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zoom RSS 『凍える島』 by 近藤史恵

<<   作成日時 : 2008/03/27 16:58   >>

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趣向に凝った作品、謎解きが難しいミステリー、血沸き肉踊るようなハードボイルド・・・
ふつう、作品にはその著者の得意とする分野だったり手法だったりがウリで出される。
この作品に関して言えば、アガサクリスティーの名著、『そして誰もいなくなった』 を下敷きにしているのは誰の目にも明らかである。
だったらやはり密室殺人、孤島殺人といったお決まりのパターンにのっとって、
殺人ミステリーを王道を行くのかとおもいきや、そうではなかった。

ごく普通の男女4人ずつ計8人の若者達が無人島でバカンスを過ごす。
緩やかな関係をなんなく保っていたはずの8人、不満も不自由も、逆に格別楽しいことがあるわけでもなしに穏やかな休日を、世間から隔絶された僻地でたった一週間すごすだけ・・・のはずだった。
そこに一人、又一人と死人が出る。

犯人探しをする者、推理をする者、脱出を試みる者、泣く者、怒る者、傍観する者・・・
次第にヒートアップするお互いの憎悪、混乱・・・ともなればお決まりのミステリーらしく
人間のむき出しのエゴやらわが身かわいさやら色々な部分が曝け出されていくのだろうが
この作品に関しては、そうではなかった。そういう展開にはならない。

勿論みな恐怖する。犯人は誰だと、凶器は何だと、探すし討論もする。
しかし、どこか冷めている。
それは語り手が 何事にも無感動 であるからだ。 無感情、というべきか?
どこか人並みの感情の起伏をもてない、情緒をもてない主人公あやめ。
「あやめもわかぬ」のあやめ。 物事の道理や分別、人間としての筋を知らぬ人間が語り手なのだ。
だから全体に流れるように進むストーリーだし、どこからどこまでが「正常」なのか、
後半を読むにしたがってそれは徐々にあやふやになっていく。

ゆめうつつの物語、というには写実的過ぎるし
リアルな物語かといえばそれほど現実味があるわけでもない。
ただただ、一人一人が死んでいき、一人が犯人として登場し、物語が終わる。
そこに、日常に簡単に潜めてしまえる程度の、しかし殺人を起こしてしまうほどの狂気が
犯人にうずいていたことを、あとあと知るだけである。

淡白だがその淡白さの中に静かな狂気に充足している彼らがいる。
どこかねっとりとした単語表記(カーテンではなくカアテン、アルコールではなくアルコオル)が
この淡白さに粘りを付けて読むものをはなさない。

ミステリーとしてだけでなく恋愛モノとして、この冷めた不気味さは読むに値する。

凍える島 (創元推理文庫)
凍える島 (創元推理文庫)

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