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zoom RSS 『5年3組リョウタ組』 by 石田衣良

<<   作成日時 : 2008/05/23 09:05   >>

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5年3組。事実5年3組だった私にとって、懐かしい響きだが、不思議と浮かぶのは友達の顔、親姉妹の若かりし頃、教室に校庭に泣いたり笑ったりの他愛もないことばかりで、「先生」という存在がすっぽり抜け落ちている。
薄情と思われるかもしれないが、どうにか顔と名前は思い出せるものの、ぶん殴られた思い出がひとつ(それもどうかと思うが;;)、それのみで楽しかったことも悲しかったことも・・・ほとんど、ない。

子供というのは元来無邪気で後先考えずに行動する生き物だ。
悪気がないからこそ時に残酷なまでなことをしたり、逆に何の打算もなく友達に親に周りに尽くしたりもする。 良くも悪くも次の展開を考えたりせず全力でぶつかってくる。だから険悪な虐めやシカトはあっという間にエスカレートするが、彼ら苛める側にとってさほどたいした意味はなかったりする。
蟻を踏み潰して回ったり、蝶々の羽をむしったり、そうした残酷な悪戯も同級生に一生のこるほどの心の傷を負わせるもさして違いがあるわけじゃない。
逆に言えばいわゆる仲直りもあっという間のこともある。何がきっかけで発動するかわからない正と負の大きなパワーが彼らには溢れていて、私たち大人は自分がそうであったことをいつしか忘れ、そんな彼らの所業を常識を持った上での悪意や善意に基づくものと勘違いしてしまう。
いろいろなスクールものがあるけれど、本作に登場する主人公リョウタはそんな子供と大人の中間に位置する、また熱血教師でもエリート教師でもないというきわめて曖昧な若い新米教師だ。

彼の周りには夏目漱石の『坊ちゃん』の現代版教師が登場するし、利害や名誉やクラスごとの競争が職員室には渦巻いている上、現代的な問題・・・エリート意識や競争社会といった現実を子供に押し付ける家庭の問題までさまざま。
そんな中、なんとなく教師になった中途半端なリョウタがなぜか、子供の信頼を得、彼らに笑い顔を与えていく様はほほえましい。
リョウタは金八先生のように24時間懸命に生徒のために駆けずり回るわけじゃない。教師同士のイジメ問題にも関わりたくない感をにじませてるし、子供たちの問題にも特別なことを自分からやりだす、というほどでもない。友人教師に後押しされてやっと腰をあげてるしまつだ。
だが彼のとる手段はいつも生徒にも誰にも等身大だ。生徒と屋上で1対1で向き合ったり不登校になった教師の寮の前で声をかけ続け一緒に登校したり・・・。

そして彼自身、生徒からいつも何かを教えられているという。
頼りないし、成績も悪いし、さして教育問題に理念があるわけでも理想があるわけでもない極一般的な先生・リョウタは生徒だけでなく、現代の多くの教師にすら等身大だ。
こうした切り口というのは珍しいんではなかろうか。

実はある統計で子供の将来なりたい職業ランキングがあり、それを見ると・・・
80年代までは10位以上にランク入りしていた「先生」という項目が、92年を境に消えている。
つまり90年代から「先生になりたい」という子供が減っているということが伺われる。
http://www.dai-ichi-life.co.jp/news/nr05_06.html
(ただし2003年には復活しているが、どうやらこれは「習い事の先生」も含めた結果のようだ。)

リョウタも子供の頃から先生になりたいなんて思っていたわけじゃない。結果としてなってしまった「先生」だが、彼は生徒の笑顔からやりがいと喜びを見つけていくのだろう。

教師の教育に対する理想・理念が低すぎるとか、質が落ちているとか、そうした批判をよく耳にする今日。そんなことよりももっと評価すべきところがあるはずだ。
教師も人間、生徒も人間、評価する世間も親も社会も人間の集合だ。
だから人間の言葉で体当たりすればきっと声は届く。ありきたりでご都合主義かもしれないけれど、素直にこうしたストーリーがあってもいいんじゃないかと、素直に思う。


5年3組リョウタ組
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