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zoom RSS 『私が語りはじめた彼は』 by 三浦しをん

<<   作成日時 : 2007/07/30 18:06   >>

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三浦さんの中で始めて真面目な小説を読んだ(笑) 今までエッセイや読書録?や奮闘記系の本ばかりだったので。それにしても上手い!
何が上手いかって、(同じことを人が変わり場所が変わり事態が変わりはしても)同じことを作中でくり返しているのに、一つ一つが面白く、しかもさら〜っと読ませるので飽きさせないのだ。
例えば「まほろば町〜」。主人公と相棒とでこなす便利屋の一話完結モノとして、何編かの読みきりとしても面白く読めるが、全体を通してちゃんと流れがありストーリーがある。
今回の『私が語りはじめた彼は』も然り。一人の大学教授「先生」という軸があり、その軸を中心に家族と教え子と女達とが交錯し、それぞれのドラマを繰り広げている。
一つ一つ独立して読んでも面白いこの作品だが、一人の人間を軸にすることで一つの大きな流れ・主題に必ず行き着くようになっている。

BOOKベースの紹介に
「あっという間にアカの他人。でも実はまだ切れていない、「彼」と私の仲。それぞれの「私」は闇を抱える、「彼」の影を引きずりながら。男女の営みのグロテスクな心理を描く“関係”小説。 」
と出ていたが・・・だれだよ、この評価書いたのは?男女の営みのグロテスク??はぁ?
・・・失礼。でもこの評価はこの本を読んだ人が書いたとは思えない、それくらい勘違いも甚だしい。まあ、読み人により感じることが違うんだから私がどうこう言うのもなんだが。

村上教授という愛を求めて止まないサミシイ男がいた。彼は何人もの女と恋仲になり、不倫をし、人妻を離婚させて再婚もした。

彼の妻は「私の痛みは私だけのもの・・・誰にも犯されることのないものを、私はようやく、手に入れることができたのです」と独り言を言う。
離婚を申し出た彼女はきっと生涯再婚しない。誰も村上以外を愛しはしないだろう。
この世で一番醜く美しい結晶、と彼女が自負するそれを、彼女は手に入れたという。
彼女は自分の醜いまでにさらけ出して愛したその心、執着を、彼を語ることで手に入れた。

彼の被害に遭った立場である人妻の夫は、信じていた円満家庭があっさり壊れ愛も何もかもが永遠でないことを悟る。どんなものにも永遠は無くいつかは土に返るのみという「この世界を支配する無情の法則」に身をゆだね、それでも変わることなき永遠の愛を求め続ける「さびしくて繊細な人」村上(=先生)を哀れで愚かな男だと評価する。

そして彼の息子や村上の再婚相手の連れ子たちそれぞれに陰鬱な人生が展開する。
それはまるで彼の行動のツケが回ったかのようだと思う。
両親の離婚から「在りし日の家族の形にとらわれたままマヌケに冷凍保存されて」しまった村上の息子は、自分の全てが破壊されてしまった(=世界の終わり)を見続けている。
彼は一人の友人・椿に出会い、椿に語り、また椿の言葉によって愛された日の記憶、幸せだった家族の記憶を確かに認めることで、幸せを掴むことが出来た。

一方、村上の再婚相手の連れ子・綾子もまた孤独な妄想に捕らわれ、(かなりはしょるが)自分の生きた証拠を残すかのように殺し屋(と思い込んでいる)に自殺を見届けて欲しいと願う。

・・・とまあ、長くなってしまうが。
誰もが自分を語り、彼を語り、語られ語ることで自分の存在を確立している。
自分がここにただ一度、君と生きているのだということを聞いて欲しい。語って欲しい。
  「きみの話を聞かせて欲しい」
そう、願うのだ。

私はこの物語が好きだ。
正直言うと、ちょっと後半(「家路」)は退屈したが、それでも一つの主題を貫いて私を感動させた。
今ここに生きていることを、永遠なんぞくそくらえ!と思いつつ語りだしたいとそう願う。

私が語りはじめた彼は
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