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zoom RSS 『シャドウ』 by 道尾秀介

<<   作成日時 : 2007/06/17 17:59   >>

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精神異常の病人による犯罪というのはいつの時代も大きな関心を引く。
それは精神異常という「病気もち」は犯罪者として処罰されずに済んでしまうという現実があるからだ。
簡単に、単純に極論を言ってしまえば悪意がなければ殺しても罪に問われない。
もしくは刑罰を科した所でどうせそれを正しく全うすることが出来ない。 ともいえる。
犯罪を犯し捕まった途端に精神病になって刑罰を逃げおおせようとするものも多いのは当たり前だし、ニュースで「精神病の疑いがある」という言葉が出てくるたびに(少なくとも私の家族は)どうせまた詐病だろう?とまともに取り合わない。それが現実。
さて、ミステリーにおいて同じく精神異常者をメインに扱うとどうなるか。
「心を病んだ人間」である犯人は、作中においてそれは現実での胡散臭さを払拭し、美しく妖艶なドラマになる。現実で「不可解」と片付けられてしまう精神異常は、作中ではミステリーのための謎やトリッの材料に置き換えられ、犯罪に至るまでの長く険しい道のりを味付けし、挙句犯人に同情すらさせてしまうアイテムとなってしまう。
京極堂シリーズなんかを読んでいると特に、煙に巻かれるように物語に巻き取られてしまう。
現実社会では「精神異常だろうとナンだろうと、犯罪者は犯罪者」と言い切っている読者も、物語に巻かれるうちにいつしか犯罪者を「かわいそう」とか、同情の余地ありとみてしまう。
それがいいか悪いかは私には解りかねるが・・・小説は小説の中だけ。あくまでもそう割り切って考えていたい。

さて、だから今回読んだ『シャドウ』はある意味新鮮だった。 犯人に対する同情の余地がまったく無い。読者である私は犯人の目星を二転三転し、ようやく落ち着いたと思ったら実は・・・というラストの展開。2/3ほどまではダラダラ進んでいるしもっと短くてもいいのではとも思う。
しかし後半、犯人と思われるものが出ては消えクルクルと変わる真相はなかなかのもの。
どんでん返しというか、目が離せない。
私としては最初出てきたときから怪しい、と思っていた奴が犯人だったわけだが・・・途中読み進むうちすっかり彼の存在を失念して他の目星をつけていた。まんまと著者の引っ掛けに振り回されていたわけだ。

この題名『シャドウ』だが、「トリックスター」とも言われる・・・もう一人の自分、自分を映し出す(反映している)鏡、といったものだろう。グウィンの『影との戦い』でもおなじみの、まさに影だ。 主人公は5年生の男の子(鳳介)、彼の父(洋一郎)、父の親友とその娘・亜紀(鳳介の幼馴染)彼らの母(妻)。母親が死んでから鳳介は妙な夢を見る。記憶の底に閉じ込められた、いたはずの記憶だ。続けて亜紀の母が自殺し、亜紀も交通事故にあい、父の異常な行動も重なり鳳介は父の先輩である同じく精神科医の田地に相談する。一方亜紀は自分の子供ではないと「思い込む」父。
この家族ぐるみで付き合ってきた4人、とくに研究医である父親2人のどちらが「思い込んで」いる精神異常者なのか?という点で読者はずっと翻弄される。

なかなか凝っている、面白い。異常者はこいつか?こいつか?と探っている私も不謹慎だが・・・現実世界の出来事ではないから、面白く読むことが出来る。
しかし。実は今見ているこの現実は私の思いこみではないか?と思いはじめると・・・いや、恐い;; われ思うゆえにわれあり。しかしその我思う・・・思っていること自体が幻では?
非常に恐ろしい要素を含んだ主題だ。しかもすっかりだまされてしまった私は、いよいよ自分の立場が思い込みではないかといぶかしんでしまう。
主人公の年齢が小学5年生というのには、無理がある点がかなりあったが・・・
非常に興味深く面白く読ませていただいた。


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