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zoom RSS 『さくら』 by 西加奈子

<<   作成日時 : 2009/01/08 08:57   >>

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文章は解りやすくて読みやすい。会話しているように単純でひとなつっこいほどなじんでしまうちっとも気取らない文体だ。
少なくて単純な語彙、何気ない普通の家庭が大半を占める一冊の本。だけどこの中には沢山の心、喜びも悲しみも、切なさも苦しみも全てぎゅうぎゅうに詰まっている。そう、ぎゅうぎゅうに。
何事にも全力で真っ直ぐ体当たりして生きてきた彼ら兄妹と、温かく見守る父母と、いつだってその一家の幸せ象徴するように大安売りして振りまいていた一匹の犬・さくらの、(少し恥ずかしいけれど)愛にあふれてどうしょうもない物語だ。

かっこよくてモテモテで力図良くて優しい男前の兄貴・一。
兄に似てものすごい美人だけれど喧嘩上等無骨モノ、何事にも体当たりな天然醸し出す不思議な妹・ミキ。
その間に挟まれてちょうどいい具合に収まっている、この物語の語り手・次男・薫。
兄弟は他人の始まり、故郷は遠くにありて想う物、なんて言葉はきっと彼らには異世界の言葉だ。
物語はずっと行方不明になっていた父からの一通の手紙に突き動かされるようにして、弟が実家に帰るところから始まる。
兄が死に、妹は壊れ、母は過食、父は行方不明になり自分は家を出て・・・皆が皆家族から逃げているこの現状から彼はようやく帰郷し、幼い日々の回想からそうなるまでを私たちは読むことになる。

例えば兄弟が最高の宝物となる妹をこの世に迎えるため「誰のものでもない花」を探しに無謀な冒険を試みる(そして迷子になって帰る)。例えば両親に夜何をしていたのか(もちろんSEXだったわけだけど)ズバリと聞いてしまう、そして母がやんわりと素敵な言葉を返してくれる・・・。例えば初恋、サクラという新しい家族、幸せの象徴、兄弟の恋人の出現、喧嘩・・・
ごくごく普通の平凡な、けれど暖かくて柔らかい幸せの詰まった日々が彼らの世界にはあふれていた。
それでも少しずつ彼らは大人になる。
     「大人になるというのは、一人で眠ることじゃなくて、眠れない夜を過ごすことなんだ。」
寝るところも部屋も独立して、妹でも兄でもない、一人の人間になっていく。不安と喜びと期待と戸惑いと、そりゃあもう、ごっちゃ混ぜの感情を誰もがみな経験して来たに違いない。

家という柔らかな砦に守られていればいつだって笑っていられるのに、どうして私たちは外の世界に意識を飛ばすのだろう?
優しい母、頼もしい父、かっこいい兄、かわいくてしょうがない妹、幸せな日々・・・それすらも省みず。
それはもしかしたら、喜びや笑い、愛なんていう恥ずかしいくらいの幸せがその小さな世界にはとめどなくわいてきて、
いつしかそれは収まりきれずに溢れ出してしまうからかもしれない。
溢れたそれは時には心の堰を切って流れ出し、誰かを傷つける。その小さな幸せの世界が全て外に流れでしまう。
跡形もなく、その大切な家族という名の世界はほんの少しのきっかけでその溢れた愛情で流されてしまうかもしれないから。
家族って言うのは本当に不思議な存在だ。
繰り返される「全力で」という言葉。 彼らのように全身全霊全力で家族を愛している、なんてなかなか言えないけれど、それでも無償で、それこそ理由なんてひとつもなく当たり前に愛してやまない家族という存在。

異性愛、友愛、博愛、家族愛、兄妹愛・・・そしてそれ以上の愛。そうした愛が本書には山盛りに登場する。
みんな、ありったけの感情をもって相手にぶつけている・・・ように見える。
でも、もしかしたらそれは違うんじゃないか? と最後の最後に弟は私たちに投げかける。
大失恋した上、事故によって下半身不随になった兄は、「神様が直球を投げてくれなく」なって自殺してしまう。
いつだって神様=運命の投げ込んでくるのは直球でそれを打ち返してきたホームラン王の兄。
けれど、思う。
私たちはバッターなんかじゃない。ピッチャーだし、キャッチャーだ。
投げるボールは愛情、誰かを愛する心、好きだという感情、けれど投げてくるのも投げかける相手も神様でも運命でもない。
それは言葉にするのは恥ずかしいくらいの「愛」という存在そのもので、きっとその対象に向かって投げるのではなく愛っていうしようもないくらい絶対のモノに向かって投げている。


そんな微笑ましい幼児期に回想は始まって、恋や


さくら (小学館文庫 に 17-2)
小学館
西 加奈子

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