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zoom RSS 『花宵道中』 by 宮木あや子

<<   作成日時 : 2007/04/26 01:16   >>

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各々5人の吉原の女郎を主人公にした5編から成る、悲しく苦しく狂おしい悲恋が繰り広げられる。吉原の小見世山田屋を舞台に、5代にわたる遊女達の悲恋話だ。

遊女・・・女郎・・・今映画『さくらん』が後悔されているから、あまり知らない健全な若者は「さぞや綺麗な着物を着た水商売の女達の、艶っぽい話だろう」と思うだろう。
進んで水商売をする女すらいる恵まれた今の時世。江戸時代の吉原で、女達がどれだけ陰惨な境遇の下この職に身を落とした・・・いや、落とされたのかわかるまい。
悲劇的な貧困の下、親に売られ、廃れた店(見世)に売りだされ、どこぞの客に買われる女達。
病に犯され叶わぬ恋に狂い、おはぐろどぶには春に冬にと彼女らの死体が上がる。
私は恋をしない、恋なぞ知らぬ、恋は捨てた。ひたすら心を隠し心を捨てた努力虚しく、彼女らは恋に落ち溺れてしまう。5つの章は話が前後しながらも互いに繋がりあい微妙に重なりあいながら進む。
ここには恵まれた女などいはしない。大見世に出される売れっ子すら足抜けし、美しく育った女すら悲痛の想いに暮れている。どこを見ても救いのないこの界隈で彼女らはそれでも必死に生き、生き、己の信念の通りに生きぬいている・・・なんと悲しく、なんとたくましいのだろう。

私はオムニバスが好きだ。特に一つの出来事が軸になり、その周りをいくつかのドラマが展開しいくつかの「別の真実」が語られていく・・・一つの事実にいくつもの真実が明かされるのが、たまらなくいとおしいのだ。 幸福と見られていたコトが他方からすれば不幸であり、不幸のどん底であったことが実はこの上なく幸せであったり・・・真実は人の数だけ存在するのだということを感じることが出来るからだ。
吉原に生き散っていった彼女らの生き様は、それは悲惨なものだっただろう。
彼女らが足を開けばご開帳。観音様を男に拝ませ金を貰うご本尊自身は決して幸福な人生ではあるまい。どうにもならない恋心を引き摺り、狂おしい想いを隠し、ひたすら諦める事で生き抜いた彼女らは裕福や幸福とは縁遠いものだったろう。
しかし、章が進み「別の真実」が語られていくうちに・・・たとえこんな境遇でもそれでも自分の思うとおりに生き抜いた彼女らの生き様を単に不幸という言葉では片付けられないのだと確信する。
おはぐろどぶに浮かぶ姉さん、足抜けする姉、残る女・・・だれもかれも生きたのだ。
彼女らが唯一つ共通して望んだこと、それは「私が今ここに生きていた、こうして生きているのだ」ということを誰かに残したかったということ。そして「彼女が生きたことを忘れない」ということだ。
巻末に著者の言葉がある。
「・・・遊女達の魂が少しでも慰められることを願います。」
忘れないこと、語りつぐこと、それが唯一の慰めだ。そう思う。

 ついでにいうと、これが新人!?ウソだろ?と驚いた。次回作も私は買うに違いない。





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『花宵道中』/宮木あや子 ◎
『花宵道中』は、第5回「女による女のためのR-18文学賞」大賞と読者賞を同時受賞したという、色々な意味で「水無月・Rなんかが読んじゃって良いのだろうか」という戸惑いが発生してしまい、つい手を出し損ねていた作品です。 でも、読んでみて結果は、読んでよかったわ〜(^^)です。 しっかし、これがデビュー作とは、怖ろしいものです、宮木あや子さん。 ...続きを見る
蒼のほとりで書に溺れ。
2008/09/25 22:24

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
空蝉さん、TB&コメント、ありがとうございました(^^)。
悲惨な過去や現実、それでも一途に生きる女たち。とても良かったと思います。
これがデビュー作だとは、ホントにすごいですよね〜。
水無月・R
2008/09/25 22:32
昨今の花魁ブーム、まだまだ健在でいて欲しいです。昨年の直木賞受賞した吉原手引草も秀作でしたが、私はやはり艶っぽい宮木さんに惹かれてしまいます・・・先が楽しみな新人さんですよね。
空蝉
2008/09/26 09:06

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