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zoom RSS 『ブラック・ジャック・キッド』 by 久保寺 健彦

<<   作成日時 : 2008/09/24 15:08   >>

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一人の特異な少年の、「普通」との葛藤と自分自身の成長を描いた物語・・・とかくとあまりにも端的過ぎるかもしれない。 が、『みなさん、さようなら』に引き続いてこの手の話が著者・久保寺氏の得意とするところなのだろう。
少年の頃のまっすぐで意固地で何かに異常なこだわりを見せる純粋さを忘れている人間は、多い。私も、貴方も、彼も彼女も。
この世界で人であるということは社会的共同体に属し常識と一定の規制とルールの中で、協調性を持って生きなければならない、と言うことである。
大人になると同時に、人と出会いさまざまな経験をつみ、要領よく当たり障りの無い付き合いで溶け込んでいかなくてはならない。
だから、私たち大人は「子供」に憧れる。子供の自由に遊ぶ世界へ憧れ、かつて自分がいたはずの自由な世界に思いをはせ、こうしてまっすぐな力強い彼らの物語を描かずにはいられない。
そしてそうした物語の多くは、彼らの成長を描く。彼らがさまざまな人とモノに出会い、経験し、そして様々な別れを経て失っていく・・・私たちと同じ「大人」になっていく姿その様をどこか嘆息まじりに描くのだ。
本作もご多分に漏れず一人の少年の成長を描いている。

その少年はクールで圧倒的な強さを持つ孤独なヒーロー「ブラックジャック」の熱狂的なファンである。BJになりたくて黒尽くめの服を纏い、黒い長コートを黒マントの代用し、BJの必殺技?メス投げの代わりにドライバー投げを練習し、動物の死体を解剖する・・・
彼ほどの熱狂は無いにしても、子供の頃に「ヒーロー」になりたくて憧れて真似をしていたのを思い出した。きっとそんな時間が誰にでもきっとあったはずだ。(ちなみに、私は風の谷のナウシカになりたくてキツネリスの代わりにネコに指をかませたりしていたものだ(笑))
ブラックジャックを何度も読み返しどのシーンもセリフも余すと来なく暗記するほどだが、もちろん小学生である彼にBJの深い苦しみも悲しみも真の強さも弱さも・・・その重要なキーである「ピノコ」という存在の大きさも、わかるわけがない。
少年の母が失踪する前日、二人は引越ししてきた町をさかのぼるように旅をする。思い出は食い違い、見ていたものも覚えていたことも同じはずのものが母と少年とではあまりにも違い困惑し言葉に詰まるたび、母はBJの話を振って明るい少年の笑顔を取り戻す。
だましだましの小旅行のなか、最大の彼らの違いはBJとピノコへの思い入れの違いにある。
ピノコはあくまでお飾りの脇役、とバカにする少年に対し、ピノコこそBJの大切な強さの根源なのだと知る母。
子供ゆえの純粋さと、純粋ゆえの未熟さがあまりにリアルで身に覚えがあるからむずがゆい。
どんなに姿を真似ようと、医者の真似事をしてみようと、私たち大人からすれば小賢しい、シャラクサイ、ガキっぽいママゴト遊びだ。
けれど、この惹き付ける物語はなんだろう?
途中何度もこの無謀で浅はかな少年の挙手挙動に腹を立てイライラしたにも拘らず、私は最後まで見守ってしまった。
それはきっと、彼が様々な友達に出会い、空想のヒーローだけではどうにもならない試練を超え、ヒーローの中に真の強さを、この世界で強く生きていかなくてはならないその現実を受け止めるだけの成長を描いており、それが私自身の歩んできた道であるからに違いない。いや、もしかしたらまだ歩み中なのかもしれないが(笑)

前作に引き続き描かれるのは一人の不器用なほど純粋まっすぐな少年の成長だ。
彼はやがて出会いと敬虔と別れを重ね、自分の「帰る場所」を見つけるのだ。ブラックジャックとしてではなく、空想の世界でも理想の中にでもなく、自分を生んだこの世界、愛すべき人の生きるこの世こそがMyHOMEなのだと。

きついことを言わせていただけば、この手のテーマでマンネリ化してしまうんではないか?とも思う。
だがそれでも一気に読んでしまった。きっとまだまだ私もお子様なのだ。



ブラック・ジャック・キッド
新潮社
久保寺 健彦

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