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zoom RSS 『東山殿御庭』 by 朝松健

<<   作成日時 : 2010/04/19 17:41   >>

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応仁の乱(1467-77年)を挟む室町時代、それはこの世が地獄と化した全国動乱の時代であったらしい。
安定していた幕府の体制は崩壊し各地に戦国大名が並立する。度重なる飢饉と血肉を争う戦争により誰もが混乱に陥っている。
そして、様々な宗派が急激に発生した(鎌倉時代の)後だけに上下貧富を問わず罪の意識、魑魅魍魎といった意知識が流布している時代でもある。「地獄」という観念が絵巻物などにより一般に定着したのもこの頃であろう。

この世とあの世、彼岸と此岸の境界が非常に曖昧になり、人々の心に混乱が、一歩踏み出せば外には魑魅魍魎が跋扈している時代である。平安時代のように加持祈祷で打ち払える明解な「鬼」でもなく、物の怪を武士の力でねじ伏せる武勇譚がまかり通る人の強き鎌倉時代でもなく、キャラクタライズされ文化に取り込まれた「妖怪」が消費される江戸時代でもない。
化物が実体を持ってよりリアルに怖れられている時代、混乱ひしめく現実にどこまでが正常であるのかが曖昧模糊となった、混沌の世界である。

そんな世に生まれついた臨済宗の僧、一休と妖しげなモノたちとの奇怪な交流を描いた短編集が本作だ。
鎌倉公の腫瘍治療のため 急遽、秘薬と名高い「尊氏膏」を求めに出された僧・一休は、秘薬を生み出す錬金城主、細川鉛丹の恐るべき精製方法を目の当たりにする・・・ 「尊氏膏」

戦乱攻防ひしめく都は「塁」と「塹」により巨大な迷宮都市と化し、一休は盲目の森と共に先を急ぐ。迷宮を抜けるため「生きた地図」をもつ男に同行するが男もまた「何か」に追われているようで・・・「應仁黄泉圖」

普請中の東山殿御庭で夜な夜な妖しげな現象が続き、管領畠山はやむなく一休に解決を依頼した。森と共に訪れた老僧・一休はその現象・・・子供の声の主は誰なのか?妖の目的はなんであるかを看破する。(表題作)

など、全部で5編からなる怪奇譚集。

実は表題作「東山殿御庭」には最後の最後まで楽しませてくれるヒミツがある。それは是非読んで確かめていただくとして・・・ 全編にいえること、それは類稀なる怪奇ミステリであるということだ。
単なるオカルトモノではない。ましてや一休の頓知による謎解きミステリーでもいわゆる探偵モノでもない。
数々の怪奇現象をとても緻密でおどろおどろしい描写で描き出してはいるが、それは妖怪や化物、幽霊といった「あちらのせかい」のものとして切り離した描き方ではない。
それこそこの時代の混沌とした世相もそのままに、夢と現実、過去と未来、己と他者、人と化物、こちらとあちらが非常に曖昧に入り乱れている。そして一休の目を通して読者は、その危なげな境界線の上を行ったり来たりしてしまうのだ。

どの作品も目を覆いたくなる程恐ろしい地獄や、エログロともいえる妖艶かつ気味の悪いシーン、読むだけで臭いたつような陰惨な描写が執拗に何度となく描かれ、そのたびに読者の五感が刺激される。
一休はそれら怪異から命からがら生還するが、まるでそれは黄泉の国から生還したイザナギ神のようですらある。
そう、人は見るなといわれれば見てしまう、見たくないものも見てしまう。
怖いものでも気色の悪いものでも、例えそれが陰惨なものであっても・・・
指と指の間から続きを読みたくなってしまう。
そんな好奇心を刺激してやまない、グロテスクな面白さが、ここにある。



東山殿御庭
講談社
朝松 健

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