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zoom RSS 『弱法師』 by 中山可穂

<<   作成日時 : 2007/06/19 00:53   >>

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とうの昔に読んでいた作品だが縁あって再読。やはり中山氏の作品は痛い、強い、熱い。
登場人物の放つ言葉は、こちらがこっ恥ずかしくなるくらいまっすぐの直球であり・・・まっすぐであるがゆえに脆く折れやすい危うさを含んでいる。こぎ続けなければ倒れてしまう自転車のように、ひたすら加速していく物語を、中山氏はいつもつむいでいるように思う。
それは中山氏自らも公言するレズビアンという違和感=世界からの疎外感が、彼らに安穏とした生き方を許さないというスティグマを刻んでいるからかもしれない。
ともあれ、今回収録されている3篇は比較的どれもレズビアンを取り上げてはいない。どれも中性的で、そういった問題は2次的な問題として隠れてしまいあまり問題になっていない。世間がどうだとか外的要素は殆ど排除され、ただひたすら彼らメインキャラクター達の内面から始まり彼らの中でだけ完結する物語となっている。
だからこそ描かれる彼らの激しい熱情は一層ダイレクトに伝わり、こちらに訴えかけてくる。先のわからない結末ではなく、なんとなくこうなるであろうラストを私達は暗黙の了解として知っている、そのラストに向かってひたすら加速していく。それがこの本『弱法師』。
私が好きなのはやはり2作目「卒塔婆小町」。1作目「弱法師」・・・薄命の義理の息子にほだされて挙句捨てられる男の物語には、正直共感できない。逆にキャラがカッコよく、血反吐を吐くような豪速球の人生を描いている「卒塔婆〜」には巻き込まれるようにのめりこんだ。
なんだか音楽・・・「月光」のようだ・・・第一楽章がスローテンポで、第二楽章が熱情の様なアップテンポ、第三楽章でしっとりと纏め上げられる。まさにこの3作でもって『弱法師』が出来上がっている、とてもバランスがいい。

『卒塔婆小町』
能の卒塔婆小町と同じく、ある落ち目作家が墓地で薄汚いホームレスの婆と出会い彼女の過去が語られることで物語が始まる。彼女はかつては若き美しいやり手の編集者で妬みと競争の中、愛を知らずに必死に走り続けていた。12歳も年下の新進気鋭の純愛小説家と出会い愛されてしまうことから悲劇は始まる。小野小町に中将が100日夜這いをしたのと同じ、100本の作品を彼女にプレゼントした時彼女をモノに出来るという破格な条件の下、彼はそれこそ血反吐を吐く思いで書き続ける・・・やがて彼の精神も肉体も蝕まれ何もかも出し尽くしてしまう。・・・彼が最後の100作目を書き上げる時取った行動は、まさに明日のジョー(いや、笑いどころじゃなくて、本当に;;)

久しぶりに読んだがやはりイイ。 文章が単純明快で解りやすくストレートな中山氏の文体は悪く言えば単純すぎて深みが無い、かもしれない。だけどそれが気持ちいいほど痛快なのだ。
今まで読んだ中では『ケッヘル』が最高だったが、短編でこれだけ気持ちよく読ませてくれるのは他に無い。この暑い夏に、今日はさらに私の能・・・じゃなくて脳が熱かった。



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『弱法師』/中山可穂 ○
書評に「過剰な愛の果ては死さえ甘美」とあって読みたくなった、『弱法師』。中山可穂の作品を読むのは、初めてだと思います。能の名作をモチーフに描いた三篇からなっていますが、能の知識はなくても、困ることは全くありませんでした。 ...続きを見る
蒼のほとりで書に溺れ。
2007/06/19 21:19

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
空蝉さん、こんにちは(^^)。
TBありがとうございます。こちらからも返させていただきますね。

この3篇どれも、息苦しいまでの熾烈な愛、すごいですよねぇ〜。
読んでいてどんどん吸い込まれてゆき、苦しくなってしまったぐらいです。

実は、空蝉さんお薦めの『ケッヘル』、今日図書館で借りてきました。上下巻なので、少々時間が掛かると思うのですが、読み終えたら感想UPしますね。
その際、空蝉さんからお薦めいただいた、って書いてもいいですか?(出来れば空蝉さんのトップページへ飛ぶようなリンクをつけたいのですが・・・)
水無月・R
2007/06/19 21:26
TBありがとうございます。中山氏の作はどれも苦しくて痛くて熱いです!でもどうしようもない狂気と愛が抱き合わせで、あまりに直球で目が離せません。
『ケッヘル』読了報告お待ちしております♪わ、私の名前なんぞを!?きょ・恐縮です;;どうぞ使ってやってくださいませ。
空蝉
2007/06/20 00:23

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