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zoom RSS 『星守る犬』 by 村上たかし

<<   作成日時 : 2009/09/07 13:52   >>

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・・・望んでも望んでも叶わないから、望み続けるー ただそれだけー人は皆生きてゆくかぎりー「星守る犬」だ。・・・

後編の主人公が一人夜空につぶやいた言葉である。
星守る犬、というのは決して手に入らない星を物欲しげにずっと眺めている犬のこと。高望みをしている人のことをさすそうだが、この物語の主人公たちも、犬たちも、願っているのはそんな「高望み」ではない。
いや、彼らのように些細な幸福も謙虚な願いも「高望み」にしているのは今のこの世界そのものかもしれない。

前半は人間関係や家族や社会の変化についていけない不器用な、けれど極普通の中年男「お父さん」が主人公。幼い娘と妻と犬に囲まれた暖かな家族も数年後には離婚され、お父さんは犬と二人車一台、行けるところまで行く当てのない旅にでる。既に死に場所を求めていたのかもしれないが、しかし彼らの旅は緩やかにただ温かく優しく続いていくだけである。
後半はそんな「お父さん」と彼の死後も見守り続けて果てた犬の二つの死体が発見され身元調査を進める男の話。
彼は二人の生前の足跡を辿るうち自身の孤独な人生と、天涯孤独な寂しさと、それでも見守り続けてくれた犬の優しい存在が自分にもあったことを痛感する。

人間ってのは不器用で、本当に欲しいもの、望むこと、守っているものにはなかなか正直になれない。
作中でも彼ら人間は一度たりとて願望を素直に口にしてはいない。だからその代弁者として「犬」が彼らに望んでいる。
もっと遊んでほしい。僕を見てほしい。ずっと一緒にいてほしい。愛してほしい。
単純で素直で些細な願いは、愛する人を見守り続けること、そして愛してほしいということだ。
犬たちが「星守り」続けているのは「お父さん」と家族のいる幸せな日々が続くことであり、男が生涯恵まれなかった家族の存在であり、それらはきっと、犬たちの見守る眼を通して描かれた彼ら人間自身の不器用な願望だ。
彼らも・・・人間も犬のようにただひたすら欲しいものを「星守る」ことができたらどんなにか楽だろう。
けれどそれが出来ないのは、人間は失うことを恐れては手に入れようとせず、得られぬ寂しさを知っているから求めないからだ。

「恐れずに愛すればよかった・・・」

きっと誰もが一度は彼と同じ言葉を口にするときがくるのではないだろうか。
そんな人間だからこそ、愛を得られたときの喜びも、求め続けるときの幸せもまた大きいのだと信じたい。
求めることを諦めてしまった「お父さん」たちと、臆病になってしまった孤独な人たちに、
この物語が大きな揺さぶりをかけてくれると、思う。


星守る犬
双葉社
村上 たかし

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「日輪草」 本編につ ...
表紙の犬と目が合った ...
これはない表紙は可愛 ...
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