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zoom RSS 『チェーン・ポイズン』 by 本多孝好

<<   作成日時 : 2009/10/28 12:23   >>

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何の個性もとりえもない自分と意味乾燥な毎日、それに続くカラッポの未来しか残されていないと思い知った36歳OLが、ふと口にしたつぶやき 「「もう死にたい。」 それがこの物語の始まりである。
いや、始まり、というよりはチェーンメールのように後先へと続く輪の、ほんのひと鎖の始まりというべきだろう。
死にたいと願う絶望にひしがれた女の一言に、謎の男が一年の保留期間付きで安楽死の方法を仄めかす。
読者はここで、おそらくこの女が一年の間に様々な出会いや体験をして生きる希望を獲得し、生き残るのだろう?など単純な予想を立てるのだろうが、次の章にはその予想を大きく裏切られてしまう。

一人の雑誌記者が、彼女を含め自分の取材した3人の自殺に、「死を覚悟した1年後ほどにアルカロイド性毒で自殺をしている」という共通項を見出す。つまり彼女の死が決定的に提示されてしまうのだ。

そしてまた次の章では1年後の安楽死を切望する彼女の余生が描かれる。
彼女は成り行きからホスピスと養護施設にボランティアとして顔を出し一年後までの一日が減っていくことに満足する。しかしありがちではあるが養護施設は経済状況的にも人材的にも困窮し、それでも子供たちは悲しいほど生き残る術を自然と身に着けており、そんな子供たちに囲まれ数ヶ月を過ごすうち、彼女自身の心境にも変化が生まれる。
あと半年、あと3ヶ月・・・と限られた「その時間だけがはっきりとした意味を持ち理由をもっていました」と。
けして彼女は死にたくない、とは一度も言っていない。生き延びれば怠惰な人生を続けなければならないという事実に再び潰れてしまうことからだ。その代わり彼女は一つ、死にこだわるようになっている。
  「死んでもいい」から「死にたい」という積極的な願望がなければ死ねない。
そう変化した彼女の心は、相変わらず死を求めているとはいえ確かに生きている。死にこだわる人間は、きっと同じだけ生にもこだわっていると、感じさせてくれるシーンである。

「死を決めて、初めて私は私のいない未来を愛しく感じていた。その未来につながっている今のこの世界の何もかもを、それなら許せそうだった」

彼女は死んでもいい、でもなく死にたい、でもなく、『死ねる』と思うだけの愛しい子供たちと彼らの未来と自分の今生きている世界を、この時手に入れていたに違いない。



チェーン・ポイズン
講談社
本多 孝好

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