■空蝉草紙■

アクセスカウンタ

zoom RSS 『京都怪談 おじゃみ』 by 神狛しず

<<   作成日時 : 2010/07/05 18:36   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

何とも可愛らしい表紙絵に優しい和紙仕立ての紙質。
副題に「京都怪談」とあるのだから、さぞ「はんなり」した優しい情緒溢れる幽霊のお話かと思って挑んだのがとんだ間違いであった。
予想は大きく外れ、想定外の寒気と期待以上の吸引力をもった怪談短編集である。
表題作『おじゃみ』は中でもずば抜けて怖い、恐ろしくて、ゾゾッとするほど気色悪い。さすが『幽』怪談文学賞(短編部門大賞)受賞作なだけある。

京ことばがふんだんに使われているのは著者が京都に生まれ育った強みであろうが、言葉の響きというのはかくも効果的なのかと思わされる。もしかしたら本書は京ことばに不慣れな人間にこそ恐怖が効果的に働いているのかもしれない。読みづらい訳ではない、むしろ奥ゆかしさ、面白ささえ感じさせる京言葉なのだが、非日常的な言葉遣いによる不安定な雰囲気、どこか現実離れした…リアリティのない言葉のイントネーションの効果は隠せない。
言葉同様、既に私の常識が通らないのではないかと、この世界に始終びくついていたように思う。

軽く中身をさらっておくと。

「おじゃみ」京で恙無く暮らす夫と幼い息子と、秘密の「我が子」を隠れ住まわせている「私」。
      それは若い頃に産み落とし、すぐさま殺したはずの子供なのだが、母親を独占せんと
      彼女に近づくあらゆるものを、片っ端から喰って行く…
「前妻さん」優しい夫に姑に囲まれ悠々自適に暮らす後妻だが、よくできたという亡き前妻さんの
      着物をまとった祭りの日から彼女の陰がここかしこに現れて…
「増殖」 自らの手を切り落として死んだ男の部屋とその隣に、新しく入居した訳ありの女と
     幽霊が見えるという男。切っても切っても生えてくる、増殖するのは草花なのか、私なのか。
「虫籠窓」女優と当主の恋話を探ろうと記者が訪れた映画のロケ地「怨霊屋敷」は女3代と
     もう一人、に守られている。
「正体見たり…」現代の光源氏と揶揄される彼がここ数日夜な夜な悩まされている怪奇現象の正体は?
「安全地帯」「気をつけてね」と誰もが何気なく口にされるけれど、私にどんな危険があるというのか?
      どこまでいっても安全な場所などないこの世でやっと見つけた学校の安全地帯「生物室」

後半は特に現代的な言葉遣いが多くなり比較的「楽」なのだが京言葉に効果音、あちら独特の方言が「京女」によってやたら使われる、しかも語りかけられるような口調の「おじゃみ」は絶妙な怖さであった。

「じゃみず…ぞぞぞ じゃみず〜ぞぞぞ…」
おじゃみ=お手玉のことらしく、「じゃみじゃみ」は小豆のずれる音「じゃらじゃら」といったところだろう。じゃみず〜ぞぞぞ〜という音刷りとともにどこまでもいつまでも執拗に追いかけてくる「おじゃみ」は、非道な母親に生まれてすぐ殺されおじゃみ…お手玉につめられた赤ん坊である。

こうしてかくと惨殺劇やスプラッタ系のホラーみたいだが、実はそんなおぞましさ、怖さは殆どない。
いやむしろそれ以上にすごいのは赤ん坊のお化けではなく母親の所行だ。
自らを殺した母をそれでも求めてやまない「おじゃみ」。それを哀れと思いこそすれ、投げつけ、燃やし、2度殺して平然としているその図太さは怖いを通り越して恐ろしいほどに、不謹慎だが気持ちがよい。

どの作品も別に京都でなくとも成立するお話ではある。が、東京の都市伝説ではこうはいくまい。
幽霊などあほらしいと100%頭から否定している人間が登場しないのは、魔所の器をもつ京都ならではの気質、土地柄であろう。
京に生きている人間は「それら」に勝ったり負けたり、利用したりしながら不思議と共生している。

正直、こんな怪奇現象にでくわして平然としていられる度量は持ち合わせていないけれどそれだけに
彼らの立ち回りが恐ろしくもあり、それ以上に面白い。
おそらくキーとなるのは 生きている側の人間がどこまで耐えうるか!?
何に対して?もちろん、自分の過去に築き上げてきた「それら」に。である。


第4回『幽』怪談文学賞・短編部門大賞受賞の京都怪談
京都のおんなを、なめたらあきまへんえ。
京都を舞台に展開される、おんなの想いがつまった6つの短編怪談。

夫と五歳の一人息子と、京都の古民家で暮らす「私」。
そこにはもう一人、押入れや壁のすきまに潜む“秘密の家族”が住んでいる。
それは、十代の頃に私が産み落とした赤ん坊だ――(「おじゃみ」)

古民家に暮らす妻、由緒ある家に嫁いだ若奥様、
古くからの町家で祖母・母と暮らす妙齢の女性、京都の大学生、女子高の生徒……。
さまざまな「京おんな」の生きざまを描く六つの怪談物語。



京都怪談 おじゃみ (幽BOOKS)
メディアファクトリー
神狛しず

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ウェブリブログ商品ポータルで情報を見る


画像

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
『京都怪談 おじゃみ』 by 神狛しず ■空蝉草紙■/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる