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zoom RSS 『無痛』 by 久坂部羊

<<   作成日時 : 2007/10/24 00:38   >>

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患者を『観る』ことで症状ひいては助かるか否かまで解る天才的医師が2人。為頼は町医者で先が見えてしまう己の能力を最悪の医者と言い、白石は大病院のtopで最大限に利用し現在の医療に風穴を開けようとしていた。医療の資本主義化を促そうとする白石と、その下に控える先天的無痛症=「痛み」の概念を持たずその上、犯因症(生まれながら犯罪の可能性を持った性)をも持つ男イバラ。モト夫の病的ストーカーとそれに悩まされる臨床医・菜見子。そして彼女の精神障害児童施設の患者である境界型人格障害の少女が、一家惨殺事件の自白をした。その自白が自傷行為であると為頼が診断し真相を追ううちに徐々に彼らがみなつながり始める。
 予知能力が出来る主人公の苦悩を語った作品は過去にもあるし、近年で言えば人の寿命がわかってしまうあの『デスノート』の死神の目もこれに近い。そうしたテーマに惹かれるのは、人間が一貫して痛みを恐れ死を避けようとしてきた・・・少なくとも忘れようとしてきたからに他ならない。
この『無痛』の中には実に様々なタイプの人間が登場し、『痛み』に対してやはり様々な見解を有している。みな何かに引け目を感じ、何かにコンプレックスを抱き、それを必死に無視し気付かぬフリをして・・・無痛に安住し痛みを忘れようとしている。
痛みを忘れた時、人はどうなるか?痛みを知らぬものは「そうとはしらずに」他人を痛めつけることができ、時に無痛の自分の代用品として他人を傷付けさえする。そうした無意識の行為を心神喪失といい、病気であるといい、刑法39条
1 心神薄弱者ノ行為ハコレヲ罰セズ   2 心神耗弱者ノ行為ハソノ刑ヲ減刑ス
これに守られるのである。
今日の精神障害(とされた)者による残虐な殺人事件が報道されるたび、メディアではこの法律は必要か否かの論争が巻き起こる。心身喪失した状態の罪行為は罰せられずそれを利用し刑を逃れる犯罪者がいる以上健常者との線引きが必要となるが、しかし精神科医をもってしてもその判断は難しい・・・では一体何を頼りに刑罰を与えればいいのか?

私は以前、この刑法39条は彼ら心身薄弱者が裁かれないということに「差別」を感じていた。罰が科せられない=無法地帯=彼らはこの社会の住民として、人間として、認識されていないのだと。しかし今改めて考えてみるに、この「刑法39条」と明文化することで彼らはようやく39条のもとに法の中で、この社会の中で生きているといえる。39条は最後の一線なのだと感じている。法が適応できないなら放置すればよい、かつての村八分のように存在すら認めなければ良い。しかしあえて「罰せず」「減刑す」と明文化することでどうにか彼らを法の下においている。なんと薄弱な法である事か。私は法律家ではないし詳しくもないからあまり大言は吐けない・・・が、もっと細やかな多岐にわたるケースバイケースの措置法が必要ではなかろうか。

この中には「無痛」に対して様々な視点があると先ほど言った。憧れるもの、コンプレックスを感じるもの、卑下するもの、恐怖を抱くもの・・・我々のうち最も多いのが恐怖に違いない。(一見憧れる者が多いかもしれないが、痛みという危険察知方法がないことが自分の死につながることを自覚すればそうは思えないはずだ) 人間は自分と同じでないもの、認識できないこと知らないことに恐怖を感じる。ちょうど手も足も無い蛇や幽霊を恐れるのと同じように。
・・・イジメで最も堪えるのが「無視」「ハブにされる」こと。つまりその場に居ない=無とされる、存在自体が無とされることであるという。やられたらやり返すことも、罪を犯したら処罰することもできる、しかし「何もしていない」というイジメは始末に終えない。何をどう注意し処罰すればいいのか、「無い」問題に解決法もまた「無い」のである。
そしてその「無」をいじめられるものも、私達も一番怖れている。

だから、私達は刑法がどうとか言う前にまず存在するもの、人間、社会をすべてこの目で見て認識しなくてはいけない。通り過ぎるのではなく、無視するのではなく。
「無痛者」もまた生きていることを、精神薄弱者もまた人間なのだということを当たり前のことだが改めて認識しなくてはいけない。


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無痛分娩出産法の体験談
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