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zoom RSS 『ボランティア・スピリット』 by 永井するみ

<<   作成日時 : 2007/03/16 00:28   >>

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以前、永井するみの作品で初めて読んだのは『さくら草』だった。

『さくら草』では子供服ブランドに執着を見せる女達の壮絶バトル(違うか;;)の話だったが、今回もところどころに人間の「執着」が見られる。
永井するみはまだ2作品しか読んでいないけれど、きっとこの作家は、日常にどこでも転がっているような題材から、誰でも持ちうるような人間の醜さやおろかさを抉り出すのだろう。
だから、当然そんなに激しい話になるわけでも、悲惨な恐ろしい話になるわけでもない。
ただ、日常に根付いているだけにこちらとしては空恐ろしくなる。

地方都市の市民センターで開かれている外国人労働者向けの日本語教室。地域のボランティア先生はごく普通の一般人。リストラされた中年、奥様同士の会話についていくミエでしぶしぶ参加する主婦、外国人男狙いの色目的な女王さま希望の若い女性・・・様々な事情を抱えた日本人が、様々な国の様々な事情を抱えた様々な外国人をボランティアで教えている・・・そんなんで開かれている教室を舞台に、やはり様々な人間模様が描かれ様々な事件がおきる。ミステリーといえばミステリーだが、謎解きモンとしてはたいした物ではない。
ミステリーとしての魅力は正直、ない。が、むしろ人間の心情的なホラーサスペンスだろう。

「日本人」で殆ど埋まっているこの孤島の国「日本」では、いかなる民族もはじかれる。
なにしろ日本人以外がいるということ事態、すでに非日常なのだ。
そこに日常で固められた「一般人」の日本人がボランティアで関わろうというのだ。
事件が起きないはずは無い。

イラン人だとかタイ人だとかを、日本人はどうしても「怪しげなヒト」という目で見る。
物に触れば「盗むつもりじゃないか?」、身体に障れば「Hなことするつもりじゃ?」って。
たしかに彼ら・・・特に発展途上国からの出稼ぎ労働者などに犯罪者が多いのはあるのだろう。といっても私は警察の統計を観たわけじゃない。実際は日本人の万引き率の方がはるかに多いかもしれない。多分そうだ。
ただ、新聞を騒がすちょっとした「事件」の犯人は、どうしたって怪しげな外国人、なのだ。
犯罪の統計だとか事件性に関しては専門に任せるとして、この作品はそういうイメージが蔓延している日本で、当然起こるべき問題を抱えた外国人らの悲劇だ。
そして同時に語られるのが、そんな彼らを横目に日常に安穏としている日本人の側に発覚する悲劇である。
異邦人=外部と接点を持ち、事件が起き、混乱が生じ、彼らに押し付けて排除するはずの「厄介なこと」が 回りまわって自分のツケとして返ってくる。
日常に潜んでいた異物が、異邦人によってえぐりだされる、といえるかもしれない。
ここまで言ってしまうと、また私の「異人」好きに火がついてしまうので話が民俗学に飛んでいってしまうのだが(笑)
それでも延々と続いてきたもの(日常)のなかに安穏としていると、気がつかないうちにどす黒いもの・・・自分にとっての「異物」が知らぬところで大きく育っているということがある。
それに気付かされるのはいつだって異界からの来訪者との交流によるアクシデントなのだ。
異界なんて言い方すると大袈裟かもしれないが、ようは外国人。非日常というには十分な要素だ。ことに、日本人にとっては。

ボランティア・スピリット
ボランティア・スピリット (光文社文庫)

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