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zoom RSS 『毒草師』 by 高田崇史

<<   作成日時 : 2007/05/16 21:32   >>

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ノベルスで有名なシリーズ(QED)を書いているにもかかわらず一度もこちら高田氏の作品は読んだことが無い。今回この『毒草師』を手に取ったのは表紙が綺麗だったのと、題名が表紙とマッチしていてこれまた魅惑的であったのと(毒身丸かと思った;;)、ダヴィンチで取り上げられていたのをなんとなく覚えていたから・・・そしてその紹介文に「伊勢物語」「一つ目の鬼」「藤原氏」・・・などなんとも私を誘惑する単語が並んでいたからだ。

結論から言うと、思ったほど・・・いや、面白いは面白いんだが、あっけなかった。
もう終わっちゃうの!?早っ!あっけな・・・。というのが正直なところ。
着想とかチラホラ出てくる「伊勢物語」の薀蓄だとかは面白い。古典には素人程度の知識しかない私にとって、この中に出てくる伊勢物語の裏知識(けっこう有名なのか?)というか、教科書では教えない解釈は、それなりに楽しませてくれた。それだけならそういう古典の解説書でも読めばいいじゃないか、といわれるかもしれないが、私はわざわざ古典の教科書で教えない必要以上の知識を本を買ってまで仕入れようという気力に長けた人間ではない。
民俗学的に面白いもの・・・あくまで「鬼」にこだわったものなら喜んで読むだろうが。そこまで幅を広げてられないのである。金銭的のも時間的にも、悲しいかな。
愛すべきミステリの中でこうして薀蓄が語られるからこそ読む機会があった。民俗学やら神話やら昔話・伝説の類が舞台に上がりやすい「ミステリー」は、私にとって常に情報の蓄積源なのである。
とまあ、前置きが長くなった。

東京の旧家で密室から連続失踪と謎の毒物による殺人事件が起きた。祖父の代から続く「一つ目の鬼」の目撃とそれに必ず続くのが密室からの失踪。 事件をかぎつけた編集者とその隣人奇人変人・・・〈毒草師〉の御名形史紋が、この事件の解決に乗り出す。

『伊勢物語』の「鬼一口」はあまりに有名な話。この作品には伊勢物語から派生して在原業平の詠んできた歌の数々があげられ、彼の歌に込めたであろう意外な真理(一説?)が語られる。まさに「へぇ〜」とボタンを押したくなるような解釈が並べられ(笑)この点実に面白かった。
また「一つ目」に関する民俗学的な知識もまことしやかに語られ、この辺りは既知の範囲ではあったが、復習するような思いで読め、なかなか楽しかった。
ただ、この辺りの民俗学的知識のお披露目は、折口信夫や柳田國男、最近で言えば小松和彦氏の出されているものを読めばより詳しいし新しい発見・新解釈では全く無い。

これだけいろいろと博物知識を出しているのだから、もう少しそうした昔話や民俗学の深層心理というか・・・殺人を起こすまでのどす黒い心情やらをリンクさせて欲しかった。
結局、殺すほどのことか?という程度に思えてしまう。これだけ在原業平やら一つ目=鍛冶屋の話、読み人知らずを持ち出してきたのだからもう少し暗い部分や哀れな歴史を犯人・この旧家になぞらえさせても良かったのではないか。もったいない。

横溝作品や江戸川乱歩の作品の着想だけとって現代的に&感情抜きに&単純明快に面白く書き直したライト版、といったかんじがしてしまうのが残念。
だが、ミステリーとしては最後まで楽しませてくれた。

着想も材料も面白い。興味深い。
もっとページを割いて細やかに丁寧に仕上げてくれれば・・・とつくづく思う。

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