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zoom RSS 『造花の蜜』 by 連城 三紀彦

<<   作成日時 : 2009/11/16 12:57   >>

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長編ながらひと時も退屈さを感じさせず、めくるめく意外な展開を見せる本作、ミステリーとしては見事というほかない。
題名の示す偽物・・・いや、偽者としての「造花」とその偽の蜜に群がる働き蜂たち。考えてみればミステリーとは、偽の情報に隠された事実と感情や状況に捻じ曲げられたいくつもの真実が交錯する中で、一つの結論を追求し続ける物語である。
「複雑な事情を抱えた」母子に降りかかった不可思議極まりない息子の誘拐事件の一部始終が描かれる前半と、その全てを一蹴してしまうほど大きな額の「身代金」が裏で動いていたという事実がことの全ての発端を明かす後半と。
読者は何度も何度も、それこそ最後の最後に至るまでいくつもの真実をみつけることになる。

まず前半は不可思議きわまりない事件から始まる。
離婚して実家に戻っている母・香奈子と息子・圭太は誘拐事件に「巻き込まれ」る。事件としては圭太が誘拐され、身代金の額すらも提示されずくれるならもらってやるというふざけた犯人からの電話に憤る香奈子と元夫、そして刑事、不審な行動をする実家の作業員、確かに母親に預けたという幼稚園の先生・・・
渋谷の蜂の巣のような交差点の真ん中で蜂を放ちながら、堂々と圭太を返し逃げおおせた犯人だが、彼らは5千万を指定しておきながら結局一銭も手にしなかった。一体何のために、わざわざ失敗の危険を冒すような事件を起したのか?

そして後半。
事件のさなか香奈子が漏らした圭太の出生の秘密を橋渡しに、これら前半全てを一つのステップに降格させる裏の事件が進行していたことが、一人の男と彼が出会った「造花の女」を中心として描かれていく。
作品全体に何度となく現れる偽物のの象徴「造花」と、それにひきつけられ、だまされ、それでも働き続ける「働き蜂」。
犯人の一人と見られる謎の女はまさに造花であり、作中に現れない幾人もの働き蜂が、この作品の裏に隠れている。
これら全てを語るとしたら、非常に深く膨大な作品になったに違いない・・・
が、逆に言えばそれが描ききれていないところにもったいなさを感じる。 誘拐事件に対して警察はもう少し大事になるのではないか? 世界に偽物となりうるほどのよく似た働き蜂が幾人もいるものか? そもそも毎日会っている幼稚園の先生が、母親を見間違えるものなのか? 女がいくら魅力に溢れた蜜を持っていようとも、それほど簡単に人を操れるものだろうか?
などなど・・・ 正直、ご都合主義があちらこちらに見えてしまう。

そしてあちらこちらで登場する人物全てに疑いがかかるようにだろうか?伏線にもならない余計な描写が多すぎる。
例えば香奈子の家族の存在は前半の姉といい、後半の父親といい、登場しなくても十分この物語は面白かったはずだ。
そうした混乱を盛り込むことも著者の狙いだったのかもしれないが、やはりミステリーはスマートに読無に限る。

それでも、なかなか面白い作品ではあった。

造花の蜜はどんな妖しい香りを放つのだろうか…その二月末日に発生した誘拐事件で、香奈子が一番大きな恐怖に駆られたのは、それより数十分前、八王子に向かう車の中で事件を察知した瞬間でもなければ、二時間後犯人からの最初の連絡を家の電話で受けとった時でもなく、幼稚園の玄関前で担任の高橋がこう言いだした瞬間だった。高橋は開き直ったような落ち着いた声で、「だって、私、お母さんに…あなたにちゃんと圭太クン渡したじゃないですか」。それは、この誘拐事件のほんの序幕にすぎなかった―。(Bookデータベースより)

造花の蜜
角川春樹事務所
連城 三紀彦

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