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zoom RSS 『おさがしの本は』 by 門井慶喜

<<   作成日時 : 2012/04/02 15:33   >>

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図書館戦争以来だろうか。小説に漫画にと図書館や古本家を舞台としたミステリが随分多くなった気がする。(最近で言えば「ビブリア古書堂の事件手帖』が記憶に新しい。)
おくればせながら私が読んだのは最近だが、本書がちょうど今出版されていたらこの流行?に乗じてもっと話題になったに違いない、そう思わせる内容と蘊蓄の深い、奥行きのある、面白い作品であった。

本編は5つの短編から成る、寂れた市立図書館のレファレンス・カウンター(以下RC略)和久井を主人公とした本探しの、そして彼の成長物語。(成人男性を捕まえて成長もないもんだが)

大抵こういう作品では大の本好きや凄い推理洞察力の探偵役、歩く辞書の要な膨大な知識人…といった超人的な何かをもつ登場人物を中心に持ってくるものだが、本作にはそういった「特別」がまったくない。
主人公は本に関する知識を持っているが現実的にあり得る程度のレベルだし、
(ビブリア〜のように古本に関することに成ると豹変する美少女でもなければ、変人かと思われるほどの博学知識の京極堂でもない)
世界に一冊しか無いというようなお宝的プレミア本が出てくるでも、奇妙な事件が起こるでも無し。
登場人物も特別な能力や美少女が登場するわけでもない。
難しい依頼は数多いが、検索機では探しきれない「おさがしの本」を図書館利用者の要望から探し当てるのがRCの役割であるから、展開としては事件性の無いきわめて平凡なもの。
依頼にどう対処できるかの過程(物語)を楽しむという、作ろうと思えば本の数だけ人の数だけ作れるパターン構成何処にでもあり得る問題と解決の物語である。

ではこの作品がどうしてこれほどまでに面白いのか。(少なくとも私は面白い!と断言する)

一つには前半のそうした「お探しの本」の依頼解決過程が、本好きにはたまらないということである。
だれでも一冊くらいは探し続けている思い出の本、もしくは必要な本が有る(あった)だろう。ある人のある目的のための「お探しの本」。人の数だけドラマが有るとはよく言うが、その本自体にも、本の数だけドラマが隠されている・・・その発見の度に本作の読者は「へ〜」「ほ〜」「うそ〜」という驚嘆や感心、懐疑の声を上げるに違いない。主人公の淡々とした蘊蓄と初めて明らかになる真実に、かなりマニアックなトリビアを楽しめるというわけだ。

もう一つの醍醐味は主人公の成長…というより自分の中の意外な情熱の発見だ。
利用者の少ない寂れた図書館のRCという、いわゆる「同じ業務をこなすだけの平凡なサラリーマン」や「日常の変化に飽いている」大多数の人々と同じく。成長もやりがいも代わり映えもない毎日に倦怠感を覚えている主人公。
そんな彼に、後半「自治体の財源確保のために図書館廃止」論を振りかざす新館長が立ちはだかる。
一癖も二癖も有る冷徹守銭奴的なこの新館長が実は人一倍本好きで、なんとも憎めない悪役なのも魅力的だ。(ドラマ「相棒」でいう小野田官房長のようなもんか)
彼の与える本探しの難問と、図書館存続の為の代表答弁と・・・次々に襲いかかる問題に、いつの間にか熱くなっている彼がほほえましい。

あり得る設定、あり得るキャラ、だけど普段お目にかかれない地元密着の裏事情。
手が届きそうで届かない、そんなストーリーが読者をいっそうリアルに楽しませてくれるに違いない。

本書が私の門井作品初読了であるが、他にもかなり広く深く面白く手がけているとのこと。
そしてこの続編的なその後を描いた小説も出ていると!
これはもう、読まずにはいられない(笑) ますます楽しみな作家である。



おさがしの本は (光文社文庫)
光文社
2011-11-10
門井 慶喜

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