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zoom RSS 『草祭』 by 恒川光太郎

<<   作成日時 : 2009/01/22 13:07   >>

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デヴュー作『夜市』以来その独特な雰囲気で異界をかいま見せる危い現実を描き続け、「恒川ワールド」とされる恒川光太郎氏の新作である。
『雷の〜』で少し肩透かしを食った気がしたものだが、今回の『草祭』は今までの2作以上に「怖い」要素が加わって、デビュー当時の恒川氏らしい(と私は思っている)世界が広がっている。

幼き日、友人とともに偶然迷い込んだ不浄の場所「けものはら」。中学生となった今、友人は再び「けものはら」と母の因縁に囚われる。・・・「けものはら」

屋根を徘徊する町の守り神「屋根猩猩」と名乗る少年に偶然であったことで、少女の平凡かつ事なかれの日々が振り回される。・・・「屋根猩猩」

山の申し子、天狗のような少年テンを広い家族同様育てた一家に、領主の山賊行為による悲劇が襲う。死と変化(へんげ)の妙薬クサナギを撒き復習を果たしたテンも、村の人々も皆その地をさり、やがて人の気が消えた美しい山奥、美奥という異界が生まれる。 ・・・「くさのゆめがたり」

幼い娘が迷い込んだその家で行われる苦解きのゲーム『天化』。己の中の苦を見つけ再確認した彼女が選ぶのは無とともに得られる安楽の世界か、苦しみをともに再生する現世か・・・「天化の宿」

不倫に殺人事件にと現世に疲れ別世界・新天地を望んだ女は、美奥にも繋がる世界を創造する男・長船に偶然命を助けられる。創造された「春の世界」は彼の死によって荒野と化し、女の心を映し出すように化け物が徘徊する。 ・・・朝の朧町

舞台は「この辺りには昔から何かある。何か居る」と噂されたそのある所=美奥という地。時代も人も変わるがその美奥で起こるその「何か」はいつなんどきでも変わらない。ただただ普遍に全てがうつろで全てが充足している異界である。
恒川ワールドと称される異界は死の世界・冥界であり、不浄の彼岸であり、同時に人が憧れ人を惹き付けてやまない桃源郷である。こちらではない彼岸の世界へ渡ることは此岸(社会)に生きる人としての「死」を意味するが、それはあらゆるしがらみやこの世で生きる苦しみから逃れることが出来る唯一絶対の手段でもある。
「死」はあらゆるものを凌駕するのだ。苦しみも悲しみも、喜びも幸せも全て同時に我々から奪い取る。

どの章も美奥という異界サイドから人が描かれることはけっしてない。すべて私たちの住むこの現実、喜怒哀楽に満ち生き辛いこの世界に飽いた私たちの「誰か」が、偶然、その異界を見つけ引き込まれてしまう。
この世界、喜怒哀楽から切り離されたその地をユートピアとするも地獄とするも、全てその「誰か」次第である。
逝くも戻るも生きるも死ぬも全て私たち次第であり、もしかしたらほんの些細なきっかけで出会ってしまう、そこら辺に転がっているかもしれない転機(いわゆる運命の分かれ道)を指すのかもしれない。

恒川氏の描くあちらの世界。異界。
それはもしかしたら野生の本能そのものに正直に生きることが出来る地、死とは真逆の単純でより純粋な生が充満している世界なのかもしれない。どちらを選ぶかは、貴方次第だ。




草祭
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恒川 光太郎

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『草祭』/恒川光太郎 ◎
恒川光太郎さんの描く異界。 それは、怖ろしくも美しい、そしてどこにでも存在していそうな、現実世界と微妙にズレた、怪しい世界。 恒川さんには、彼岸と此岸の境目が見えているに違いない、と思う。その常人には感知できない境界線を知っているからこそ、あの世界を表現できるのだろう。 本作『草祭』も、その恒川さんの本領発揮、引き寄せる異界と溶けゆく現実が、儚くも幽玄な光景を描きだしてゆきます。 いざ、真の和製ホラーの世界へ・・・。 ...続きを見る
蒼のほとりで書に溺れ。
2009/02/03 22:49

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
空蝉さん、こんばんは(^^)。
恒川さんの「異界」は、本当にすごいですよね。
怖ろしいまでに美しく、そしてすぐそこにある。しかし、現実世界とは全く違った価値観や法則が存在する。
空蝉さんのおっしゃるように、生死が反転する物語なのかも知れませんね。
今回も、堪能いたしました(^^)!
水無月・R
2009/02/03 22:57
おはようございます。トラバとコメントありがとうございました♪
ほんと、恒川さんの作品って素敵・・・でもデビュー作『夜市』に勝るものはないなぁと思ってしまうのは私だけでしょうか。う〜ん。
空蝉
2009/02/04 08:54

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