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zoom RSS 『隕石誘拐―宮沢賢治の迷宮』 by 鯨統一郎

<<   作成日時 : 2007/10/16 01:43   >>

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鯨さんって、初期はこんなにミステリーが下手だったんだ・・・って思うような展開と謎賭けっぷりだったけれど、それでも面白いと思うのは鯨氏のユーモアのセンスと着眼点、そして研究熱心な姿勢の賜物だろう。

宮沢賢治そのものが多くの読者にとって謎に満ちた・・・というか、謎に満ちていることすら知られていない。その謎を掘り起こしてどんと見せつけ、「へ〜、宮沢賢治ってそんな変な人(笑)だったんだ〜」とこちらがトリビアボタンを押している間もなく、今度はそうした突っ込んだところまで知っている読者・研究者ですらぎょっとさせるような新展開を見せる。いつもながら鯨氏のこうした手腕・話運びには脱帽する。
この2重のトリビアに毎回舌を巻くのだが、今回はこれに主人公の妻と子供を誘拐した犯人探しという謎解きとサプライズがあるから3重の面白みがあるというものだ。

<粗筋>■名作『銀河鉄道の夜』の幻の第五次稿には、ダイヤモンドの隠し場所を記す記号があった…!妻と息子が誘拐された!童話作家修業中の中瀬研二は、誘拐犯の思惑を探る。狙いは、妻・稔美が、亡き父から在りかを知らされていたらしいダイヤモンド!?誘拐犯たちに先回りして家族を救出するため、研二は賢治童話の謎を探り始める。注目気鋭の第一長編、登場。(by Amazon)

粗筋にしてみるとこれだけのことだし、実際中身もそれほどふくらみがあるわけでもない(笑)
しかし宮沢賢治がその手記『アメニモマケズ』の中で憧れた「デクノボー」とは一体どんなものだったのだろうか?世界平和に尽くすスーパーマンのようなデクノボー。なぜそんな矛盾した存在に憧れたのか?『春と修羅』の中であれほど万民一斉の世界平和を切望した彼が、そう願うそんな自分をデクノボーといい、そういわれてもそうありたいと願う。しかしながらそうした態度がなぜデクノボーといわれなければならないのか?なぜそう記したかが誘拐犯の狙う七色(レインボー)ダイヤを隠した宮沢賢治の罪の意識である、と。つまりダイヤを使って貧乏人や弱者を潤してやろうとする勇気が無かった自分の不甲斐なさを「デクノボー」としているのだという最後のシメは、なんだか腑に落ちたようで腑に落ちない。
むりやりこじつけたように思えるのが少し残念だ。

しかし数日前読んだ高原の『ゴシックハート』から、こんなことを思いついた。
ゴシックとは、超人的なもの、人間を超えた更なる存在へなろうとする強烈な羨望の果てである。そうなろうとするが成り切れずに己の身を呪う破滅的・悲劇的もの、人間にも超人にもなりきれない半端モノのモンスターがゴシックでありその苦悩がゴシックハートである。
では、ここでいうデクノボー=宮沢賢治は?
〜自分とひとと 万象といっしょに 至上福祉にいたらうとする(by 春と修羅)〜
万民万物を救いたいと願いながら、そうはなれない不甲斐なき・・・意気地の無い己を知っている賢治。超人でありたい、万民を救うものが欲しいと願いつつそうなれいでいる己を見つめる絶望は、やはりゴシックのそれではなかろうか。
まあ、こんなことまでこじつけるのは私くらいかもしれない(笑)

ともかく、楽しくトリビア的に楽しめればいいのだ。
宮沢賢治の世界に浸ってみるのも又一興。

隕石誘拐―宮沢賢治の迷宮 (光文社文庫)
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