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zoom RSS 『首挽村の殺人』 by 大村 友貴美

<<   作成日時 : 2007/08/22 00:17   >>

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いかにも横溝っぽい陰惨な雰囲気漂う題名だが、名前負けすることなく中身が見事受賞を決めただけあってなかなか面白い。
舞台は岩手すなわち民話や昔話が色濃く残る地。しかも冬の間は雪山により「外部」との行き来が断絶する鄙びた鷲尻村で一人又一人と村人が死んでいく。
医者を切望する「地方」であるこの村に東京から一人の医者(杉)が赴任し、彼が死ぬことから事件は始まった。殺人とも自殺とも熊による殺戮ともとれる死体が次々と上がり、やがて杉の後任・滝本とその妹であり杉の元婚約者・瑠華が現れ、事件の真相を探っていく。
「首挽村」=鷲尻村の血塗られた昔噺がささやかれ、その昔噺になぞらえる様な変死体が次々と上がる。犯人は昔噺を知る村人の中に犯人の目星がつけられるが・・・

数多くの横溝系ミステリが存在するが、私にとってこの作品はかなり異質である。 
古い伝承を模した殺人や過疎地方を舞台にし、秘められた愛憎が動機で猟奇殺人が起きる、というのが民俗学ミステリー?の大まかな基本パーツだと私は考える。
その陰惨な昔話を知る人物=地元民が犯人だ!というのが今までの多くのパターンだと思うが、この『首挽村の殺人』はそれを根底から覆す生の声を、我々「中央」に訴えている。
昔話とは…この村の陰惨な歴史を後世に伝える為のアイテムであり、外=中央に向けてではなく内=共同体(身内)の中でのみ語り継がれるべきタブーである。
その昔話が見立て殺人に使われおおっぴらにしていく犯人が果たして内部の者でありえるだろうか? ・・・私は目から鱗が落ちる思いがした。
ここには、現実に今も我々と同じ世界を地方で生きている「村人」の本音がある。

同時に他の作品よりも(民俗学的な意味で)昔話そのものの構成にとても通じるところがある。すなわち、外部からの来訪による隔離された共同体内の変化>破壊>来訪者の帰去>再生という図式だ。折口信夫により提唱された客人(マレビト)つまり地方から見た中央からの来訪者が福や災いをもたらすという信仰のパターンである。

まあそこまで深読みすることもないかもしれないが、なんにせよ、民俗学ミステリというジャンルに襟を正すよう呼びかけるような作品であると、私は思う。



首挽村の殺人
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