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zoom RSS 『SOSの猿』 by 伊坂幸太郎

<<   作成日時 : 2010/01/18 09:53   >>

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『陽気なギャングが〜』でエンタメ小説として火がつき、出る作出る作、映画化し高評価を受け続けてきた著者だったが、『魔王』あたりからどうも政治的な話や権力・圧力・集団・群集など反社会的要素がちらほら見える作風になり「活気」が失われてきたことは明らかだ。
少なくとも軽く楽しく面白く、ワクワクするような愉しさで読む娯楽小説という感じはほとんど無い。
前作『あるキング』では政治的な話からは離れたものの、かなりマイナーな作風とストーリーでありFAN離れしたのではないかとヒトゴトながら心配していた昨今である。
それでも著者が「言いたいこと」をそうした作風の中に貫こうとしていること、それは見事に達成されているといって過言ではないだろうし、こうした作風を高評価するFANも多い。このままコアなFAN層が増えていくのだろうか?それはそれでいい。と思い始めてていた矢先。
本作『SOSの猿』はそうした心配を十分払拭してくれた。

伊坂作品の醍醐味は何といってもその見事な伏線の配置とパズルのような構成とニヤリと笑わせてくれる対話を吐くキャラクター達だ。
一見無関係に思われる複数の人物や彼らのそれぞれの身に起こる事件が、ともすれば読み流してしまう一言二言がキーワードのようにして互いの運命を急接近させる。もちろん本作もその魅力は十分発揮されていて、まず物語りは2つ+ちょろっと西遊記(笑)に二分される。

「私の話」の主人公・遠藤二郎は人の痛みや苦しみ、つまり助けて!というSOSの叫びを敏感で手助けせずにはいられない性質が災いして(?)、イタリアでの悪魔祓い(エクソシスト)の見習い経験を生かし副業で心理療法(カウンセラー)をしている。それを頼りに知り合いの息子(眞人)の引きこもりを助ける羽目になるのだが、今まで多くのSOSを目の当たりにしても助けたくても救えない自分の不甲斐なさや非力を悲観しているため気が進まない。

一方もう一つの「猿の話」は孫悟空を名乗る横柄な語り手が、誰かに向けて五十嵐真をネタに因果応報の話を披露していく。
彼の仕事はトラブルの因果関係を追及する商品管理であり、滑稽なほどトコトン原因を追究するクールで論理的で、かなり変わった思考の持ち主だ。 自社のシステムを利用している会社が株の誤発注で300億の損害を出してしまい、彼はその原因調査をするべくその社の上司や社員と問答していくのだが、どこもかしこも責任の擦り合いと白黒つけたがる者ばかり。そしてミス入力したその社員の隣の家まで押しかけることになり、とんでもないモノを発見する・・・

引きこもり青年と唯一交友のあったコンビニ前で歌を歌っている人々を橋渡しに、このまったく関係の無い二人と二つの物語が急接近していくその手法は伊坂ワールドならではのもの。猿の話のどんでん返しも十分に楽しめるだろう。
さて、それでは今回の伊坂ワールド。彼らを結びつける共通項キーワードはなんだろう?

何度となく形を変えて言葉を変えて訴えてくるのは 
人は失敗すること、間違えること、そしてそれを認めることに恐怖する、 ということ。
そしてその恐怖から逃れるため誰かに100%の責任を負わせるべく白黒つけて「イチ抜けた〜!」をしようとするということ。 だ。
「善悪は、正邪は、明確なものではない」「人間は善悪が共に存在している」 そうした言葉があちらこちらに現れるが
残念なことに 二つの話、彼ら二人の周りには、100%の邪悪を押し付けられてSOSを出している人間がたくさんいるのだ。

二つの話は交錯し、彼らはある運命に立ち向かう!
西遊記と引きこもりと株の誤発注という突拍子もない関係と、信じられない未来とを信じ、これまたとんでもない方法で彼らは立ち向かうのだ。その詳細と結末は読んでからのお楽しみ・・・ということで。

今までの作品の多くは、権力や政治や才能など「何かとてつもなく大きな力」、そして抵抗できないほどの何かが伊坂作品主人公の「敵」になっていた。 けれど、今回は違う。 
これはもっと近くて身近で自分の中にある心の問題。他に押し付けるのでも逃げるのでもなく、失敗だらけの自分を認めてみようではないか。
そうすることで、世の中のSOS、きっと少なくなるに違いない。


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SOSの猿
中央公論新社
2009-11-26
伊坂 幸太郎

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