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zoom RSS 『ダナエ』 by 藤原伊織

<<   作成日時 : 2007/06/03 21:08   >>

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『てのひらの闇』『テロリストのパラソル』に続いて3作目の読了。
かなり前に読んだのだが、UPを忘れていた・・・ので、今さらながらそのまんまブログをUP。

ハードボイルドを滅多に読まない私が藤原氏の作品に出会ったきっかけはドラマ化された『てのひらの闇』だった。ミステリーやサスペンスはドラマで飽きるほど見ているが、非常にいい出来だったのを記憶している。当然原作もさぞや・・・と思い手に取った、そして期待を裏切らない作品だった。それ以来なんとはなしに古本で見つけては(笑)読んでいる。

藤原氏の作品はどれもハードボイルド(HB)独特のにおいが漂っている。今作『ダナエ』は決してHBではないが、それでもよくボイルドされた・・・生き生きした男達のよく焦げた匂いが漂ってくるのだ。もっとも、私のような若造、しかも女に何がわかる!といわれそうだが。

3つの中篇(短編?)からなる珠玉の作品集。どれも似てはいるが各々良い出来だ。
(1)ダナエ ・・・個展に出品された肖像画に何者かがナイフを突き立て、硫酸をかけた。その事実を知り犯人からの電話がかかるが、しかし画家は通報すらせず怒りもしない。彼の過去と空虚なアトリエに犯人は現れる・・・

(2)まぼろしの虹 ・・・母の不倫が発覚し再婚同士の両親が離婚する。お互い連れ子同士の再婚だったのだ。その義姉弟につきまとうストーカーの正体とその意外な動機とは?母と彼の母とを結ぶ男が浮かび上がりその生き様が語られる。

(3)水母・・・かつては輝いていたが今は落ち目のクリエイティブ・ディレクター(CD)。彼の前に元妻の恋人が現れ、彼女の窮地を救うべく助力を求められた。一度は知らぬ存ぜぬを決め込む彼だが・・・

どの作品にも言えることがある。主人公、もしくは最も語られる中心となる人物がいい年をした男性であり、いわゆる団塊の世代とでも言うのだろうか、もうひと咲き終わった「老人」タチなのである。老人といっても年齢的なことではない。登場するのは彼らと、彼らの次の世代の若者達。最初の「ダナエ」でも語られるように古い人間たちの独白でもある。
「古い時代の人間」が、己の「古い時代」のことを語り、今の時代と今の時代を生きる若者たちを目の前にある諦念を思う。それでも、よみがえって来た過去を迎え入れ、埋もれていた過去がもう一度現代にリンクし、もう一度現在に一花咲かせようともする。
彼らは過去を引き摺ったまま幽霊のように生きてきたかもしれない。ただ、彼らはまだ生きている。そして、掘り起こされた過去と心中する。決して過去を捨てずに、心中する。
彼らにとっての最後の戦いであり、最後の締めくくりであり尻拭いである。だから、熱いのだ。

どれもロマンチックなお話、といえるかもしれない・・・けれどこれが心中劇である限り、単なるロマンチックで終わるものではない。
私もあと40年もしたら同じようなことをすることがあるだろうか。女なりに女のツケが回ってくるかもしれない。その時この作品が手元にあれば、素直に心中できるだろう。そう願う。


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