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zoom RSS 『V.T,R』 by 辻村深月

<<   作成日時 : 2010/05/10 15:23   >>

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この作品は辻村作品の一つ『スロウハイツの神様』の主要人物にして人気作家コーキの小説として書かれている。
『スロウハイツの神様』は私にとって痛々しく、切なく、けれど心が締め付けれれるくらい愛に溢れた作品だった。
「スロウハイツ」荘で共同生活をする若者たちと人気脚本家チヨダコーキ。才能という存在を彼らは愛しつつも妬み、尊敬しつつも嫉妬し、応援しつつも貶める。どうしようもない感情の渦を飲み込んで、彼らは真実と答えを見つけていく・・・。そういう心をぎゅっとつかまれるようなたまらない作品だった。

だからそれだけに、この作品は少しだけ不十分(SF(笑))だ。

圧倒的な人気を誇るカリスマ的作家チヨダコーキが執筆したという設定なのだが、それだけの質と内容がない。
良くも悪くも細かい設定を飛ばしてしまえるライトノベルだということ、辻村自身の作品じゃないという設定だということ、若者向けの劇中劇であるということを除いても、やはり質が落ちる。辻村作品の中では正直、一番「おもしろく」ない。

なにせ、辟易して読むのを止めようかと思ったほどの文体だ。一人称の語りに慣れていないのだろうが、それにしても読みづらい。ライトノベルだからといってこの口調はないだろう・・・。
それもまあ、その語り手、主人公がちゃらんぽらんに怠惰な生活を送っているヒモ男なのだから、仕方ないのかもしれない。

主人公ティーは殺人を国に許可された1000人の殺人職「マーダー」の一人だ。
家族代々マーダーだったためそのまま受け継ぐことの出来ただけ、と自負するティーは仕事(殺人)もせずに女の元を渡り歩くヒモ生活を続けていたが、そんな彼の元に思わぬ電話が掛かってくる。
電話の主はアール。ティーの元彼女で誰からも好かれる絶世の美女、しかも同じくマーダーで腕も一流という、絵に描いたような「イイ女」だった。3年ぶり、つまり別れてから消息不明になっていたアールは「アタシは変わっていない」と意味深の言葉を残し、ティーは彼女の消息を探りに友人たち、関係者たちを訪ね歩く。

物語の筋としては単純だ。
元カノの消息を聞いて回るティーの一人称を借りて彼らの生きる世界、彼女と友人たちとティーを囲む思い出、彼らそれぞれの心の傷と痛く優しい癒しを時に切なく時に優しく時に残酷に明かしていくという形式。
彼らによればアールは売春を斡旋し、トランス=ハイのファミリーを次々と殺しているなど酷い噂と変貌振りばかりでその原因は謎を深めるばかりだ。

そう、物語の重要なキーを握るのが そのトランス=ハイだ。
彼ら友人たちの親兄弟、大切なモノを残酷にも殺していった伝説的凄腕のNo.1マーダー「トランス=ハイ」。
トランス=ハイはなぜ急に表世界から姿を消したのか?なぜ女だけは殺さなかったのか?
アールはソレと関係があるのか? なぜティーにだけ連絡をし、豹変してしまったのか?

3年間というアールとティーの空白の時間。
トランス=ハイは表舞台から姿を消しその名をほしいままに悪用する集団がはびこり、アールはそんな奴等を殺して周り悪評漂わす存在へと豹変した。そしてティーは、何も知らずに怠惰な隠遁生活をして世間を離れていた・・・。

軽いノリだった前半も・・・こうして読み進めティーが訪ね歩く友人たちの話を聞くうちに物語は重みを増していく。
トランス=ハイはアールとティーの友人たちから確かにあまりに多くのものを殺し奪ったが、なぜか彼らはソレを悲観し悲しみにくれているようには見えない。
むしろその喪失は過去との決別の契機になった、そんな風にすら見えるのだ。

そうしてようやくこの作品全体の重量感を実感する。「彼」の悲しい優しさと、弱さと、彼が強くした彼らの今を知って。

アールとティー、二人を見守り続ける悲しいほどに優しい友人たち、彼らの過去の軸に座る「トランス=ハイ」という圧倒的な存在・・・
そう、この物語は「スロウハイツの神様」そのものだったのかと、思わずにはいられない。

物語は最後まで曖昧な部分を残し、終わっていく。
しかし「スロウハイツ〜」とともにこの物語に揺るがないものがあることだけは解る。
彼が彼女を、彼女が彼を愛したということ。

くさい言い方だけれど、それだけは変わっていない。
「アタシは変わっていない」
彼女が残したその一言が、最後の最後になってようやく本当の意味で真実を語ると、気が付くはずだ。

怠惰な生活を送るティーのもとに、三年前に別れた恋人、極上の美女アールからかかってきた一本の電話。「アタシの酷い噂話や嘘をたくさん聞くことになると思う。ティーにだけは知っておいて欲しいと思って。アタシは変わっていない」街に出たティーが友人たちから聞くアールの姿は、まるで別人のように痛々しく、荒んだものだった―。彼女が自らを貶め、危険を恐れずに求めたものとは…。 (BOOKSデータより)


V.T.R. (講談社ノベルス)
講談社
辻村 深月

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