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zoom RSS 『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』 by 桜庭一樹

<<   作成日時 : 2007/03/31 00:42   >>

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やばい。また作家にはまってしまった。最近どうも女性の作家にはまりやすい。
『少女七竃と〜』に始まって『赤朽葉家の伝説』でずっぽりはまり、サイン本につられて買った今回で「この作家、改めていいな」と思う。

主人公は13歳。わが心の名作『スタンド・バイ・ミー』を思い出させる年齢、お年頃だ。
多感な少女、何か異質なものに惹かれてしまう、脆弱で抗うすべを持たない『子供』とひとくくりにされている哀れな少年少女の時代が、私にも誰にもある。
何にも無いつまらない田舎に ぱっと異質な侵入者が現れる、というのが桜庭一樹のお決まりパターンであり主題である、と思う。

みな、生きるということにしがみついているか、縛り付けられているかしている。
この主人公山田なぎさもまた、現実社会で食って寝て生きていくための、敵を撃ち抜く、生き残るための『実弾』をひたすらこめ続ける哀れなか弱きガキだ。

ちょっとした物珍しさが噂の種になる片田舎。狭くてちっぽけなくだらないコミュニティ。
ここでも異人=外部からの侵入者、来訪者・・・マレビト(客人)が吊り上げられていく。
転入早々、自分は「人魚だ」とクラス中に言い放った奇妙な少女、その名も海野藻屑。
彼女は(人魚だから)足を引き摺り、自分勝手で都合よく振る舞い人の言葉に耳を貸さず、体中に汚染された痕だという「痣」をもつ。
藻屑は、自分の身体に刻まれ残された傷跡・・・様々キズアトを撃ち抜く実弾を持っていない。
だから甘い「砂糖菓子の弾丸」でひたすら現実を空打ちする。甘い嘘のどこかファンタジックな甘い弾丸でムリヤリつじつま合わせて生きている。

彼女とは逆に、切実な現実問題にさらされて実弾ばかりを込め続けたのは山田なぎさだ。
ネックは引きこもりの、隔絶された一部屋の中でだけ生きている貴族王子・・・兄。
大人になりたい、でもなく 大人になれる、でもなく 大人にならなくちゃならないという切羽詰った強迫観念にも似た負い目を、自分自身に植え付けて追い立てている。

私も覚えがある。大人から見れば「子供がそんなことを考える必要は無い」し、子供は子供らしく大人の言うことを聞きなさい、高校行って就職して・・・となる。
それでも、「私がしっかりしなきゃ」と、「私が支えなくては」と、意味も分からず囚われてしまうことがある。
なぜって、その大人と社会という世界とがあまりに大きく危険なものとして子供達の目の前に突然広がってくる、そんなことがある世の中だから。

なんでもないことのように起こる事件。抗うことも出来ずに増えていく傷痕。
犯罪、DV、イジメ、動物虐待・・・そんなものが平気で転がっていて、いきなり襲い掛かってくる。そんな世の中。
そんな世界に生きた少女達。一人は「甘い砂糖菓子の弾丸」で抗おうとし、打ち抜くことかなわず、実弾に撃ち抜かれて死んでしまった海野。
もう一人、山田は彼女に出合って、触れて、惹かれて、それでも現実を生きていくために実弾を込める決心をした。そして生き延びていく。
山田は、確かに実弾を篭めて大人になる決心をした。けれど最初の、海野に出会う前の彼女とは明らかに成長し、変わっている。
彼女は忘れないだろう。甘い弾丸を込め続けて果てた少女がいたことを。
この世界には実弾を持つことが出来ず、無力な力無い子供達がいることを。

私も、忘れたくない。

余談ですが、bk1に初めて書評を投稿いたしました・・・で、この作品の書評が目出度く『今週のオススメ書評』に採用されました♪観てやってください&気に入ってくださいましたら、「この書評がいいと思った」に「はい」と答えてやってください(笑)砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない―A Lollypop or A Bullet
砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない―A Lollypop or A Bullet

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『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』桜庭一樹
『私の男』で直木賞を受賞した桜庭一樹の作品。こういう作品のジャンルをライトノベルというのでしょうか。軽いのか重々しいのか、掴みどころのない感じを初めに受けました。 冒頭からショッキングなバラバラ殺人事件。転校生はちょっとエキセントリックな美少女、主人公の兄は一般社会から引きこもった美少年。子どもは弾丸で戦う戦士というアニメっぽいイメージ、かと思えば飼い犬やウサギのバラバラ死体を平気で登場させる猟奇性。砂糖菓子、人魚など夢見がちな甘ったるい言葉たち。…表面的には少女趣味でけったくそ悪い要素... ...続きを見る
珈琲Time
2008/04/06 11:24

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