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zoom RSS 『Another』 by 綾辻行人

<<   作成日時 : 2009/12/02 13:00   >>

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本書を持って綾辻氏のホラーとミステリの融合が完成した、と見る人が多いだろうが、むしろどちらにも属さない新境地を開拓したと見るほうがしっくりくる。
本屋を覗いても書評のカテゴリなどをみてもたいていホラーとミステリは同じ棚か隣り合わせに配置されている。
ミステリー作家にしてホラー作家というのも多いしその逆もしかり。そもそもホラーとミステリ、ことに猟奇的な殺人事件やおどろおどろしい伝説の類が絡んでくるものとは仲が良い。事件解決を目的とするかどうかという点を除けば、基本的にその中身は謎と恐怖に翻弄される人々が描かれ、いつしか読者もその一員となったような錯覚に陥り、彼らとともに恐怖、もしくはスリルを体験するといういみでは非常に似ているからだ。

さて、ではこの作品はホラーか?ミステリか?その両方か?
おそらくは著者自信としては両者の融合を目指していたのかとも思われるし、それももちろん一つの見方ではあるが、ここではそのどちらでもない、という視点で読んで欲しい。

まずストーリーとしては学園ホラーの王道であり同時にミステリーの素質を十分に含んでいる。
転校生と彼だけに見える謎の少女、奇妙な現象に恐ろしい呪いと言い伝え、暗黙の了解に隠された約束とそれが破られたことにより始まった死の連鎖・・・。なぜこんな「クラスの決め事」があるのか?死者が続くのかを主人公は過去に問い続ける。

亡き母親の母校である田舎の中学校に三年生男子、榊原恒一は転入したのだが、そのクラス、3年3組はどうにも様子がおかしい。クラス中から「居ない者」として扱われる眼帯の少女、その昔クラスの人気者だった生徒が突然死し暮らすが一段となって「居るフリ」をし続けたという伝説、それ以降、3-3には死者が一人紛れ込み関係者が次々と死んでしまうという「超自然的現象」、それを阻止するために「申し送り」され続ける従うべきクラスの決め事。
ある目的のためにクラス全員がフリを演じ続けるというあたり「オリエント急行殺人事件」を思わせるが、そのフリの意味も本作品では全体の半分も行かぬうちにあっさりと明かされてしまう。

死も謎も不可思議な現象も、ホラーでありミステリであるには十分なパーツがそろっているが、それらはどれもクールで、終わった物語を淡々と読んでいるような希薄さがある。(ただし後半、「Who?」の章はかなり圧巻。臨場感に溢れた事件が描かれるのでお楽しみに。) 
相次ぐ死にクラス全員が怯えているにも拘らず感情の塊であるはずの「呪い」は「超自然現象」という言葉に置き換えられる。
各章の冒頭に挿入される第三者的な会話(対話)文は盛り上がってきた臨場感を一気に噂話や怪談話の一つであるかのようにトーンを落とす。 さらに主人公が時折過去形で「今」を振り返るように語るのだから、読者はこの物語で彼が助かるだろうと安心感を得るだろう。そういう意味でなんとも温度の低い物語ではあるのだ。

なのに、面白い。見逃せない。
なぜならこれほど淡々としていながらも、謎は謎のまま最後の最後まで引張られるからだ。
ミステリにしては根本的な謎が解明されないまま結末を迎え、ホラーにしては恐怖の終結が保障されない、なんとも歯切れの悪い作品であるはずなのに、最後の大立ち回りのせいだろうか、それこそ憑き物が落ちたように静かなラストを迎えている。
恐怖という感情によるブレもなく、論理的推理と現実によって味気ない結末を迎えるでもなく、程よい謎と感傷と仮初かも知れぬ安心を彼らと読者に与えて終わるこの物語は、やはりホラーでもミステリでもない。
綾辻氏の新境地、非常に興味深いものを読ませていただいた。




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