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zoom RSS 映画『60歳のラブレター』 

<<   作成日時 : 2009/06/09 12:56   >>

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映画は唐突に首都高を走るトラック運転手の目線で始まる。ありの巣のようにゴチャゴチャと入り乱れ、田舎者・・・いや、下手したら都会人にだってナビなしでは不安になるほどややこしい首都高。そしてソレを高層ビルの上階から見下ろし感慨深くため息をつく男60歳・橘がこの映画の主人公である。
男の言うとおり、人生は高速道路のようなもの。 一度間違ったらもう手遅れで引き返すことは決して出来ない。あっという間に時間と周りの風景だけが目まぐるしく変わり、過ぎ去っていく・・・。

土木作業?のバイトから始まった彼の人生は社長の娘といわゆる政略結婚をすることで一変する。結婚を契機にトントン病死に出世街道、がむしゃらに働き、あっという間に役職まで上り詰めたたたき上がりの仕事人間だ。
家庭を顧みぬ亭主関白であらゆることを自分本位身勝手に推し進めてきた彼。60歳を期に勤め上げた会社を後にし、妻とは離婚の話を進め、不倫相手の女の会社に転職、まだまだこれからと意気揚々といったところだ。
妻は結婚以来一度も逆らうことなく傅いて来た箱入り娘で、一人身となった今、退屈を紛らわそうと家政婦のパートをはじめるのだが、その家は超売れっ子の人気作家(翻訳家)で自分とは正反対の自由奔放、華やかな女。彼女のエスコートで見る見るうちに華やかに変身をする妻には人気ミステリ作家からのラブコールも入るほどに。

自分の新しい一面を発見し意外にも好スタートを切った妻だが、その一方、夫は新しい会社の若手にコンペを取られ、己の古さ、価値の無さにいまさらながら気がつき絶望する。
自分の時代!いつまでもまだやり手と信じていた人間が、年老いていつの間にか若者に追い抜かれ既に時代から取り残されている遺物であるということに気がつくというのはよくある話で、身近のものにも、例えば私自身の父や祖父にも当てはまる。

ドコで道を間違ったのか?
実はこの物語を構成する3組の60歳、男女に共通しているのがこの思いだ。

結婚のスタートから道を間違え仮面夫婦を数十年続けた挙句離婚し、ようやく己の無力さをしるもの。
「可愛いお嫁さんになる夢」を退け仕事に追われるままに恋愛に怯えてしまったキャリアウーマン翻訳家。
ごく普通の出会いと恋愛と結婚をしたが、若き日のカッコいい(可愛い)面影は既に無い夫(妻)の老顔に肩を落とす夫婦。

こんなはずじゃなかった。どこで選択を間違ったのか。
人間は後悔の連続で選んだ道に他の選択肢がある限りその思いは消えることは無い。

この60歳を迎えたそれぞれの男女に、それぞれの試練とも言うべき絶望的事件が訪れ人生を振り返らせる。
おそらく大半の日本人は綾戸智恵が妻を演じる「ごく普通の夫婦」のケースで、私もおそらく結婚し60にもなれば(私の父・母同様)、メタボや血糖値に苦しむオジサンと化した夫に呆れ、また夫からはオバタリアン化した私に冷たい目線を送られるのだろう。けれどそこには数十年の苦楽をともにした何にも変えがたいモノがあることもこの映画は教えてくれる。
日本人の大半の死を占める癌が突然伴侶の死を宣告しにも来るだろう、そしてそんな時こそ彼らのように互いが「伴侶」であるということを改めて思い知らされるというものだ。



思い出の地、そして行くことが出来ずに憧れ続けた地である富良野のラベンダー畑は花が終わりただの殺伐とした畑と化している。それは油の乗っていた若き日を過ぎ去ってしまい夢や希望、理想が枯れてしまう老年期を迎えた彼らと全く同じだ。
けれどすべてを捨てて、この地で再開を果たす決断をさせたのは、新婚当時の妻が未来の60歳の夫に送った、たった一通のラブレター。首都高を潜り抜け、時間も場所も飛び越えてようやく届いた一通のラブレターだ。

60際。世間的に見ればこれから「始まる」歳では、もう無い。
しかし。妻を不器用に、それでもひたすら抱きしめた夫の姿に人は涙を流さずに入られない。

彼らの姿に思うこと。

人は常に明日を選択して今を生き、過去を振り返っては後悔し、それでも今走っている道を走り続けなければならない哀しい生き物だ。自由の利く一人が良いという人も、誰かに負ぶさってラクに行きたいという人もいるだろう。
いずれにしても首都高と同じ、一度走り出したら止まる事は無く、一度間違えれば引き返すことは出来ない。

そう、冒頭で彼が嘆いたように引き返すことは出来ないから人は過去を後悔し今に絶望する。
けれど彼ら3組の「カップル」はみなその顔に笑顔を取り戻した。まるで生まれ変わったかのように幸せな笑みを浮かべている。
彼らの笑顔に希望を知った。
引き返すことは出来ずとも新しい道を選ぶことは出来るのだから。

映画公式サイト >>http://www.roku-love.com/ 

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
素晴らしい映画評論です。映画を観てとても感動しましたが、これを読んで改めて感動しました。
Yahoo!レビューに投稿されたらいかがですか?
(私はYahoo!レビューを参考に観る映画を決めてます)
JAW
2009/06/09 14:06
はじめまして。こんなにお褒めの言葉をいただいたのは初めてです(笑) ありがとうございます。
Yahoo!レビュー・・・ここのレビューをそのまま乗っけてもOKなんでしょうか。やったことはほとんど無いのですが、後でやってみます。コメントありがとうございました。
空蝉
2009/06/10 09:11

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