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zoom RSS 『ツナグ』 by 辻村深月

<<   作成日時 : 2011/02/15 09:15   >>

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生きているうちに一人だけ、一度だけ、生者が死者に会える機会を用意してくれる使者がいるらしい。
ネットやほんのわずかな人伝からようやく辿り着くことの出来るその電話番号にかけると、「ツナグ」と呼ばれる使者として一人の少年が依頼を受ける。なぜか病院のロビーで、無料サービスのお茶を片手に。

まずこれは単なる奇跡譚やファンタジーの類いでも、オカルトでもないし、泣ける話でも、いい話でもない。死んだ人間と会えると言っても、それが「本当に」死者なのか意識体なのか生者の「思い出」のようなものなのか…その真偽は不明のままである。
いや、でもそんなことはどうでもいい。それが残像であれ「思い」によるものであれ、彼らは出会い、話し、新しい思いを重ねて、生者だけが次の朝を迎えたことに変わりはないのだし、二つの思いが繋がったことだけは確かなのだから。その結果、たとえ会わなければ良かったと思う程に苦しい思いを背負うはめになろうとも、だ。

一生にたった一人、たった一度しか死者と死者に取っては生者と)会えないという貴重なチャンスをつかおうというのだ。ツナグという死者を名乗る少年、歩美のもとに来る依頼者たちはみなギリギリまで追いつめられている。

1話目の女性は、退屈で平凡で誰にも必要とされず愛されない人生に自殺を考えていて、唯一の希望だった亡きアイドルを指名した。(「アイドルの心得」)

2話目は 母の残り少ない寿命を告知もせず親族にも話さないまま押し通し、それが正しかったのか否かを自問し続ける不器用な長男の話。(「長男の心得」)

3話目は いつも自分の立役者でありながら突然表に出て来た親友が交通事故で死に、奪われた演劇部の主役をものにした少女の話。事故の原因とその「真相」をめぐって彼女はどうしても親友の唯一会える一人、になる必要があった。(「親友の心得」)

4話目は 婚約者が突然行方不明になり、彼女の身元も名前すらも虚偽であることを知った男の話。ツナグにより彼女と会うことは彼女が死んでしまったことを意味するが、それでも彼女を指名した。再開した彼女が真相を語り、彼は新しい朝を迎える。(「待ち人の心得」)


そして最終章。
ツナグである歩美が何度も自問しているように、死者は誰のためにあるのか、生者は死をどのように受け止め生きて行かなくてはならないのか?が読者の心に問われてくる。

そもそも死んだ人間に会いたい等というのは生きている人間のエゴなのだろう。
自分の心一つで自信を持って生きて行く強さがないということなのだから。
しかしきっとほとんどの人間は弱くて、身勝手で、卑怯で、そして何度も後悔してしまう生き物だから、もし「ツナグ」のような存在・・・かつて自分を必要としてくれた、自分を見ていてくれた、自分を愛してくれた亡き人間に再び会わせてくれる存在があるのなら、きっと求めてしまうのだろう。

それはきわめて自分のためだけの、身勝手な望みだ。
けれど人はそんな存在を永遠に求めてしまう、求めずにはいられない。たとえ死んでしまっても…。
「あなたなら誰に会いたいですか?」
本の帯の言葉に、ふと考えてほしい。
思い浮かべたそのひとは生前どれだけあなたを思い、見つめ、叱り、愛してくれた人だろうか?
そして思い至って欲しい。その人がどれだけ自分に影響を与え、自分を作り上げ、生かしてくれたひとなのかと。
もう一度会いたい人、きっとそう思い浮かべることに意味がある。



ツナグ
新潮社
辻村 深月

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