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zoom RSS 『遊郭のはなし』 by長島槇子

<<   作成日時 : 2008/07/24 08:39   >>

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最近の花魁ブームには目を見張るものがある。
メディア的には映画『さくらん』のヒットで大ブレークしたかに見えるこの花魁ブームだが、活字界ではもう少し前からひしひしとこの波は高くなってきていたかと思う。
直木賞受賞作である松井今朝子『吉原手引草』はいうまでもないが、宮木あや子がデビュー作にしてなかなかのヒットを飛ばした『花宵道中』も見逃せない。

さて 本作『遊郭のはなし』はこうしたブームにのっとった「女のはなし」かと思いきや、どうもそれだけでは終わらない。
インタビュー方式のように吉原の住民の「語り」で延々と続いていく怪談話。
最終章でわかるかと思うが、どうやらこの取材人は読売人、つまりはブン屋、新聞記者だ。
ふと踏み入れた吉原、一度足をとられたら抜け出せない泥沼のように、次第に聞き手は吉原の奥へ奥へと引きずりこまれる。
彼の掴んだ怪談話の一端『赤い櫛』、決して拾ってはいけない「赤い櫛」に魅入られ手に取ったら最後、呪いに捕らわれ死に至る。吉原から呪いから逃げてきた女の話をたどり始めた聞き手は吉原遊郭「百燈楼」で語られる七不思議を取材し始め、吉原の住人たちは夢とも現とも分かつことの出来ない怪談話を語りだす。

ホラーというよりは、やはり「怪談話」なのだろう。彼らはみなその出来事、現象そのものに恐れ戦いているというよりは因果、因縁、ことの真相にこそ恐れを抱いている。いや、恐れと言うよりはむしろ哀れみかもしれない。
芸者、太鼓持、遣手婆が語りだす怪談の主役は・・・櫛に鏡に猫に黒髪に・・・と廓に花魁とともに時を過ごしたモノたちである。なるほど、怪談となるほどの因縁が染み付いているのも肯ける。
怪談は次第にディープな話となり聞き手もやがて廓の奥へと入り込み、いつしかその合わせ鏡のような「遊郭のはなし」から抜け出せなくなっている。そう、聞き手も、読者も、我々も。

花魁・・・彼女らはみな抜け出せない。なぜなら花魁がそのまま吉原遊郭そのものだから。
赤い櫛。決して拾ってはいけないというその言い習わしもまた、吉原という世界そのものである。
一度手に取ったら逃れられない、一度踏み入れたら逃げ出せないその世界。
今日の花魁ブームがこれほど長く持続しているのも私たちが彼女らに捕らわれているのかもしれない。

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『遊郭(さと)のはなし』 長島槇子
第2回(2008年)「幽」怪談文学賞長編部門特別賞受賞作「遊郭(さと)の怪談(はなし)」を改題吉原の大見世「百燈楼」では赤い櫛を手に取ると命を落とすという。その真偽を確かめるために、あるお店の若旦那が出かけそこで働く人ひとりひとりの話を聞くというロンド... ...続きを見る
猛読醉書
2008/08/11 13:12

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