■空蝉草紙■

アクセスカウンタ

zoom RSS 『少女七竃と七人の可愛そうな大人』 by 桜庭一樹

<<   作成日時 : 2007/02/22 20:14   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 1 / コメント 1

画像
なんて美しいタイトルの響き! 可憐な表紙絵! 興味をそそる宣伝文句・・・。
静謐なタッチの美しい少年と少女が 真っ白な雪の中に向き合い座っている。
そして二人をつなげる七竃の赤・・・いや、紅のマフラー。
この表紙絵がそのまま内容を表しているような 素敵な装丁だ。期待を裏切らなかった。

まず会話が口語(現代コトバ)でない上、ちょっとお姉コトバっぽいところもある。
そこがまたそそるのだが(笑) 絶世の美少女と絶世の美少年が 田舎の閉じた町に
まるで異質なもののように存在している。 それだけでもう、物語は始まってしまった。

時代は昭和初期だろうか? なんともレトロなアンニュイな雰囲気が充満している。
と思いきや、時代設定あってる?っていいたくなるくらい、子供世代=七竃の
時代になると、急に現代っぽくなるのはなぜだろう? 
しかも彼女七竃だけは それでもずっと昭和臭さをのこしているから面白い。

そもそも七竃(ナナカマド)の母が、突然、憑かれたように男を襲い・・・もとい、関係を持ち始める。片っ端から、7人の男と。しかも決して満たされない。「淫乱」と銘打たれる彼女はそれでも自分の中の何かを満たそうと、男に狂う。
彼女の隣の席で同じ教員を務めていた 平凡そのものの男を横目に
彼女は辻斬りをする。何を切るかって、男を、だ。

彼女に似つかず絶世の美少女に生まれたのが この七竃。
そして、辺鄙な狭い田舎にもう一人絶世の美青年、雪風。
彼らは成長するにつれ段々に美しく、しかもそっくりに成る。
あまりに美しく、近寄りがたく、似すぎているその容貌は、このあまりに小さな世界では
共に大人になるわけには行かない。 残酷な、運命。

七竃と雪風と。二人は鉄(鉄道マニア)である。 周りの世界をものともしない、二人だけの世界を持つ、お互いがお互いだけの寄り添うような関係だ。
なのに、なのに、成長は二人に呪われた出生を突きつける。

   母から継がれ何かがしらず流れだしているのを感じてわたしは身をすくめる。
   おとなの男たちからじろじろと眺めまわされるたびにわたしは怒りをかんじる。
   母に。世界に。   男たちなど滅びてしまえ。吹け、滅びの嵐。


最初、ただ単に自分の中で自分の容姿について怒りすら覚えるほど男嫌いな
孤高さをかもし出すための告白かと思っていたこの文も、 あとになってわかる。
七竃は どこかで感じていたのだ。 自分に流れる血が、淫乱な母の血であり
自分はこのちっぽけな田舎世界で、ひっそりとは生きていけないのだと。
これは、因果応報、母の淫乱の、報いなのだと、思っているのかもしれない。
ただ、雪風さえいれば、ずっと隣にいられたらそれだけで、とそう願うのに。
彼女のその容貌・・・かんばせは、それすら許さない。

最後まで彼らの出生について、決定的なことを突きつけることなく終わる物語。
なのに七竃の最後の言葉は、 この本の、最後の行は「さようなら 雪風」
  〜っ! なんて切ないんだ、何て痛いんだ! 

かの少女漫画絶世期、萩○望都や一条○かり先生方が活躍した
かつての少女漫画黄金期、あんな空気を久しぶりに思い切り吸った気がする。

さらりと読めるのに、奥が深い。
それはちょうど、少女時代がするりと通り過ぎるのに複雑に入り組んでいるのと似ている。
少女七竈と七人の可愛そうな大人
少女七竈と七人の可愛そうな大人

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
『少女七竈と七人の可愛そうな大人』/桜庭一樹 ◎
昭和初期の雰囲気を持ち、あえやかな言葉づかいが似合う、ひっそりと美しい物語でした。 これが平成の設定なんですから、オドロキですね。いえ、平成でも全然違和感がなく、七竈とその周辺にはなんだか違う時間の流れと空間があるような感じです。桜庭一樹、うむ、いい作家さんと出会えました! ホント、こういう美しい文章は、いいですね。こころが豊かになります。普段、荒んだ生活環境(小学低学年長男&幼稚園次男とバトルする毎日)にある身としては、こういう文章を読んで、自分を矯正しなくては・・・。 ...続きを見る
蒼のほとりで書に溺れ。
2007/08/19 21:55

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
空蝉さん、こんばんは(^^)。
言葉遣いの美しい、惹き込まれる作品でしたね〜。
私も最初は、昭和初期設定だと思ってました。平成の今の話なんだけど、七竈の背景に流れる雰囲気が昭和風、っていうのがよかったですね。
ああ、そうです、萩○望都。まさにそんな感じですね。昔の少女小説及び少女漫画の雰囲気。あのそこはかとない、かそけき気配。
繊細な描写が素晴らしかったです。
水無月・R
2007/08/19 22:16

コメントする help

ニックネーム
本 文
『少女七竃と七人の可愛そうな大人』 by 桜庭一樹 ■空蝉草紙■/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる