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zoom RSS 『虹ヶ原 ホログラフ』 by 浅野いにお

<<   作成日時 : 2008/03/20 17:22   >>

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『恐るべき子供達」という作品をご存知だろうか?
あの悪酔いしてるかのような歯切れの悪さ、現実と夢とが交錯した不明瞭な日々、不明確な主張主題、そして完全に完結しているあちらの世界・・・。
そう、決してこちら側には働きかけてこない、あちら(作品)はその「作者の世界観」という世界だけで完結しているのだ。 
本作品をはじめ、浅野いにおの作品の殆どがそうした世界であり、彼ら(登場人物たち)はその世界で必死に生き残ろうとしている。私たちとまったく変わることのない、ごくフツーの「彼ら」が、フツーに、静かに、大人になり狂っていく。そんな姿がそこにあった。

『虹ヶ原ホログラフ』・・・本書は一人の少年の過去〜現在を軸にしてはいるが決してその少年の成長記録や青春物語などでは無い。
彼と彼の学校と、彼を取り巻く小さな社会と世界の住民。
一人の女性の死体が発見される。その夫、子供、子供の同級生、その人たちのその又知人・・・
この虹ヶ原というコミュニティの中で、同じ時代に同じ場所で生き、同じ美しい夕日を見ていたのだという奇跡が、緩く広く繋がっている。
  (人と時間と場所の数だけ「奇跡」は作られ続ける。決して偶然ではなく、しかし奇跡的な確率で今このときこの場所が成立している。)
数年ぶりに戻ってきた虹ヶ原では、彼の過去と現在、幼少期と青年期とが交錯する。
壊したかった・・・自分だけが壊せると信じていた醜い世界は今でもなんなく存在し、自分はそこになんなく安住している。

私の幼少期〜小学生くらいまでのことを思い出す。
自分は実は特別な能力を持っていて、ある朝目覚めたらエスパーになっているかもしれない。
世界を粛清し、滅ぼす力すら持っているかもしれない。
世界を、守ることが出来るのは自分だけかもしれない。
そんな妄想を誰もが少しは夢見たことがある はずだ。夢見る・・・?いや違う。期待、だ。

学校とか友達、親とか先生・・・そんなごく小さなコミュニティで生まれる不平不満、イジメ、不平等、理不尽、絶望が彼らの世界を満たしており、彼らは無意識のうちにもそれらと対峙し生き残るための術をみにつけて大人になっていく。卑屈になり、従順になり、世界から目をそむけて平均的に同化する。

かつて彼がパンドラの箱(と私は呼んでいる)を開けるのを思いとどまらせたのは単に虹ヶ原の夕日が美しかったからではない。彼はその光景を、あまりに美しいその夕日を過去に何度となく見ている。
幸せだった幼少期、かつて幸せだった記憶の象徴として夕日は美しく輝き、彼は世界を壊すのを思い留まる。彼が求め続けたものがそこにまだ残っているから、彼はまた生きていける。

あらゆる意味で素晴らしい作品である。
私はこの才能に賞賛し、嫉妬し、尊敬する。

この世界に生きるすべての人に、読んで欲しい。

虹ヶ原 ホログラフ
虹ヶ原 ホログラフ

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