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zoom RSS 『水の中の犬』 by 木内一裕

<<   作成日時 : 2007/12/24 02:26   >>

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長い人生諦めが肝心だ。 って言ったのはどこのドイツだ!?
この作品を読んだらそんなことはいえなくなるはず。

主人公の元刑事崩れの「探偵」は知らずトラブルを引き寄せ、いらぬ所まで首を突っ込み、何度叩きのめされ死に損なっても立ち上がる。しかし彼は別に正義感が強いわけでもスリルキチガイなのでもない。
警察を辞するきっかけとなった忌まわしい事件・・・失われた過去の記憶に起因するわけのわからぬ感情が、彼に諦めを許さないのだろう。

ロッキーのように何度でも立ち上がる探偵を「カッコイイ」で終わらせるにはあまりに足りない。最初はこの探偵は自己顕示欲が高いだけのようにも見える。依頼人には自分が役立つのだと、敵には自分の強さを思い知らせなければ気がすまない、そういう器なのだと。
しかしどうやら違っていた。彼は諦めないというより「まだ間に合う」「自分には救えるはずだ」という絶対的な信念・・・いや、むしろそれは逆説的な脅迫観念から来るものだったのだと、読み終えて今思う。

この都会にいくらでも転がっている取るに足らない不条理かつ理不尽な悪。
不倫、レイプ、暴力団、殺し屋、銃・麻薬の密売、暴力、DV・・・殺し・・・
すべてがこの探偵に向かって流れ込んでくる。彼は「探偵」というビジネスに徹せず深入りするので「最も探偵に向かない」人種であり、トラブルメーカーであると指摘されるが、そうだろうか?無論これが小説である以上そういう設定なのだろうが(笑)実は私達が素通りしてばかりいるだけではないか?探偵は後悔という名の脅迫に「まだ間に合うはずだ」とせっつかれ、依頼を堰き止めてしまう。我々凡人がするりとかわす面倒ごとを。
あきらめること、するりとかわすこと、それは安穏のうちに一生が終得ることが出来る一つの方法かもしれないが、同時に多くのものを失ってしまう。そして失くしたまま、大切だったということ、そういう過去が存在したことすらいつしか失くしてしまう。
そして彼のように忘れてしまったその「何か」に、心のどこかで不安を抱えて生きるのだ。

その度に鼻を折られ肋骨も折られ、内蔵をやられ、それでも彼は受け止めたまま立ち上がる。そう、彼は人の人生を我が事のように背負いすぎ、すべて自分に引き寄せ溜め込み放出できずにいた。そして彼は意識下で己の人生と溜め込んできた厄介事を打ち明ける相手を探し続ける。その役を買ったのが、成り行きで行動を共にし探偵を気に入ってしまったヤクザ・矢能だ。

探偵は人生で死ぬ前にやらなければならないことが2つ人間にはあると言った。生きることと死ぬことだと言い放つ矢能は一人で生きて死ぬ覚悟をしたヤクザだからそんなカッコイイだけのコトバもいいきれる。しかし探偵には、一つは依頼をこなすこと、もう一つを考え続けた・・・。
彼のもう一つの「やらなければならないこと」それは己の生き様を伝えること、それを出来る人物にであること、だったのではないか。そして白羽の矢は矢能にたった。

探偵は一連の事件をめぐって失くしたものと対峙する。
探偵がその後どうなったのか、託される者・矢能は何をするのか、それを最後まで見届けて欲しい。  ・・・失くしたものがあることすら忘れ果てている君たちへ。

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
漫画だったらもっとダイレクトに伝わったかも。

・・・木内さんだけに、そう思った作品でした。
十分活字でも面白かった。いや、すごいと思いました。
なにより、退屈しないですね!
木内さんでネットを探してみると、新作
『神様の贈り物』も先月出されたとか。
木内さんの事がまとめてあるサイトも見つけました。
http://www.birthday-energy.co.jp/

『藁の楯』の映画化が成功するかは、藤原竜也さん次第
みたいです。
これもおもしろそう!!
しかし、持続力がないってのは、以外だな〜。
ビーバップハイスクール、結構長かったから。
ホンタス
2012/10/31 21:27

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