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zoom RSS 『本日は大安なり』 by 辻村深月

<<   作成日時 : 2011/05/20 13:08   >>

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本日は大安なり
角川書店(角川グループパブリッシング)
辻村 深月

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画像

 実は私と作者とは同年同月生まれで、勝手に言わせてもらうとベースのところがかなり似ている…似たような環境に育った女性だと思う。
彼女の作品はデビュー作からずっと追ってきた。サイン会にも駆けつけた。
新作を読むたびに、心の奥底にそっと封印していた思い出や忘れかけていた「あの頃の私」を掘り起こされ、恥ずかしいような苦しいような、何とも言えない思いをしたものだ。
小説家でもない私が言うのはおこがましいようだが、同年の女性がこういう作品を書けていることに対する羨望混じりの焦燥感もあった。
ことに近年は少年少女が主人公のものではなくむしろ大人の、いや、作家(そして私)と同年代の女性が、作家自身を映し出すように等身大で描かれているものが多いので、じつはこのところ読むのがしんどかったのだ。あまりに感情移入してしまい、息苦しくなるからだ。


今回の主人公たちは2〜30代の結婚式を目前に控えた男女、そして挙式当日を絵が来た物語。
これは本当に偶然なのだけれど、実は私も結婚式を直前に控えている。
本作を読めば、さぞかしまた苦しくなるだろうと思ってはいたのだが・・・面白いことに予想は外れた。
群像劇のような構成だからだろうか? 結婚式という「ハレの日」で、しかも描かれる3組の新郎新婦がかなりかわった事情を抱えているからかもしれない。
4組+1人のウェディングプランナー(略:WP)による4つの群像劇はどれも個性豊かで興味をわかせ、ほんの少しのミステリを含ませていてとても面白い。
ことに「ややこしい感情」を姉にもつ妹と、彼女に執拗に執着する双子の姉が入れ替わって新郎が気づくかどうかの「賭け」をする話は、かなり面白い。
いや、むしろこの賭けは愛憎半ばするあまりによく似た姉妹の、自分たち自身の「勝負」。
彼女たちがどのように「自分」にけりをつけるのか?これが一番ミステリ色がないが著者らしい。


一方では大好きなお姉さんを新郎の陰謀から救おうと奔走する甥っ子少年の話。
家族の評判が悪い新郎はいったい何を企てているのか?白雪姫に扮したディズニー好きの新婦は毒入りリンゴを食べてしまうのか? 子供の無知さにイライラしつつも(笑)ミステリタッチで楽しめる。

また一方では、心に決めた地味な恋人を持ちながらも、派手な浮気相手と豪勢な式を挙げるはめになってしまダメ男が、式場に火をつけようと不穏な動きをする、これまた突拍子も無い話。

そして彼らを迎え入れる老舗の高級ホテルアールマティで働くWP山本のもとには、かつて自分の結婚を直前でぶちこわしたお嬢様が超我が儘な客として訪れる。
唯我独尊、我が儘放題の彼女を最後まで冷静に世話をすることが出来るのか?
これが一番現実的で昼ドラのような設定(笑)だが、一番気持ちのよいラストを飾っている。我が儘お嬢と結婚を捨てたキャリアウーマンがどう転ぶのか、みどころである。

さて、以上様々な事情を抱えた4組が、同じホテルで同じ大安吉日に式を挙げる。
同じ式を控える身として言わせてもらえば、結婚式の準備というのは非常に時間もお金も心身ともに疲弊する。半年以上前から準備することも、何百万と費用になることも諍いが起こることも有るだろう。
そのたった一日、数時間のために。
結婚式。それはそうしたものすべてを許せてしまう魔法の言葉である。

生涯でたった一回限りのその日、はるばる集まったゲストたちも式を支えるスタッフたちも、式場もその日付も、全てひっくるめて一期一会、唯一無二の組み合わせである。

本作の後半も後半。この式場で大きなハプニングが起こり彼らは大惨事?に見舞われる。
災い転じて福となす。 彼女らがどのように福を迎えるのか・・・いや、どのように福を作り出すのか。
それを見届けてほしい。

WPである山本の言葉だが「ウェディングプランナー。大安を作り、支える職業。」
なんてかっこいいんだろう!

私の式にはWPはつかないし大安でもないけれど、吉日になるかどうかは自分次第だ。
幸福も吉日も「よい結婚式」も。全ては自分自身で作り出すものなのだから。



そうそう、ネットの本屋さんbk1の今週の書評に取り上げられました!(ありがたや)
ほとんど内容は変わりませんが(笑)

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『本日は大安なり』/辻村美月 ◎
おぉ〜!面白かった〜♪ 最近身の回りがバタバタと忙しく、なかなか読書に集中する時間が作れてなかったんですが、そんな事情を吹っ飛ばすほど楽しめました! 実は、辻村美月さんは初読みです。読んでみたいと思いつつ、なかなか新しい作家さんまで手が出せない今日この頃ですが、やっぱりいろんな作家さんを読める方がいいですねぇ。新鮮でした{%音符webry%} 老舗ホテルの結婚式場〈アールマティ〉で11月のとある大安の日に4組の結婚式が執り行われる、その一日を描いた『本日は大安なり』。 ありきたりな... ...続きを見る
蒼のほとりで書に溺れ。
2012/03/15 14:28

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
空蝉さん、こんにちは(^^)。
あら、この記事を書かれたころは結婚式直前だったのですね。
遅ればせながら、おめでとうございます!

陸雄にイライラしながらも、ほかのカップルがどうなるのかドキドキしながら、とても楽しく読みました!
当事者にとっては、一世一代の晴れ舞台の結婚式。でも、いろいろな事件が潜んでるものですね(笑)。
それでもそれを乗り越えて、みんな幸せになれるラストが、良かったです。
特に苦労性の山井さんの幸せは、嬉しくなりました。
水無月・R
2012/03/15 14:48

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