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zoom RSS 『カフェ・コッペリア』 by 菅浩江

<<   作成日時 : 2009/04/06 12:40   >>

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人間とAI、いわゆる人口頭脳を搭載したロボットとの関係を、情感豊かに優しく、悲しく、切なく綴った物語を数多く生み出してきたSF作家、菅浩江による7つの短編集。

ロボットと人間との関係を描いた物語はSFには定番であり、世界中に溢れている。
中でも日本においてはロボット精神学という独自の分野が突出して好まれる傾向がある。おそらくは手塚治の「鉄腕アトム」に端を発したひとつの仮定・・・ロボットにも感情はある。ロボットにも心がある。ロボットも・・・恋をする。という仮定がすべての源泉となっているのだろう。

人工頭脳が発達し、より人間らしく、より人の心を解する、そして人の助けを借りずに己で考え己で反応し試行錯誤して行動するロボットを、科学者たちは目指してきた。
たまに目にする、人間そっくりの姿かたちを持った介護ロボット等をニュースで目にするたびに良くぞここまでという歓心と、ヒヤリとした恐ろしさと、この進化は本当に必要なのだろうか?という疑問が頭の中に交錯する。

そう。進化。
科学者たちがチャレンジしてやまないのは、自ら進化する人工頭脳、無から生まれる人間と寸分違わぬ非生命を作れるかどうかということだ。そして多くの小説で描かれる架空のAIたちに注目されるのは、彼らが人間の手の及ばぬところで考え、思う精神、つまりは心を持っているのかどうか?ということにつきる。
けれど、少女漫画やロマンチックなハッピーエンドを迎える物語をのぞいて、その多くは悲劇に終わる。
なぜか?? 人間の手の及ばぬところまで進化し続ける彼らAIたちはいつしか人間すらも凌駕し、人間から離れていくからだ。  皮肉なものである。  私たちは、目標に達した瞬間彼らをその理想像とともに失うのだから。

夢は追いかけている間のみ、夢見ていられる。 夢はかなった瞬間に覚め、理想は現実となった瞬間、理想ではなくなる。

悲観的、ペシミズムといわれるかもしれないが、私はそうは思わない。人はそうして進化をし続けてきたのだ。
夢はかない、理想は現実となり、崩れ去った理想像を踏み台に更なる夢を見て、人は進化をしてきた。
彼らAIの進化を凌駕し続けるために。


さて、これだけダラダラと書いてしまったが、本書はそれほど悲劇的な結末も恐ろしい未来も描いてはいない。
ほんの少し未来にはありえそうな、少なくとも今現在存在している科学の延長線上を描いた実現可能な近未来が舞台だ。

例えばエクステ。例えば画面越しに恋愛相談や恋人を演じてもらえるカフェ。

今回はどれもこれもあくまで人間が主体だ。彼・彼女が人間であるかどうか、という点がミステリーになりがちなこの手の小説だけれども、今回はそういう謎はあまり重要視されていない。
AIやロボットが話の多くを占めているわけでもない。むしろ少し進化した科学技術(そのなかにAIもふくまれるのだけれど)が日常化した近未来で、人間がそれらを少しばかり手に余している、そんな少しあやういところを描いているのだ。

今現在でも携帯やネットやパソコン、家電や車など・・・私たちは一部の先走り技術に追いつけないでいることが多い。
これも一つの「格差」というのかもしれない。
新技術が登場し、便利で素晴らしい科学的、工業的製品が簡単に手に入るようになる。
説明書もろくに読まずに手をつけた普通の「私」が、いつの間にかそれに夢中になり引っ掻き回され、我を失ってしまったりもする。

画面越しに恋人役や慰め役、恋愛相談役をしてもらう(メイド喫茶の進化系?)サービスを提供するカフェ「コッペリア」はその名の通り人形、ここではAIが半分、生身の人間が半分で給仕する。
人間とAIとが50%の確立で提供する恋愛相談&擬似恋愛サービス。友人が見つけた『彼女』はAIなのか、人間なのか。
普通ここで人間であることを願ったり、もしくはAIに恋してしまうことへの葛藤が描かれていくものだが、本書は少し違う。
出合った友人が願うのは「彼女」が人間であるとか、AIであるとか、その辺りのこだわりよりも「彼女」に会いたいという単純なこと。 それにつられて彼女を探す主人公が願うのは、彼女が人間であって欲しいという希望ではなく、より進化した新しいAI
だったのではないかという願いである。
人間はAIのように、AIは人間のように・・・、区別の付かないよう給仕するスクリーン裏の彼女ら。
人間であって欲しい、ではなくより進化した未知なるAIであって欲しいと願う私たち。
切ない恋物語でもなく、悲しいアンハッピーエンドでもない。手元を離れ始めた新しい存在を願い始めるほんの少し先の未来はもしかしたらもうすぐ先に来ているのかもしれない。
そのとき私は「彼女」らに何を思うんだろうか?






カフェ・コッペリア
早川書房
菅 浩江

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忍者大好きいななさむ書房
2009/06/26 14:31

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
空蝉さん、こんばんは(^^)。
空蝉さんの記事を読んで、あの儚く美しい世界を再体験しました。
機械は「ひと」に近づく。いつか「ひと」を超えるのかも知れない。
でも「ひと」がいてこそ、「彼女たち」達の存在は美しい。そう思えました。
水無月・R
2009/04/06 22:01
こんにちは〜もう、最近は目まぐるしい忙しさでブログが滞ること滞ること
水無月・Rさんのようにもっとちゃんと書かなくては!と自分の不甲斐なさが身に染みます。
私自身、SFはあまり読まないのですが菅さんは本当に好きです。是非是非『雨の檻』と『Iam』をオススメします♪そこにはやはり美しい彼女たちがいますので。
空蝉
2009/04/07 12:16

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