でそんなことで?という動機。
この作品もまさに理解の範疇を超えたといえる動物虐待に端を発する。

いわゆるメガネちゃんタイプのふみちゃんは、早熟で頭が良くて凛としていて、「僕」が一目億幼馴染だ。大好きな憧れの、僕がふみちゃんの特別でいたいと思える存在。飽きっぽい小学生の中、ふみちゃんと僕は毎日、学校の兎の世話をした。大好きな兎は僕とフミちゃんの大事なつながりだ。ある日一人の大学生によって消費・・・虐殺されてしまった兎、それを最初に見つけたのはフミちゃんだった。ネットで、噂で、TVで、メディアで、大量にただ消費されていく「かわいそうなふみちゃんと兎の悲劇」。消費され、器物損壊というオチで決着がついてしまう大学生の罪。 実は僕には言葉で相手に条件提示をし二者択一を強要できる『能力』がある。
僕は同じ能力を持つ「先生」と1週間相談し、大学生に能力をつあった罰を与えようと画策する。僕が選んだ『言葉』は・・・   というのが粗筋。


まずこれが小学生って言うのはちょっとキツイんじゃ・・・?と思う節はいくらでもある。これだけ真面目に考えられる小学生がいれば世の中もうちょっとましになってるんじゃなかろうかと思うくらいだ。が、はじめに行ったようにそんなことはどうでもいい。
肝心なのは彼が苦悩した1週間の先生との問答。彼が流した涙。
そのまま被害者の加害者に対する復讐心ややるせなさ、どうすればいいのかわからないほどの葛藤、諦め、とまどい・・・自分が加害者に成るという恐れ。すべてを表象しているのだ。
これは赦しの物語でも、救いの物語でもない。人と人とがひしめき、様々な、本当に色々な人間が混在しているこの社会の中で、(喫煙・禁煙席のように)都合のいいように世界が住み分けられている。それでも同じ世界に入り込んできたときに、衝突しいさかいが起きたり犯罪が起きたりする。たいてい加害者が犯罪者になり罰を受ける。が、被害者も反撃をした時点で直ちに加害者になる、負けるのである。立場、時間、状況によって二転三転する善悪に正しい結論は無く、正しい罰も見つけることは出来ない。それでも彼は1週間後に一つの選択をした。
その結果は決して正しいものではなく、馬鹿なことをしでかした。だから彼は泣いている。

そして彼は結局フミちゃんのためではなく自分のエゴ、自分のために罰を選んだんだと告白する。泣きながら思う、人間は自分のためにしかなくことは出来ないのか?と。
けれど先生が彼にかけた最後の言葉は、私に涙を与える。

「自分のためにその人間が必要だから、その人が悲しいことが嫌だから。そうやって『自分のため』の気持ちで結びつき、相手に執着する。その気持ちを、人はそれでも愛というんです。」

私の心の中の何かがすとんと落ちた。 ああ、私は私を愛し、私のために泣いていいのだと、泣いた。 誰かを想い、何かを感じ、それを自分に結び付けて泣くことは、自分のためだけに泣くことではないのだと、それが相手を愛する証なのだと、クサイかもしれないけれど思った。

久しぶりに愛すべき作品に出会った。辻村氏に感謝する。
ぼくのメジャースプーン
ぼくのメジャースプーン (講談社ノベルス)

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