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zoom RSS 『世界史をつくった海賊 』(ちくま新書) by  竹田 いさみ

<<   作成日時 : 2011/07/20 15:11   >>

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映画や漫画(アニメ)に限らず政治的にも宗教的にも、人間の物語には必ず「ヒーロー」が現れる。
集団で社会生活を営み国家という大きなグループで成り立っている以上、人間の歴史には常により上位へ立ち生き残るための闘争劇が繰り返されてきた。
人の生き残りをかけた闘争…といえば聞こえはいい?が、これが国家単位となると「戦争」となりその後に残るのは勝者と敗者、略奪と衰退である・・・そしてその勝敗の鍵を握るのがヒーローの有無である。

名武将の武勇伝や名君の栄誉を称えた史書や物語は数多い。歴史のターニングポイントには必ず中心となる人物が存在し、勝てば官軍。「勝利側」であった彼らは後世に結果として誉れ高い名を残す。
ヒトラーだって当時のかの国にとっては、英雄でありヒーローだったのだから・・・。

 さて、では現在の日本でエンターテイメントを賑わしているヒーローは誰か?
映画館では興行成績ダントツ1位に「パイレーツオブカビリアン」が登場している。
著者が本文でもその人気を語っている以上、本書執筆中から出版後までその人気が続いていることが伺われよう。ハリウッドに興味が無い人でも国民的?大人気漫画「ONE PIECE」は誰もが知っているだろう。

海賊=大冒険=宝探=下層出の主人公たちが一躍成長し成功する物語。

そんな夢物語的イメージが西洋の海賊には付されており、日本の山賊や倭冦のような残虐で犯罪者的イメージはそこにはない。漫画ワンピースだってパイレーツオブ…だって「日本の海賊」では無いし、山賊であれ海賊であれ、日本史および日本の物語で活躍した英雄は皆無と言っていいだろう。

この違いはどこにあるのか?そして海賊が「世界史をつくった」ほどに大ヒーローとなり得たのはなぜなのか?その英雄たちが後世に残した文化や影響はどのようなものか。
それを国家的大海賊の発祥地、エリザベス女王統治下の英国から解き明かしたのが、本書である。

やや前ぶりが長くなってしまったが、つまりこの本に描かれている海賊たちはたんなる野蛮な盗賊ではなく、「航海家」「探検家」「冒険商人」という言葉でもって国家の財源を作り上げた英雄なのである。

工業革命によって大発展を遂げる前の16世紀イギリスは貧しく、海上貿易でもスペインやポルトガルに大きな遅れを取ったエリザベル女王は、イギリス人で初めて世界周航に成功した海賊フランシス=ドレークにナイトの称号を与え、スポンサー組合(シンジゲート)とともに海賊マネーに国の財政を頼った。
表向きは知らぬ顔で、女王の側近や官僚をはじめ国家ぐるみで海賊をバックアップし続けたのである。
強力なスパイによる情報戦は他国の船や積み荷の情報だけでなく王室の継承問題にも加担したという。

海上貿易で最も珍重されたスパイスの強奪戦がスペインやフランス、オランダ等と繰り広げられた。
スペインの無敵艦隊を破ったことで大英雄となったドレーク、女王に黒人奴隷貿易を提供したジョン=ホーキンズなど大海賊は名誉をかちとりステイタス(称号)を得て英国の発展に大きく貢献した訳だ。
そうした海賊たちの誕生と国の中心にまで入り込んだその活躍ぶりが本書前半をしめる。

後半はその海賊マネーが何から出来ていたかということだ。
スパイス戦争に始まる海上貿易の品は、やがて珈琲、お茶、紅茶、奴隷貿易へと多様化する。
海賊を国が支援していた、ということに今更驚かない読者も、この辺りから「目から鱗」的な発見にであうのではなかろうか。

そもそも教科書的には肉の保存や味付け用にスパイスが必需品だったため高騰した、と教えられていたし、イギリスといえば珈琲ではなく紅茶というイメージが主流だし、密輸で買われた奴隷たちはどこで何をさせられたのか、とか。 そうした貿易の「根拠」が、教科書丸覚えの頭には入っていない。
そう、新書の醍醐味。読書の喜び。
それは通り一遍等の教科書や授業では教わらない「プラスαの情報」や、全く新しい「発見」や「知識」を身につけることが出来る、まさに新しい出会いの場であるということだ。

つい先日、(2011.7.8.)日本政府は安全保障会議と閣議で「アフリカ・ソマリア沖での海上自衛隊による海賊対処活動」の1年間延長を決定した、というニュースが流れた。
ニュースで「海賊」という言葉・・・今時海賊なんているの?と 隣の知人は目を丸くした。
どのような被害が出て、日本他被害にあっている商船および企業はどう対処しているのか観ていくと
何のことは無い、うまく逃げたり遠回りしたり袖の下を渡したりと、結局本書に紹介された過去の海賊事情となんら変わりないのである。

ただそれと違い厄介なのは国(英国女王)が支援する、ある程度読みの出来る統制の取れた物ではないと言うことだろう。
歴史は繰り返す、しかし被害も戦法も悪徳商法もオレオレ詐欺のように日々「進化」している。
私たちは読書を通じて、歴史を鑑みて、学ぶべきことは多い。
しかしそれ以上に「進化」した事例に柔軟に対応していかなくてはならないと 改めて思う。



世界史をつくった海賊 (ちくま新書)
筑摩書房
竹田 いさみ

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