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zoom RSS 『厭な小説』 by 京極夏彦

<<   作成日時 : 2009/10/17 17:55   >>

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厭と嫌。どちらもイヤと読めるがそれぞれ「厭ましい(いとましい)」「嫌い(きらい)」とも読め、微妙なニュアンスの違いに過ぎないとおもわれがちだが、2つはあきらかに別物だ。
本書は題名からもわかるとおり、前者の「厭」である。そして後者の「嫌」が「厭」に比べてどれほどかわいいものか、全章を通して、それこそ厭というほど思い知らされるだろう。

<1> ある会社員が同期の愚痴にうんざりしつつ、夫婦間に溝が出来た妻の待つな自宅へ帰るとそこには不気味な見知らぬ子供が出迎えた。とにかく厭なその子の幻覚と、存在を否定する妻と、現実の間で発狂していく。
<2> ある主婦は異常な行動をとる同居人、おそらく義父であるはずの、老人を、そのたまらない嫌悪感から殺した・・・はずだった。
<3> 失業しホームレスとなった男はある不思議なホテルの一室で先泊者を殺して1年の幸福を得た。必ず一年後ここに戻るという必然条件の上で・・・そして1年後、再び訪れたこの部屋で男は同じ経験を、する。
<4> 後輩から無理やり仏壇を預かるよう押し付けられた男は友人にその後の不思議な体験を語る。彼は仏壇の扉を開きそこに「ぎっしり詰まった」モノ・・・人でも死体でもない、モノがじっと自分を見続けていることを知ってしまった。
<5> ある男は厭なことだけを徹底して繰り返す悪意のない彼女が厭で辟易してしまい、終に殺してしまった、はずだった。
<6> ある家主は厭な経験と感覚だけがループし続ける厭な自宅で、その最期まで繰り返されることになった。

メインとなる奇妙で厭なストーリーの脇に、私たちも誰もが経験して不快だということを知っている一般的な「厭なこと」が転がっている。何のために?きっと意味などない、この本が「厭な小説」なのだから、厭なことが満載なのは当然といえば当然だ。

例えば電車で右へ左へ転がり続ける目障りな空き缶。(本文中より)
床に落ちている、つまんでもつまんでもつまめない髪の毛一本。
雨の日に靴の中に染み込んで、歩くたびにブビュッ、キューッとなる水。
逆さ睫毛、ホクロに生えた毛、深爪、口内炎、ガラスのキーキー鳴らす音・・・

そんな他愛もない小さな厭なことが、あちらこちらに散りばめられているのだ。気持ちいいはずがない。
厭なこと、これは嫌とはどこがそんなに違うのか、厭なことを並べているうちに解ってくる。

厭なこと、それは理由がなくても成り立ってしまう嫌悪感であり恐怖し逃げ惑うほどの、モノだ。
触れることも感じることも見ることも聴くことも、あらゆる感覚、五感で感知したくないモノ、逃げるしか出来ない(それでいて不可避な)対象に出くわしたとき、私たちは「厭だ」というのだ。
他人に容易に理解してもらえればまだしも、本書のように他人には理解の及ばない不可思議さが加われば八方塞がり、
理解の範疇を超えている説明の付かない意味不明のもの、しかもソレが永遠に繰り返される・・・これほど「厭なこと」はない。

嫌いなものには立ち向かうことも出来る、手を加えて改善することも制裁を与えたり倒すことも出来よう。
けれど厭なものは・・・。
厭なものは面と向かいたくもないのだ。ガラスの擦れるキーキー音がすればその音源に近づいて止めるよりはその場から離れる方を選ぶだろうし、何よりまず、耳をふさぐだろう。そんな感じだ。
とにかくまず逃げる。ソレがないところ、厭なヤツの存在しない平穏無事な世界に逃げるのが最優先となるだろう。

しかしそんな厭なことばかりが満載のこの小説が、私が厭かというとそうでもない。
もちろん嫌いでもないし、こうして全話読破したことからも解るように、実は面白くさえあった。
だから、著者は 「一読、後悔必至の怪作、ここに誕生! “ゲラを読んでいて、重い気分になっちゃいました」
なんて書いているけれど多分後悔はしないと思う。重い気分にはなるかもしれないけれど(笑)、ほんとに厭〜なイヤな話ばかりで救いなんて一つもないけれど、それでも厭な気分には、ならないと思う。多分。


内容紹介
「知りませんからね、読んで後悔しても。」悪寒、嫌悪、拒絶……あらゆる不愉快、詰め込んだ日本一のどんびきエンターテインメント登場――「厭だ。厭だ。厭だ――」感情的パワハラを繰り返す馬鹿な上司に対する同期深谷の、呪詛のような繰り言にうんざりして帰宅した私を、マイホームの玄関で見知らぬ子供が迎えた。山羊のような瞳。左右に離れた眼。見るからに不気味だ。なぜこんな子が、夫婦二人きりの家に? 妻はその子の存在を否定した。幻覚か? 怪訝に思う私。だが、これが底なしの悪夢の始まりだった……(「厭な子供」より)。「恐怖」と「異なるもの」を描き続ける鬼才が繰り出した「不快」のオンパレード。一読、後悔必至の怪作、ここに誕生! “ゲラを読んでいて、重~い気分になっちゃいました”って、著者が語っていいのか!?

内容(「BOOK」データベースより)
「厭だ。厭だ。厭だ―」感情的パワハラを繰り返す馬鹿な上司に対する同期深谷の、呪詛のような繰り言にうんざりして帰宅した私を、マイホームの玄関で見知らぬ子供が迎えた。山羊のような瞳。左右に離れた眼。見るからに不気味だ。なぜこんな子が、夫婦二人きりの家に?妻はその子の存在を否定した。幻覚か?怪訝に思う私。だが、これが底なしの悪夢の始まりだった…(「厭な子供」より)。「恐怖」と「異なるもの」を描き続ける鬼才が繰り出した「不快」のオンパレード。悪寒、嫌悪、拒絶…あらゆる不愉快、詰め込んだ日本一のどんびきエンターテインメント。



厭な小説
祥伝社
京極 夏彦

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シチュエーション嫌と ...
ああ厭だ・・・・けど ...
徹底した演出がすごい ...
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『厭な小説』/京極夏彦 ◎
いやぁ・・・(笑)。色々、言うべきことはあると思うんですが、なんと言うか、この作品は、真面目に受け取ってはいけないような気がする。あえてここは、明るく軽〜く受け流すのがよろしいかと。 ・・・なんて言うか非常に挑戦的な作品でございましたよ、京極夏彦さん。 なんせタイトルが『厭な小説』で、タイトルだけじゃなく、内容も、構成も、装丁から何から(虫が挟まっているような印刷には度肝を抜かれた)、すんごく厭なんである。 でもその厭さ加減を(笑)で片づけて自分から切り離そうとしてる自分が、一番「厭... ...続きを見る
蒼のほとりで書に溺れ。
2009/10/18 21:28

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
空蝉さん、こんばんは(^^)。
いやはや・・・「厭な」小説でしたねぇ(笑)。
どの物語もうへぇ〜、となりながらも、やめることができず。
どれもこれも厭なんだけど、面白がって読んでた部分もありますね。
・・・うわ、なんて厭な奴だ私(笑)。
水無月・R
2009/10/18 21:33
お久しぶりです〜こんにちは。
ほんと、厭〜な小説だけど嫌じゃなかった(笑)
京極センセには早く京極堂シリーズ書いて欲しいけれどこういうのも嬉しいです。トラバありがとうございました。
空蝉
2009/10/19 11:02

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