■空蝉草紙■

アクセスカウンタ

zoom RSS 『群青』 by 宮木あや子

<<   作成日時 : 2008/12/27 11:38   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 3 / コメント 2

画像

妖艶かつ哀切ない愛憎溢れた物語を女の視点から描き続けてきた宮木あや子氏だが、本作は女と男の視点が半々といったところだろうか。また限られた時間の中で収めなければならない映画の脚本が原点になっているせいかもしれない、目まぐるしくupテンポに話は進み、感情の動きを納得させるだけの余裕がなく、いつもの情緒豊かな宮木氏らしい作品とはいえない。

とはいえ、本土とは隔絶した沖縄の離島を舞台に展開するこの恋物語は、その風土の描写とともに美しい。
蒼い空、吹き抜ける海風、紺碧の海、そして群青の深海・・・底に輝く、手が届きそうで届かない幻のような紅珊瑚。話の展開としてはありがちないかにもメロドラマに見られそうな作品であることは否めないが、この美しさは映画として映像化せずとも思い起こすことが出来るだろう。

その美しい島と海は浮世の煩わしさから逃げてきたものにとっては楽園となり、逆により広い自由を夢見るものには狭い牢獄ともなる。その狭い地に生きる者にとって世界は島を出る者、出たくても出られずに留められている者、自ら留まる者、この三者が全てで、その三者が共に在り続けることは、おそらく無い。
本作のヒロイン・涼子は外の世界を望みながらも愛する一也のため島に残る。涼子を愛しながらも諦め外へと進学した大介は、一也が海で死んだ後も帰らず、2年ぶりに目にした涼子は変わり果てた姿だった。
ここから懸命な、しかし自虐的償いにも似た大介の献身が始まるのだが、やはり残念なのはそのラストがあまりに駆け足で、ドラマチックに走りすぎており当の涼子の感情が無視されている観がある、ということである。
男女の比を論議するつもりも差別するつもりも無いが、男性にはご都合主義のわかりやすいメロドラマにしか移らないかもしれない。また流されやすい人にはその感情的かつ感動的なラストに涙するかもしれない。

しかし、亡き人(一也と涼子の母)の霊が語りかける、涼子が亡き母の霊を感じ取り我を取り戻す、など少々ファンタジックに幻想的に、悪く言えばご都合主義に走りすぎではなかろうか。
その分生きている人間の感情がおざなりにされ、全体の流れに飲み込まれてしまっている。
映画の脚本ということもあるので、映像化するには秀作といえるだろう。
小説として書き下ろす際にもう少し、宮木らしいふくらみを持たせても良かったのではないかと、少し残念である。

沖縄の離島で生まれた凉子は、幼なじみの漁師・一也と愛し合うようになる。だがある日、一也が海で帰らぬ人に。凉子は心を病み、島を訪れる男たちに夜な夜な抱かれるようになるが−。女性作家が官能的に描く絶望と再生の物語。 (bk1あらすじより)

「群青」日本公開は09年。同年2月のベルリン国際映画祭への出品を視野にも入れており、同社特有の国際的配給網を生かした世界配給を目指す。


群青 (shogakukan paperbacks)
小学館
宮木 あや子

ユーザレビュー:
やはり、宮木さんの世 ...
amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ウェブリブログ


テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(3件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
群青
 不治の病に冒され南風原島にやってきた有名ピアニスト由起子と結ばれた漁師龍二が残された娘涼子を育て、涼子は同級生の大介、一也とともに成長し一也と結ばれるが一也は龍二を超えるために素潜りで赤珊瑚を採ろうとして死に、涼子は心を病んで工事の出稼ぎに来た本土の男たちと手当たり次第に肉体関係を持ち、口を出せない龍二は老け込み、そこへ戻ってきた大介は涼子の心を開かせようと苦心するが・・・というストーリーの小説。  最初の由起子と龍二の段階では爽やかなラブストーリーと読めますが、涼子の初潮当たりから暗さを感じ... ...続きを見る
伊東良徳の超乱読読書日記
2009/01/26 00:01
群青 宮木あや子
カバーデザインは田島照久。「きらら」連載に加筆改稿。連作短編形式。 余命短いピアニストの由起子は、沖縄の離島に滞在。漁師の龍二と恋に... ...続きを見る
粋な提案
2009/01/29 20:44
『群青』/宮木あや子 ○
映画『群青』の脚本を原案に、宮木あや子さんが書き下ろした、小説なんだそうです。 だからかなぁ・・・。今まで読んできた「宮木さん色」が薄い気がするのは・・・。 沖縄の離島を舞台に、激しく愛を花開かせ散って逝った命、喪った愛に正気を奪われ、そして取りもどされた世界。青く深い色合いの海は、全てを見ていたのだろうか。 ...続きを見る
蒼のほとりで書に溺れ。
2009/01/30 22:45

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
空蝉さん、こんばんは(^^)。
私も、後半部分が急ぎ足なのが残念でした。
「情念」と評していいほどの愛情を宮木さんのオリジナルな筆致で描いたら、もう少し違った印象が持てたのではないかな〜と思いました。
水無月・R
2009/01/30 22:49
こんにちは、トラバありがとうございました(^^♪ いつもぐわ〜っとくる熱があっての宮木さんだと思っていたので、もう少しじっとり書いてもいいのでは?と残念に思います。ほんと。
きっと映画→シナリオ→小説だと書き方が違ってくるんでしょうね。枚数が足らないよ!って感じですもん(笑)
空蝉
2009/01/31 09:27

コメントする help

ニックネーム
本 文
『群青』 by 宮木あや子 ■空蝉草紙■/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる