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zoom RSS 『前巷説百物語』 by 京極夏彦

<<   作成日時 : 2007/05/11 18:34   >>

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待って待ちわびておりました、京極氏の最新刊!しかも『巷説〜』シリーズ。
にしてもどうしてこう、ヒット作ってあとから「出会い篇」や「誕生篇」みたいの多いかなぁ(笑)
『リング』もしかり。(『バースデイ』とかね;;)

今回は又市が江戸に流れてきて、ただの小又潜りから御行の・・・本当の裏世界に足を踏み入れるまでのお話。最後には祇衛右門の話も出てきて、少女時代のおぎんもちらり。(旧鼠)
6編からなる、相変わらず分厚い本だが一気読みさせるだけの面白さは健在。
6つは後半少しずつリンクしてくるので長編の感もあるが、基本的には6つの中篇。
化け物(仕掛け)も依頼主も、損得した者もみな違う。違うのに、芯は同じものが貫いている。
何度と無く出てくるのは、やはり神や仏の在りや否や、というところ。
とはいえ決して小難しい薀蓄やら講義ばったモノが語られているのではなく、もっと身近で単純で、けど切実な問題だ。

そもそも「この世に不思議は無い」と断言し、「嘘を真実、真実を嘘にひっくり返して」世間の小又を潜って生きている又市のお話である。
「かみなり」あたりからその様相はいよいよ濃くなってくる。
在るのか無いのか。それを決めるのはナンなのか、誰なのか。それを求めるのは?
  
・ 「在って欲しいもの、在るべきだと考えられるもの、というのはね、
  これ、無いのに在るんですな」 
・ 「嘘か」「ですから、嘘ですが真実なんですよ」そうか。神様と同じか。

雷の正体が雷獣という幻獣である、という巷説(というか言い伝え)についての話から、いつもの京極氏の作品らしく、在り得ないもの・・・神や仏や幽霊なんぞが嘘か真か、という話が引き合いに出され展開していく。

・「如何にもならぬものを、如何にかなるものに置き換えて、如何にかしようというんですな」

雷とか摩訶不思議な物事とか、人知を超えた力量の及ばない物事に遭遇した時、人はとにかく『名前』をつけて納得の行くものに置き換えて、とりあえず安心と充足を得ようとする。
それでもどうにもこうにもならないことは、困った時の神頼み。裁量を神仏に任せて「しょうがない」と納得する。 改めてこの手の話には感じ入ってしまう。
私なりに思うに・・・ 神仏のお裁きだから納得するのではなくて、人は納得するための沙汰を得るために神仏をつくるのだ。 そんな風に思う。

最後、「旧鼠」ではまず弱肉強食の自然淘汰(ってこんなコトバは勿論無い時代だけれど)の均衡=バランス=釣り合いの取れる地点について、猫(祇衛右門)と鼠(被害者)でもって語られていく。まず猫と鼠、強弱の差、食う食われるの違いは致し方なくともどちらが偉いと言うことは決してないと提示される。   まあ、この強弱関係と祇衛右門とは真実は違ってくるのだが。  
祇衛右門は冤罪で5年前に殺された。しかし祇衛右門という信仰が残った。
何も無い人間、非人ですらない「人」として認められない身分の人間が、それでもただ自分でいられる信仰だ。何でもない者であるなら何にも何もされない、干渉されないさせない。
祇衛右門が教えたその唯一つの光が彼ら「何者でもない」者達にとって信仰になった。
祇衛右門は殺されていない。祇衛右門は化けて出たのでも祟りでもない。
祇衛右門を神にするには「殺しても死なない」という奇跡を組み込まなくてはならなかった。

無いモノを在るとしてしまうことでしか救いを得られなかった、アウトローの信仰が作り出した幻想、システム、それが祇衛右門だ。

胸が熱くなる。あまりに切実で、痛くなる。

ここではこの祇衛右門を悪用した偽者が捕まっていない。
それが再び話しに上るのは『巷説シリーズ』に繋がる。もう一度読みたくなってきたぞ〜(笑)
こうして『前巷説〜』を読んでみればさらにもう一層、本編も感じ入ることだろう。

少しずつ主軸が濃厚となり、最後一点に絞り込まれるお手並みはお見事!
さすが京極氏である。


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『前巷説百物語』/京極夏彦 ◎
ハイ、きましたよ〜♪ 『巷説百物語』シリーズ! 御行の又市さんが、青臭い若者なんですねぇ〜。あの又市さんが、怪談になぞらえて人ならぬものの仕業として、物事の始末をつける、その発端を描いた物語です。思わず、「又市キターー!!」とつぶやきながら読み始めてしまった、水無月・Rです。(←最近、とみにアタマがゆるくなってきています{%tohoho_a%}) ...続きを見る
蒼のほとりで書に溺れ。
2007/08/20 22:15

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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
空蝉さん、こんにちは。
私も『前巷説百物語』、読みました〜♪
ちょっとだけ出てきた百介さんが、嬉しくて仕方ありませんでした!
相変らず、まとまりのない感想記事ですが、トラックバックさせてください。よろしくお願いします。
水無月・R
2007/06/04 23:58
すみません、TB上手く出来てないかもしれません・・・。なので、もう1度TBをして見ました。重複していたら、ごめんなさい。
水無月・R
2007/06/05 21:21
こんばんは、トラバできてますよ〜まとまりが無いなんてとんでもない!いつも水無月さんの書評は詳細でわかりやすくて本を読まなくてもツボがわかる(笑)のでので、トラバして貰えて光栄です♪
空蝉
2007/08/21 00:39

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