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zoom RSS 『婚礼、葬礼、その他』 by 津村 記久子

<<   作成日時 : 2008/10/10 12:19   >>

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実は私は最初、冠婚葬祭に関する民族学モノの読み物かな、と思って手に取ったのだ。ところが読んでびっくり、学術的な
ことは一切なく、書いてあるのは日常に程近い、誰もが経験するちょっとした非日常。大きく期待を裏切ってくれた。
しかし読んで後、後悔はしていない。 とかく技巧やトリック、文学的な善し悪しを評価の基準としてしまいがちな今日この頃だが、本作はそういったきらいが一切無い。

恋人もパトロンも抜きん出た才能も地位もお金もない、20人強の昔気質な会社につとめるごくごくフツーのOLが主人公。
旅行を申し込んだその日に友達の結婚式がブッキングし、よせばいいのに幹事とスピーチまで引き受け、そんなときに限って会社の上司の父親の葬式という、ソレこそ面識すらない老人の葬儀に駆り立てられる。
旅行<婚礼<葬礼という図式がたちまち頭の中に立ちあがり、金欠と怒りと空腹に涙しながら結婚式場を後にし、急な準備と渋滞とに格闘してやっとのことで葬儀へとたどりつく。
ほうほうの体でたどりついた葬礼では財産だの愛人だのとくだらない人間関係がとぐろを巻き、怒りも空腹も頂点に達する。

何で私が?!見ず知らずの老人のために、こんな理不尽な立ち回りを?!と思うのはまったく同感、当然だ。
急死した老人の葬儀に不謹慎ながらも「あと一日くらいなんとかならなかったのか?」と憤る素直な感情にも共感できる。
そう、彼女の感じていること、思っていることがあまりに普通でありきたりで、当たり前の感情であるがゆえ素直に私の心も共感するのだ。
たとえば重要な用事を控え、急いでいるときに限って起こる「人身事故」。飛び込むほうはのっぴきならない事情があるのだろうけれど、不謹慎だけれども、「あと一本くらい後の電車を待てなかったんかいっ!?」と吐き捨ててしまう。
旅行をキャンセルしてまで繰り出した友人の結婚式を中断し、理不尽この上ない乾燥した無意味な葬式に駆り出され、空腹は頂点に達し、遣り残したスピーチやら後始末にまで形態という便利な器具によって振り回され・・・そんな中、今まで忘れていた十分に見とれなかった祖父への悔やみすらこみ上げてきて涙する。

そんなこんなでどうにか終えた葬礼も終わってしまえば後に残るのは達成感。やり遂げたという安心と、それ以外のことに費やすことが出来る今の時間の充足、婚礼でも葬礼でもない、「その他」のいとおしい時間が待っている。




婚礼、葬礼、その他
文藝春秋
津村 記久子

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2013/07/06 20:24

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