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zoom RSS 『Every Breath』 by 瀬名秀明

<<   作成日時 : 2008/06/09 23:45   >>

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永遠の命、永久の世界、終わりの無い物語・・・私たち有限の世界に生きる人間がどれほど進化しようと文明化しようと唯一どうにもならないのが時間的制限、リミットである。
不老長寿に不老不死・・・永遠というものに憧れ永遠の愛を誓う物語が数多く生まれたが、それらは常にどこか夢物語という現実が付きまとう。どれほどのハッピーエンドでも読者が有限の世界の住人である限り、時空的意味では「彼ら」の永遠の愛は理想と憧れの産物であると知っているからだ。だからこそ人は死をもって有限の内の永遠を証明し、死によって始まる無限の世界に永遠を誓う。有限だからこそ懸命になれるのだという負け犬的主張、はかないからこそ美しいという感傷的なあはれに逃げ込む情緒、そんな風に言ってしまっては身も蓋も無いが、設定をリアルにすればするほど、最後はどうにもならない時間的拘束「死」が立ちはだかり、それに対抗する何らかの結論が必要となる。
御伽噺の世界なら永遠の愛も語れようが、私はこの世に永遠の愛なんぞは存在しないと思っている。とはいえ愛を否定しているのではない、愛し合ったまま、愛を全うしたまま終わる恋人たちの人生もあれば宗教的な意味、思想的な意味での永遠の愛の恩恵、などもあるだろう。しかしそれはあくまで受け取る側もしくは発信側があればこそだ。どちらかが存在するならまだしも、両方存在しないとなればそれはもう「彼らの愛」も時間的に消滅するのだから。
永遠の愛をテーマにした物語には、あくまでフィクションの設定世界で永遠を語るか、こちらの有限の世界で愛を最後までまっとうするか、に大別されると私は思う。しかし本書は・・・そうした歴代の「永遠の愛の物語」群から離れ、かなり違った切り口を見せている。

読み進むにつれて二つの世界と過去と未来が複雑にかけ合わさり、次第に境界があやふやになっていく・・・。
二つの世界が平行しつつ交錯し、まるでメビウスの輪のようにいつの間にか物語の終点から最初のページへとループする・・・この果て無き物語の輪に読者は混乱するだろう。いったい誰がオリジナルの「私」なのか、どちらが「こちら側」なのか?設定そのものが読者を混乱させるが、当の本人たちは決して混乱はしない。
なぜなら、そのあやふやな2世界の間で、もうひとつの未来に生きるもうひとつの私をあくまでも別人格として切り離しているからだ。そして最終章、ブレスと隔絶し数十年のときを経、己の死をもって初めてあちら(ブレス)の世界に有限の「私」が流れ込む・・・。
無限の世界と有限の世界で恋をして、あえて有限の世界で「超えて」行こうとした杏子。永遠のブレスの世界で世界の果てを、限界を超えていこうとした洋平。 何一つ結論は出ていない物語かもしれないが、私は確かにひとつの感動を得た。

ブレスに洋平がもたらした最大のそれ、キラキラした「箒星」という現象。有限の産物である「呼吸」がない世界、ブレスで人はそのキラキラに感動し愛する人と共感する。 なぜ洋平が無限の世界ブレスにキラキラをもたらしたのかがわかる。



<あらすじ>
「私」が生きる有限のこちら側と、私の分身である「彼女」が永遠に生きるもうひとつのあちら側=BLEATH(ブレス)。 
「共鳴する」度にこちらの「私」が「彼女」に流れ込み、同期化するブレスというバーチャル世界。
ひとつの恋が、永遠と有限との二つの世界で互いに影響しあいながら二つの別の未来を迎える。ストーリーは度々交錯し境界があやふやになるが杏子は愛する洋平のもとに走り行くことが出来た「彼女」と決別し、ブレスを離れた。
それでも二つの世界は人の数だけ存在し、時が流れ子供、孫の世代になっても平行して存在し続ける。
杏子の娘、孫、と3代にわたって捜し求めたブレスのクリエーターにして杏子の愛する人「洋平」。
行方も正体も謎のままブレス世界の奥底へ・・・いや、彼方へと飛び越えていってしまった彼は数十年を経て、ようやく彼女らの前に、彼女らのブレスの前に現れ始める。
死を目の前にした杏子はそれでも共鳴しない・・・彼女が見つめる先にはなにがあるのか?
物語はループする。

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