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zoom RSS 『名前探しの放課後 by 辻村深月

<<   作成日時 : 2008/03/13 22:08   >>

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「死」の報道には色々な種類がある。
テロや内乱による戦死、事故死、自然災害による死、有名人の様々な死、自然死、殺人事件・・・
そして、イジメや精神的苦痛による、自殺。
TVや新聞、雑誌に多く取り上げられるこれら死を巡る報道は、不謹慎ながらもおそらく最も人の興味を引く話題だ。人間の一番の関心ごとは死である、といつだったか耳にしたが、その通りだろう。
しかしメディアの向こうにある死は、それがリアルに自分と接点がないものである限り私達にある一定以上の感情を起こさせない。かわいそう、悲しい、おぞましい、遺憾だ・・・色々思うところはあるだろうが、それ以上の行動、例えば他人のために裁判を起こすとか、援助金を出すとか、見ず知らずの遺族を慰めにいこうだとか、そうした行動はでしゃばり以外の何物でもなく、またことなかれに済まそうとする。悲惨な映画やドラマを見ているのとたいして差はないのではないかとつくづく思う。
(勿論、援助に行ったりボランティアをしたりという精神の持ち主はいる。あくまで一般的大多数の意見としてうけとってほしい)
そんな世間一般にまだ侵されず、見ず知らずの同級生一人のために彼らは必死に動いた。
この物語は一人の同級生の死を阻止しようとする3ヶ月間の高校1年生たちの物語である。
真剣に人と付き合わずに途中で投げ面倒を避け続けた高1・いつかは、ある日3ヶ月にタイムスリップする。クリスマスイブに生徒が一人自殺して死ぬ、という記憶を携えて。
親友やその友達らと同中学であった坂崎あすなを加え、その自殺を止めようと計画を練る矢先、あすなはイジメで苦しむ高慢ちきな男子生徒・河野基の自殺ノートを発見する。本当に彼が自殺予定者なのか?疑問を残しながらも河野を再イジメから再生させようと接近し、彼ら自身も次第にお互いの関係を深めていく。明らかになるお互いのコンプレックス、過去。 激化するイジメと挫折、その度に再生させようと躍起になるあすなたち。
そうして過ごした3ヶ月間に、本当に再生したのはだれなのか。

まずミステリーとしては最後の最後に大しかけがある。何を言ってもネタバレとなるので何も言うまい(笑) 殺人でも犯罪でもないけれど、これは確かにミステリーであり秀作だ。毎度のことながら少し助長過ぎる気はするが・・・。
それよりも上手い!と思わせるのは高校一年生という半端な年頃の彼らをよく丁寧に描いているということだ。中学生というとまだ子供、高校生というともう大人の顔になってくる。その不安定な境界線にいて、なお地元を離れ方々から見知らぬ顔が集まってくる高校という舞台。そこには地域的なコンプレックスや知られざる過去や理解し得ない感情の齟齬が必ずある。
そうした中で、未来の自殺を止めるという妄想じみた話に懸命になる彼らがいる。これは奇跡に近い。
なのに、私はこの話を祈るような気持ちで読み進めた。 
なぜか?そんなことはやはりどうでもいい。
彼ら同様、理由など照れ隠しに後から適当なものをくっつけておけばよい。
「なぜお前はこんなタイプスリップなんて妄想じみた話を信じるのか?」
いつかに協力する友人達は理由を多々口にするが、結局みな理由は後からついてくる。
こんなかっこいいことって、なかなかない。



高校1年生、その頃私は「死」というものをどんな風に観ていただろう?感じていただう?

先の通り、サリン事件という日本全国を脅かした無差別大量殺人事件、アメリカのテロ爆破事件、そうした大きな事件が前後し多くの人の命が簡単に奪われるのをリアルタイムに経験しながら、どこか他人事に冷めた目で見ていたのを否めない。 
高校生1年生。 「死」というものの重みやその意味するところを情報としては正しく知りえた年代だ。
『死』の意味を表面的に知れば知るほど、そのイメージは反比例して情報や知識としてのコトバに置き換えられ主体的名観念・イメージを失っていく。
子供のように何かわからないもの、怖いこと、知らない世界・・・といった恐怖の対象ではなく。いずれ誰もが通る道であり、魂や転生などという非現実的な観念は薄れ、他人の死と自分の死はまったく別個のものであると自覚する。つまりは一般常識的な死の情報だけが当たり前のように定着し、そこからは主観的感情や恐怖は薄れていき・・・そうして死は軽んじられていく。

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