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zoom RSS 『パレード』 by 吉田修一

<<   作成日時 : 2007/12/04 01:39   >>

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これほどリアルな若者を描いた小説を、私は知らない。18歳から28歳までの男3人と女2人の2LDK共同生活者たちがそれぞれ一章ずつ、自分とそこにいる彼らを冷静に見つめ告白していく構成をとっている。年表化何かにまとめてみれば一目でわかってしまうようなほんの1年にも満たないこのアパートでの日々。友達とも恋人とも、ただの同居人とも家族とも言い切れないあいまいな関係で彼らはそれぞれの人生をもって生きている。

何かとご年配には「最近の若いもんは人情味がない」とグチられるが、私は所謂「今時の若いもんの付き合い方」が嫌いではない。かといって彼らほど冷めた関係で同居したいとは思えないが、それでも人は時に無関心がこの上なく温かいと感じることがあるからだ。例えば道の真ん中でスッ転んでも「大丈夫?」なんて駆けつけないで、出来れば知らん顔して通り過ぎて欲しい。ミスをして落ち込んでるときは慰めの言葉なんかより自分の失敗なんぞニュースの一つにもなりはしない世界の大きな無関心に救われる。
『私ははじめて、世界の優しい無関心に、心をひらいた』これはご存知カミュの『異邦人』の最後を飾る言葉だ。この一説に心揺さぶられた人はおおいのではないだろうか。
何度となく琴美23歳がこの同居をチャットの様だと言い表すように、彼らの生活はリアルでありながらバーチャルである。厳しく容赦無い現実に一人の自分がいる。それを見つめる都会慣れし冷静に彼らを見つめる「彼ら」がいる。5人誰もがアパートの中にもう一人の自分を感じ、アパート様の「自分」を演じ、優しい無関心に包まれて安住することが出来る。
未来24歳の言葉を借りれば、このマンションはいつも満室だけど空室。彼らの「アパート様のもう一人」達でそこはいつも満室で、けれど実はそこは、決してお互い傷つけることの無い空室なんだということに安心して・・・彼らはそうしてこの都会で生きていける。

人はTPOごとに色々な自分を作りそこに割り当て、そこが空室であることに安心してしまう。
本書で彼らはそれを如実に証明しているが、著者はそれを賞賛しているのでは決して無い。
ラスト3行が私に訴えた恐ろしさを私は忘れない。
世界の優しい無関心。甘い誘惑。空室と思っていたそこに、本当の自分は大切なものを置き去りにしてはしないだろうか。

5人の若者の奇妙な2LDK共同生活を描いた青春小説。いつの時代も現実は厳しい。でもふさわしい自分を演じればそこは、誰もが入れる天国になる。杉本良介21歳、H大学経済学部3年。大垣内琴美23歳、無職。小窪サトル18歳、「夜のお仕事」に勤務。相馬未来24歳、イラストレーター兼雑貨屋店長。伊原直輝28歳、インディペンデントの映画配給会社勤務。5人の生活がオムニバスで綴られる。
パレード (幻冬舎文庫)
パレード (幻冬舎文庫)

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