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zoom RSS 『廃墟建築士』 三崎亜記

<<   作成日時 : 2009/09/19 09:18   >>

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タイトルからして不思議なものを発している。廃墟を建築する人、その字面から想像するにゴミを進んで作り出す人、意味の無いもの必要とされないものをわざわざ作り出すという仕事を生業とする人が最初、浮かび上がった。
本書に収められた4編はどれも廃れて世間から見放されかけた、いわば廃棄物化直前の建物にまつわる守り人たちの熱い物語である。熱いといってもラブロマンスがあるでも人情仁義に溢れたものではない。
ただそれら建築物にはその存続を願う者がいなくなり、それらの存在を守る者がいなくなれば即取り壊されてしまうであろう、脆く弱い状態にある。

「七階闘争」巷で7階における犯罪が急増したため全面撤去する危機に陥った七階と七階を愛する人々の市議会との闘争。
「廃墟建築士」廃墟に魅せられ廃墟を純粋な芸術として建築し続ける道を選んだ孤独な建築士。
「図書館」とある田舎の寂れた図書館に「夜の図書館」を公開するため赴いた蔵書の調教師。野生化し図書館を飛行本たちを調教するが、あることから暴走を始める。
「蔵守」中にある何かを守り続けることに存在意義を見出し誇りを持つ蔵守人と蔵そのものの心が交互に一人称で語られていく。次第に近づく「終わり」をもたらす略奪者の存在に対峙しそれでも守り続ける彼らにそれぞれの結末と新たな蔵が続く。

どれにもいえることは、それら建築物に見せられた守り人たちは、常にその存在の純粋さを主張し本来の純粋な素晴らしさ、美しさ、存在意義の大きさを訴え続けているということだ。
そしてその訴えも含め、彼らは何かを求め探し続けている・・・そう、何かを「し続けている」。
・答えの無い問いを発しながら、歩き続けよう。−姿の見えぬ「誰か」を見極めるために。(七階闘争)
・造り続けることを自らに課す日々。〜命事切れるその瞬間まで。(廃墟建築士)
・決して追いつけぬ決して寄り添えぬ存在に惹かれて生きる〜どこに向かっているかも解らぬ闇の中で私は私を見つめ続けた。(図書館)
・理由は解らずとも守ること守り続けることそのことにこそ意味がある行為も存在するんだ。(蔵守)

建築物は人がいて始めてその存在を認識され、存在意義を持つことが出来る。
そしてそう与える「人」自身は、終わることの無い何かに向かい何かを探し続け、守り、追い求め、焦がれ続けている。
本書に登場する世界はどれも現実離れしたファンタジーが少しだけ含まれている。奇妙な法律やちょっとありえない認識が当たり前に通っているあちらの世界で存在する建築物たちはやはり(私たちからすると)虚像でしかない。
けれどこの物語は、そんな虚像を真剣に追い求めている人々の純粋な物語なのである。

どれもいっそすがすがしいほど淀みなく気持ちの良い読了感を与えてくれる。それは夢中に○○し続けていく彼らの姿が、しょっちゅう立ち止まっては二の足を踏み何かをし続けることが出来ない、それだけのものに打ち込むことが出来ない私にとって純粋に美しく魅力的に、いや羨ましくさえ思えるからに違いない。
けれど彼らの姿こそ本来の人間の姿だと信じたい。
彼らの目に廃墟たちが、時には飛行し、時には意思を持つ「本来の姿」で見えていたように。

内容紹介
●廃墟に魅せられ、廃墟建築士として生きてきた私。この国の廃墟文化の向上に努めてきたが、ある日「偽装廃墟」が問題になり…「廃墟建築士」●巷でおこる事件は七階で起こることが多いため、七階を撤去しようという決議が市議会で出された。マンションの七階に住む僕は、同僚の並川さんに誘われて反対運動に参加することになったが…「七階闘争」●会社から派遣されて、図書館でしばらく働くことになった私。本が“野性”に戻った姿を皆に見せるのが今回の業務だった。上手くいったかに見えたが、思わぬ事態が起こり…「図書館」●蔵も蔵守も待ち続けていた。自分たちの仕事を引き継ぐ後継者がいつかやってくることを。いつか現れるだろう略奪者との戦いを。…「蔵守」
ちょっと不思議な建物で起こる、ちょっと奇妙な事件たち。三崎ワールドの魅力あふれる最新作品集。



廃墟建築士
集英社
三崎 亜記

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『廃墟建築士』/三崎亜記 ○
・・・相変わらず、水無月・R内「設定ノートが見てみたい作家さん」ナンバー1な、三崎亜記さんです。 「廃墟」が「文化の尺度」になるというのは、どういう世界・・・?作品中で滔々と説明されることが、全然理解出来なくて、脳内をするすると通り抜けてしまって。 作品タイトルだというのに、解らなかったのです『廃墟建築士』。自分の読解力に、自信がなくなってきました・・・。 ...続きを見る
蒼のほとりで書に溺れ。
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書評:まねき猫の読書日記
2009/09/27 16:26

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
空蝉さん、こんばんは(^^)。
引っ越しどたばたもようやく終わるも、引っ越し先は新型インフルエンザ大流行地域。
なんか全然落ち着きません(笑)。
(↑そんな私し事はどうでもいい)

全然本が読めずブログ記事UPができません〜(T_T)。
そんな中、空蝉さんの『廃墟建築士』の記事は、とても清冽に感じられました。
すごく、本が読みたいなぁ〜!という気持ちになりましたね♪ありがとうございました。
建物と人の交歓、建物自体の命が感じられる、力強い物語でした。
水無月・R
2009/09/21 23:07
こんばんは、お引越しされたんですか?それじゃなかなか落ち着きませんよね;;
私も忙しかったり体調が悪かったりで1冊/週になりつつ…しかもこんな時に読んでいる本が京極の『厭な小説』。いや、本当にいやな小説でした(笑)近々UPします…いやだなぁ(苦笑) 水無月・Rさんの書評を読んで厭な文章を払拭しにまいりますね♪
空蝉
2009/09/22 18:31

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