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zoom RSS 『神々の誕生〜易・五行と日本の神々』 by 吉野裕子

<<   作成日時 : 2009/07/10 13:07   >>

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日本人は宗教心が薄いという。だからというわけではないが五行だの易だのというと「?」と首を傾げてしまう人が多いだろう。けれどちょっと言い方を変えて十二支とか節分だとか、お彼岸だの冬至だのと言えば合点がいく。
また子丑寅・・・などと書くと読めない理解できない人はいるかもしれないが声に出して「鼠牛虎・・・」などと書けばなんだ、干支のことか私は○年〜と話がスムースだ。日本で動物の名で言い習わされているこの干支が、実は中国からの輸入思想でありそもそもは植物、すなわち穀物の盛衰が当てはまっていたということを一体どれだけの人が知っているだろう。
エビスビールの恵比寿様、大黒柱に大黒天、七福神に門松ひょっとこオカメ・・・と誰もが知っている身近な伝承物はどれも純粋に日本の中で形成されたものではない。干支と同じく、中国など大陸からの五行や易といった緻密で壮大な思想が到来し、未だ未分化で不明瞭だった古来土着の神々、信仰や風習は初めて整理され美しく形を成し、明文化されてきたのである。

本書には少々素人には難しい図や専門用語が多々登場するため私なんぞはナナメ読みしてしまう箇所も実はあった。
しかし先に紹介したとおり、導入部はどれも私たちが知るところの日常的な物事・行事であり、著者の言わんとする大筋は勿論、なるほど!と納得させられる神々の系譜が非常に興味深く、解りやすく、魅力的に著されているのである。
知ったつもりで過ごしている節句や年間行事には隠されたルーツがあり、ビールの宣伝キャラにすら使用されているような身近な神々にも驚くべき原初の姿が見え隠れする。
そうした系譜が方程式のように、そして芋づる式に明かされていく、この快感をぜひとも味わっていただきたい。

まず日本は言わずと知れた島国で、鎖国時代の影響もあるが地続きの欧州とは違い単一民族、単一国家の意識が強い。
いや、そうした「単一」意識を再認識する必要に迫られなかった往年の日本人はもともと渡来人であるとか、どこの人種に属するとか、そうしたことにこだわりすら持つ機会が無くここまで来てしまった。日本人には民俗はあっても民族はないといわれる所以である。アイデンティティの確立であるとか、ナショナリズムの隆起であるとか、そうした熱風が吹き荒れたこともまた、無い。確かに独立性、国民性といった強い意識を持たない国民性と言われても仕方が無いところではある。しかし逆を返せば
それは他文化に対して寛容であり、他国の文化文明の良いところを取捨選択できるという利点でもある。
未だ完成を見ない内なる文化をより良い状態に補完し形成するという「加工・形成技術」が日本においては極自然に、そして良質に出来上がっていく。そしてそれは太古の昔、神々の誕生とそれらの神話化から既に始まっていた・・・。
本書の題「神々の誕生」とはそういう意味である。

著者によれば日本のもともとの信仰対象には「蛇」が必ず存在するという。少々それに傾倒しているきらいもあるがいわば土着信仰、山岳信仰などが多分かが渡来する以前からあり、例えば蛇を祖霊・穀霊とする信仰があったのには違いない。
それら未発達な、明文化・体系化されていない混沌とした状態のアニマ的な「カミ」たちは 中国大陸からわたってきた易・五行により具現化、そして神霊化されて今日私たちの伝わるところの神話となった。
それらの変遷が非常に細かに、理知的に、様々な身近な神たちを例に興味深く解き明かしてくれるのが本書の魅力である。

いくつかテーマを紹介すると、まず鬼、エビス、アマテラス等の神道系の神々、年中行事など十二支や節句、より生活に根ざした廁(つまりはトイレ)や竃(キッチン)の神々、オカメヒョットコ、正月の門松に至るまで・・・
中には廃れつつあるものも見受けられるがだからこそこうした紹介・解説・研究本により私たちはここらで正しくより豊かにしっていても良いのではないかと思う。

そうして解りやすい導入部から段々と詳しく説明に入り、いよいよ常人には理解しがたい難解な箇所に移ってくる。
最終章には専門知識のオンパレードとなる。
八卦に代表される様々な易・五行のキマリゴトが図解をふまえ紹介されているので、より詳しくより専門的に知識を深めたい方はこちらまで熟読せずにはいられないだろう。

最終章まで網羅するかどうかは分かれるところではあるが、理知的かつ論理的に、そして方程式を解くかのような謎解きのオモシロさを実感できる非常に興味深い一冊である。


神々の誕生―易・五行と日本の神々
岩波書店
吉野 裕子

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