■空蝉草紙■

アクセスカウンタ

zoom RSS 『美丘』 by 石田衣良

<<   作成日時 : 2007/03/13 00:07   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 1 / コメント 0

画像
セカチューより生々しくて少しエロくて痛々しい。
それでいてセカチューほどにはサブキャラがたっていない。
つまりヒロインと彼の二人の間でほぼ完結してしまう、悲しく苦しい恋の話。
久しぶりの石田衣良だが、文末にその章をまとめるような主人公の一文を入れるのは
変わらないなと ふと思った。 4TEENなんか特にそうだけれど、石田作品はどこかに
「くぅぅ〜」っと泣かせるシーンの山場があり、素直に理屈抜きの涙シーンがある。
難しい言葉は取っ払って、できるだけ感情的に、本能的に、直感的に流れていく
そのシーンは、小難しい本を読みなれている高尚な読者サマには陳腐かもしれないけれど
素直に「泣けるさくひんだったよ」と感想を言ってもいいんじゃないかと思わせる力がある。
と、私は思う。 

ちょっと前に流行った『猟奇的な彼女』を髣髴とさせる『きみ』=(美丘)と主人公との出会いはやっぱり衝撃的。大学の屋上のフェンスに上って自殺するところを止めに入った(というのかな?)のが彼らの出会い。 

『あすなろ白書』のような展開で仲良しグループ(笑)に加わることになった美丘は、
強くたくましく下ネタOKのすっ飛んだ、美丘ならぬ『嵐が丘』だ。
「僕たち」の中に喜びも悲しみも楽しさも苦しさも、喜びも怒りも運んできた嵐のような美丘は実はいつ発病するかもわからない病気(ヤコブ病)を抱えていた。
発病したら数ヶ月のうちに脳が破壊され死んでしまう。段々壊れていく心と身体。
このあたりは所謂『アルジャーノンに花束を』だ。
彼女はことあるごとに生への執着と、死への怒りと今このときの懸命さを見せ付ける。

美丘と彼は急速に接近して、キスしてSEXして、重なり合っていく。
これ以上ないほど人を愛した時、そしてその相手が刻一刻と「壊れて」行く時、
私ならどうするだろう? 彼女を見つめ続けることが出来るのか?
最愛の人が壊れていくのを? 

生涯一番愛している人が自分が、私が壊れていくのを見ているのに
私だったら耐えられるだろうか?
手も足も脳すらも動かなくなる、狂っていく私を?

彼女と彼が交わした約束はふたつ。
一つは彼女を最後まで見届けること、最後まで彼女が生きたことを、
この世に存在したことを証明すること。
もう一つは、彼女が壊れてしまう前に必ず消してほしいということ
彼は2回目のクリスマスの日、真っ赤な薔薇の花束を抱えて病室にたった・・・
彼はきっと約束を果たしたのだろう。
彼は二つとも、一生かけて果たし続けるはずだ。

はっきり言って先がどうなるのか解りやすい作品だ。
上記、いくつかの作品名を出してきたとおり、ありがちな話や話題になった泣けるストーリの組み合わせとも言えなくはない。
でも。
こんな素直な作品、あってもいいんじゃないか?

彼は二つの約束を果たし続けるはずだと先ほど書いたが、
一つ目の約束が先に果たされるのではない。
彼女を彼女であるがうちに消すということ。彼女の人生に幕を引くこと。
そのピリオドのあとに、彼のもう一つの約束が発動するのだから。
人が自分の隣で生きていたということを証明する、
それは生き続けるということに他ならない。

正直言うと私は泣けなかった。しかし目が離せなかった。
ラストがどうなるのかだいたい予想が付いていたにも関わらずだ。
そういう作品を、臨んでいるからかもしれない。
秒読みするようなカウントダウンの緊迫感が私を放さなかったからかもしれない。

最後までキッチリ読むことが、この「美丘」が存在することを証明することになるからだと
きっとそう感じているからなのだと、おもう。

美丘
美丘

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
「美丘」石田 衣良
不治の病の少女の最期のひと夏を描いた作品。 ...続きを見る
デリシャスな本棚
2009/10/17 13:56

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
『美丘』 by 石田衣良 ■空蝉草紙■/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる