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zoom RSS 『とりつくしま』 by 東直子

<<   作成日時 : 2007/07/28 23:47   >>

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無人島に住むことになったあなたはたった一つだけ大切なものを持っていけます。何にしますか?
そんな心理テスト?クイズをされたことがあるだろう。わたしにとって絶対に手放せない命の次に大切なものは何だろう?くだらないクイズだけど物凄く悩んでしまう究極のチョイス。
この『とりつくしま』はかの有名な『スカイハイ』を思わせる、少しホラーで少し温かい短編集だ。
そしてここにも究極のチョイスが待っている。
・死んだことに不満がある死者が無生物に一度だけとり憑くことが出来る。
・その対象が半分以上消滅すると、「あなた」も完全に消滅する。
・ただとり憑けるだけで何にも出来ない。
という制約のもと、老若男女様々な死者が一番会いたい人間の傍へと降り立つ。

『スカイハイ』でもわかることだが、この手の話にはいくつかパターンがある。
知らなければ良かった・・・いわゆる知らぬが仏(本当に死んでいるけど)とか、
もう一度見る事(会うこと)が出来てよかったとか、
何にも思い残すことが無い自分が悲しくなる、とかだ。
この『とりつくしま』も例外なくそうした死者達を紹介している。

報われない思い、知りたくなかった現実、死して初めて知る真実、悔しさ嬉しさ悲しさ・・・
死者の数、生者の数だけ人間関係があり感情があり、ドラマがある。
思う側と思われる側がある限り、必ず心の向かう方向も強さもギャップがある。
そして死者は(「スカイハイ」とは違って)何もすることが出来ない、ただ見ているだけ、である。
しかしだからこそ、私は思う。世界は生きているもののためだけにあるであると。

実は私はこの短編集の中で一番好きなのは第1話目「ロージン」である。
母親が14歳の一人息子のことが気がかりで、ほんの少しだけ、一緒にいたいと願う。
彼女はピッチャーである息子のロージン(投げる前に手につけるあの白い粉)になり、消耗品として「ほんの少しだけ」一緒にいることを希望するのだ。
「いいんです。あの子にとっても私にとっても。あまり長くいない方がいいんです。長くいすぎると、あとできっと、すごく辛くなると思うんです」
母の言葉が私に突き刺さる。
もしかしたら私の母はずっと見届けたいと思うのかもしれない。強い人だから。
父は見届けられるものになって心配そうに見続けて死んでからも胃潰瘍になるかもしれない。
でも私は・・・そこまで大切な人がいないから解らないけれど・・・
きっとこの母親と同じものになる。そんなに早く消耗するものじゃないにしても、
永遠の観察者でいることはきっと出来ない。
生きていないことが、何も出来ないことが、その人の居る世界にはもう居ないのだということが刻々と生々しく思い知らされるのだろうから。

正直、そんなに泣ける話でも、面白い構成でもなかった本だけれど(笑)やはりこういうものを読むと考えさせられてしまうのだ、私は。
今生きていることを素直にありがたいと思う。
自分にとって今一番大事な人は誰ですか?彼(彼女)は私が居なくなったらどうなりますか?
そんな問いを究極のクイズに加えたい。

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『とりつくしま』/東直子 ◎
ううむ・・・。いかん・・・。 「ハートフルファンタジー」な評判の方ばかり覚えてて、「死んだ人がものにとり憑く」という根本的な設定をすっ飛ばして読み始めてしまいました。 そして・・・泣いてしまいましたよ。・・・く、くそう。ダメなんだようぅ〜こういうの。 逝く者、残される者、お互いの未練というのが全部、私自身の覚悟のなさへ跳ね返って来てしまうんですよねぇ・・・。あ、いえいえ、辛い涙だけじゃないんですよ。なんか、心暖まるなぁ・・・て言うのもありました。 ...続きを見る
蒼のほとりで書に溺れ。
2009/06/16 22:00

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
空蝉さん、こんばんは(^^)。
「ロージン」は、良かったけど、泣いてしまいました。何というか・・・ホント自分が生きることにすごく執着がある人間なんだなぁ・・・・と。
痛いところを突かれたな・・・と思いました。
でもそれでもいいのかもな、とも思える物語でした。
水無月・R
2009/06/16 22:03

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