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zoom RSS 『製鉄天使』 by 桜庭一樹

<<   作成日時 : 2010/08/10 11:07   >>

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製鉄会社のバカお嬢 赤緑豆小豆(あかみどりまめあずき)は鉄を自在に操る能力を持ち、赤いリボンのポニーテールをトレードマークに今日もハイウェイをバイクで走る。パラリラパラリラ〜と。

中学入学早々、ドブスのレディス、エドワード族にリンチを受け悔し涙した14歳の小豆だったが、元総番の大物が裏経営する武器屋「貴婦人と一角獣」で中国地方統一を夢見た時から瞬く間に成長する。
いや、成長というか・・・
自称頭脳派マスコット希望の親友、同類の不良少女たち、恋人は鳥取の大元締「残薔薇一輪」の新総番。エドワード族に復讐、勝利した小豆はレディス「製鉄天使」を旗揚げして初代総番となり、文字通り体を張りアスファルトを血に染めて仲間とともに無敗制圧をし続ける。

登場するのはいわゆる「不良少女」、死語をあえて使わせていただくなら「スケ番」とその取り巻きたちである。70年代末〜80年代にかけて活躍?した彼女たちは現代の若者たちからすれば2、3世代も前の過去の遺物である。文章や懐かしのドラマ特集などでしか知ることの出来ない、半ば空想上の生物(笑)
まさしく「フィクションの国」に生きる住人なのだ。

けれど、彼女たちが何度も口にする「子供だけのフィクションの国」「えいえんの国」という言葉は、なにも彼女ら不良たちだけのモノではないだろう。
小豆とは全く対照的に「まっとう」な兄が抱える恋愛事情、裏の世界と平行して振興してきた子供たちの戦い「受験戦争」や大人たちが心身をけずる競争社会…あらゆる世界で人は目的をかなえるため、妥当するために何かと戦っている。
自分ではなく外の世界と、永遠ではなくソレを終わらせるために、フィクションではなくリアルとと戦わざるをえなくなる。その前に。
きっと誰にでもあったはずだ。自分のため、ずっと続けばいいと思う今この時の「えいえん」を願ったときが。不良でも夢見る少女でも それは同じものだ。

「赤朽葉家の伝説」のスピンオフ的な作品ではあるが、最新作の「道徳という名の少年」といい、この作品といい、桜庭氏の描く彼女たちの「敵」は一貫している。
どれも時代の盛衰、世相の移り変わり、そして子供から大人への成長・・・
一般的に大人社会は保身的、変化を嫌うと思われがちだけれど、大人は子供に「成長」という名の変化を強要する。
「変化」という時間の流れが彼女たちの前に立ちはだかっているのである。

そこに「永遠」はない。

子供は大人に、少年は男に、少女は女になり、それは生きている限り逃れられない宿命だ。
子供だけのフィクションの王国でレディースの総番という頂点に登り詰めた赤緑豆小豆も例外ではなく、その瞬間はいつの間にか、もしくは突然訪れる。 私がそうであったように。

では、彼女はどうしたか?彼女たちはどうするのか?
それは読んでいただくとして・・・

一つだけ、彼女の姿にハッキリ読み取れることがある。
えいえんの国。 それは求め続ければいつだって求める者のモノなのだ。




製鉄天使
東京創元社
桜庭 一樹

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『製鉄天使』/桜庭一樹 ○
何と言うか、テンポがいい物語でしたね〜。ただ・・・何か、ちぐはぐな感じがするんですよねぇ。 多分、〈直木賞作家・桜庭一樹〉を期待して読んだ人は、納得できないんじゃないかな〜。 本作『製鉄天使』は、『赤朽葉家の伝説』の毛毬(けまり)が書いた漫画のノベライズ、だと思うんですけど・・・。ううむ〜。 あ、いや『赤朽葉家の伝説』と比べるから違い過ぎるというだけで、あの時代の雰囲気と言うかそういうの、すごくよく伝わったし・・・。悪くはないんだけど。 ...続きを見る
蒼のほとりで書に溺れ。
2010/08/19 22:41

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
空蝉さん、こんばんは(^^)。
結構懐かしい世界であり、ツッコミ処満載でした(笑)。
いつしか大人になるその悲しみを秘めて、それでも「えいえんの国」を求めて走り続けた小豆の強さと儚さのバランスが、素晴らしかったですね。
水無月・R
2010/08/19 22:46
こんにちは〜暑い日が続き読書のペースも落ちてます;;
でも彼女たちのあつさにはかないませんね!
桜庭さんの作品はまだまだ若さがあります!
空蝉
2010/08/24 12:22

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